ここから本文です

小松政夫、植木等さんの付き人採用試験「2時間も遅刻したのに待っていてくれたんです」

12/6(水) 16:56配信

夕刊フジ

 【BOOK】小松政夫『昭和と師弟愛 植木等と歩いた43年』KADOKAWA(1400円+税)

 昭和の時代。日本人は温かくて、おせっかいで、濃厚な人間関係の中に生きていた。植木等と小松政夫の師弟もそう。ともに日本を代表するコメディアンになった2人の“三丁目の夕日時代”にホロリとさせられる。(文・南勇樹 写真・飯田英男)

 --クレージーキャッツで人気絶頂だった植木等さんの付き人兼運転手になったのが1964(昭和39)年です

 「応募者は600人もいて採用はたった1人だけ。アタシは車の渋滞で面接試験に2時間も遅れたのに、待っててくれたんですよ。採用が決まったときは、もううれしくて、うれしくてねぇ」

 「初めて会ったとき、植木さんは忙しすぎて過労で入院していたんです。『植木です』って低い美声であいさつされて…テレビで見る軽い調子とはまったく違う。オーラがあってダンディーでオシャレでね。大スターなのに尊大な感じがまったくない。実際、こんなマジメで律義な人はいませんでした」

 --植木さんは弟子思いの気配りの人だと

 「アタシがまだ付き人だったころ、テレビ局の廊下で鶴田浩二さんとすれ違った。壁にへばりつくようにしてアタシがあいさつをすると、鶴田さんが『キミが小松君か。植木さんからよく聞いているよ。面白いんだって』と声を掛けてくださった。初対面だし本来なら話もできないような大スターですよ。後で聞いたら、植木さんがアタシのことを機会あるごとに、あっちこっちで売り込んでくれてたらしい。鶴田さんのときは1時間の昼休みの話のうち、40分がアタシの話だったって。もう、うれしくて涙が出ましたよ」

 --小松政夫の芸名も植木さんが考えてくれた

 「アタシの本名は松崎雅臣。『シャボン玉ホリデー』(日本テレビ系のバラエティー番組)に少しずつ出させてもらえるようになったころ、もうひとり『松崎(真)さん』がいてややこしい。小っちゃい方の松崎で“いつの間にか小松”になったんです。名前の雅臣はカタ過ぎるので『小松政夫』。(植木さんが)おばあちゃんが姓名判断に凝っていて、これが画数もいいからってね。ちょっと二枚目過ぎるかなって思ったけど、すぐにサインの練習を始めました」

 --植木さんの有名なギャグ「お呼びでない…こりゃまた失礼」。付き人時代、小松さんが間違って出番を教えたところから生まれたというエピソードの真偽は

 「ウソですね(苦笑)。実はあれも親心なんだと思う。このエピソードは『小松のもの』として、少しでも売り出してやろうということですよ。いつか植木さんに会ったら訂正しようと考えているうちに機会を逃してしまい、いつの間にか広まってしまったというのが真相です」

 --クレージーの7人は個性派揃い

 「リーダーのハナ肇さんはガキ大将みたいな人。谷啓さんはクレージーのブレーン役。酒はハナさんはすごい飲むけど、植木さんと谷さんはまったくダメ。だから仕事が終わってから飲みに行くこともなくて自由にしてくれる。犬塚弘さんは舐める程度でした」

 「そうそう、犬塚さんに大阪で公演後に誘われたことがあるんです。そのとき実はデートの約束があったのですが、先輩の誘いは断れません。やっと解放されたのが夜の11時。女の子は閉店間際の喫茶店で待っていてくれましたが、これも犬塚さんがあまり飲めないおかげでしたね」

 --アツくて、モーレツで濃厚な人間関係があった時代でした

 「(付き人のころ)徹夜続きで1週間で計10時間しか寝られなかったけど、好きな仕事をやれるんだから平気でした。人間関係もずっと濃密だった。今じゃ、うかつに若い人を飲みにも誘えない。『それは命令ですか』って聞かれますから。これも時代ですかね」

 ■内容 日本が高度経済成長期にあった昭和30年代後半。横浜で自動車のトップセールスマンだった小松政夫は、どうしても芸能界に入りたくて植木等の付き人兼運転手に応募する。当時の植木は人気絶頂だったクレージーキャッツの中心的存在。しかし華麗で派手なイメージとは裏腹に、その素顔は実直、マジメ、気配りの人だった。植木の心温まる支援を得て小松はやがてコメディアンとしてデビューを果たし、人気者になってゆく…。

 ■小松政夫(こまつ・まさお) コメディアン。1942年、福岡県生まれ。75歳。自動車のセールスマンなどから、植木等の付き人兼運転手を経て、日本テレビ系「シャボン玉ホリデー」でデビュー。テレビ歌謡バラエティー全盛期に活躍、伊東四朗との掛け合いによるコントで一時代を築く。俳優としても多くの映画、ドラマに欠かせない存在である。日本人喜劇人協会会長(3期目)。

最終更新:12/6(水) 16:56
夕刊フジ