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ASUSに聞く「ZenFone 4」シリーズの手応え 今後は“限定モデル”も増やす

12/6(水) 6:05配信

ITmedia Mobile

 ASUSはHuaweiとともに、SIMロックフリースマートフォン市場を早くから開拓してきた1社だ。スマートフォンへの参入自体が比較的遅かったASUSだが、日本では“空白地帯”になっていた市場の隙間をしっかり埋めた格好だ。日本ではMVNOの伸びが同社の成長を後押しした。2017年度上半期のシェアは第2位(MM総研調べ)で、1位のHuaweiとは抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げている。数字の上では、SIMロックフリースマートフォン市場の2強といっても過言ではない。

IIJ向けに販売しているZenFone 4のカスタマイズモデル

 そのASUSが、2017年度のラインアップとして送り出したのが、「ZenFone 4」とその派生モデルだ。日本では、既に上位版の「ZenFone 4 Pro」や、セルフィー(自撮り)需要に応えた「ZenFone 4 Selfie Pro」が発売されている。12月には、大容量バッテリーを備えた「ZenFone 4 Max」も発表した。さらに、MVNO向けにはZenFone 4のカスタマイズモデルを導入。ベースモデルからプロセッサやメモリ(RAM)の性能を抑え、より買いやすい価格を実現した。

 SIMロックフリースマートフォンの人気ブランドになったZenFoneだが、同社はどのような戦略で日本市場に臨んでいるのか。ZenFoneの今とこれからを、システムビジネス部 プロダクトマネージャーのレイレン・リー氏、同部 阿部直人氏、システムマーケティング部部長 シンシア・テン氏に聞いた。

●2017年冬から“限定モデル”を販売する

―― まず、ZenFone 4シリーズですが、反響はいかがでしたか。

テン氏 ZenFoneシリーズを振り返ると、2014年の「ZenFone 5」は、「UNLOCK THE F UTURE」をスローガンに掲げ、MVNOと一緒に発表しました。2015年の「ZenFone 2」では、「性能怪獣」という主張でインパクトを意識して、日本市場に導入しています。そして昨年(2016年)の「ZenFone 3」では、外観やカメラ性能、質感を高め、ZenFoneのコンセプトである「ワンランク上のぜいたく」をさらに極めています。

 これに対して、ZenFone 4は、「WE LOVE PHOTO」というスローガンをワールドワイドで展開しています。全てがデュアルレンズを搭載した製品という思い切った戦略ですが、結果は狙った通りについてきています。全てのZenFoneに手応えを感じていますが、弊社の戦略は、順調に軌道に乗っています。

―― ZenFone 4 Selfie Proがある一方で、そのノーマル版ともいえる「ZenFone 4 Selfie」が発売されていません。これはなぜでしょうか。

テン氏 それぞれに戦略があり、パートナーや弊社の置かれている状況など、いろいろな都合を考慮して決めました。価格や性能、お客さまの要望もさまざまです。

 競合他社の参入もある激しい戦いの中で、どのようにポジションを維持していくのか。これについては、今年(2017年)の冬から、新しい戦略を立てています。それが「限定モデル」です。今までも、色違いやスペック違いなど、プロパーモデルと異なるモデルを発売してきましたが、年末商戦では、限定したチャネルで販売するモデルを発表していきます。カスタマイズモデルも、今後増やしていく方針です。

―― IIJなどが販売するカスタマイズモデルも、そういう位置付けなのでしょうか。

リー氏 シンシアが申し上げたように、日本における戦略の1つです。日本市場に関しては、ラインアップを極力シンプルにしていきたい。そういう意味もあり、オープンモデルとして、より市場に合ったSnapdragon 660のモデルを選んでいます。Snapdragon 630のモデルは、お客さまの要望もあり、あえてIIJ限定モデルという位置付けにしています。

阿部氏 厳密にいうとIIJだけでなく、IIJがMVNEをしているMVNOにも導入されています。イオンモバイルなども含めると、合計で4社から発売されています。

●auとソフトバンク(Y!mobile)のVoLTEに対応 ドコモは?

―― MVNOが販売する比率が増えてきた結果と見ていいのでしょうか。現状の比率を教えてください。

リー氏 単体販売は全体の3分の1ぐらいで、あとはMVNOと量販店に入っているY!mobileやUQ mobileと一緒に買われることが多いですね。

阿部氏 ZenFone 5のころは、単体とMVNOの比率が9対1ぐらいでした。「そもそもSIMカードって何?」という時代でしたからね。これが、ここ3~4年で徐々に変ってきて、お店で当たり前のようにバンドルするようになってきて、われわれがZenFoneを始めたころとは比率が逆転しています。感覚的には単体とセット販売では、7対3ぐらいですね。

―― なるほど。そういう背景があることを考えると、チャネルを限定するという戦略は合理的なように思えます。MVNOの販路を拡大するという点では、2016年に対応したau VoLTEは大きな意味があったのでしょうか。

阿部氏 確実にプラスになっています。他社ではまだ完全に対応していないところもあるので、ここはZenFoneのアドバンテージです。それをやることで、ユーザーがどのSIMカードを選んでも使うことができます。量販店に行き、適当にSIMカードを選んでもいいわけです。動作保証のあるキャリアモデルと違い、SIMフリーモデルだと(組み合わせによっては)動かないケースもありますが、そういったことがないのは大きいですね。

―― つまり、追い風になっていると。

阿部氏 12月から中古端末のSIMロックが解除できなくなってしまうので、そういったこともあって、ユーザーからもMVNOからも喜ばれています。また、弊社は海外から端末をそのまま持ってきて売るのではなく、日本向けにきちんとローカライズもしています。au VoLTEは前々からやっていましたが、Y!mobileのVoLTEもやっていきます。Y!mobileのVoLTEはZenFone 4 Maxが対応していますが、その他の端末もシステムアップデートで対応させる予定です。

―― au、ソフトバンクときて、ドコモのVoLTE対応も気になるところです。

阿部氏 技術的にできるかできないかでいうと、対応することはできます。

テン氏 ただ、市場がまだ不安定です。VoLTE対応にも投資は必要なので、これについては前向きに検討しています。

●ZenFone 4は好調だがZenFone 4 Selfie Proは苦戦

―― お話をZenFone 4に戻しますが、先に導入された3機種のZenFone 4では、どれが人気なのでしょうか。

リー氏 真ん中のモデルについていうと、ZenFone 3は3万9800円(税別、以下同)からでしたが、ZenFone 4では5万6800円に上がっています。まず、この差があります。逆にZenFone 4 Selfie Proは4万2800円で、これがZenFone 3に近く、実質的な後継機になるのではという声もありました。

 一方で、結果を見ると、ZenFone 4に関しては、5万6800円でもしっかり売れている印象を持っています。

テン氏 ZenFone 3とZenFone 4は、世代が違いますが、戦略的にZenFone 3の販売も継続しています。現状ではMax、Laser、無印があり、その上にZenFone 4があるという見方ができるのだと思います。安い価格帯のものもありますが、ZenFone 4シリーズでは無印が一番の人気ですね。

―― というと、ZenFone 4 Selfie ProよりもZenFone 4なんですね。そこは意外でした。

テン氏 ZenFone 4 Selfie Proは、薄くてカメラの性能もよく、久々にカラーがレッドのモデルも出せたのですが、セルフィーに特化していると思われて、苦労しているところはあります。セグメントとしては、ZenFone3の1つ上なのですが……。

―― セルフィー需要が小さいということでしょうか。

テン氏 インド、インドネシア、日本、ドイツ、フランス、スペインで、「セルフィーを撮る?」「ウィーフィー(複数人での自撮り)をする?」というサンプル調査をしたのですが、日本は極端にセルフィーが少ないですね。ウィーフィーになると多少増えますが、これは恐らく集合写真のことで、他の国と比べるとほとんど撮らないという結果が出ています。

阿部氏 写真を撮って何をするかというと、FacebookやInstagramに上げるのだと思いますが、そもそも日本人は恥ずかしがり屋ということもあり、自分の写真をあまり表に出したがらないのかもしれません。

―― いっそのこと、名前を変えて日本で発売するという手もあったような気がします。

リー氏 部品の調達やソフトウェアなど、目に見えるものや、目に見えないものまで、全てを変えなければいけないので難しいですね。

阿部氏 ロゴも本国が作っているので、名前を作ると、それを変えなければいけません。全てを一気にやるのは、なかなか難しいですね。

●さまざまなカメラのニーズに応える

―― 全機種デュアルカメラというコンセプトをうかがいましたが、広角になったり望遠になったりと、機種ごとに機能が違います。これはなぜでしょうか。

阿部氏 レンズ交換式カメラと同じように、通常のレンズの他に、広角や望遠のレンズが1つ付いているイメージです。カメラの使い方は人によって違っていて、料理しか撮らない人、景色だけを撮りたい人もいれば、セルフィーしかしない人もいます。全部1機種でできればいいのですが、ハードウェアの仕様的に、なかなかそれはできません。そういったニーズに応えていくと、このようなバリエーションが出てきます。いろいろな層がいて、そこに対して選択肢があるようにしたということですね。

―― ZenUIがシンプルになったのも、特徴だと思います。やはり、プリインストールアプリを減らしたのは好評だったのでしょうか。

阿部氏 そこにも、ユーザーの要望が反映されています。プリインストールアプリが多すぎるということで、最適化を施したり、逆に電源ボタンを3回押すとあらかじめ登録したところに電話をかけてくれる、SOS機能などを入れたりもしています。あとは、ツインアプリですね。LINEなど、本来は1つしかアカウントが持てないアプリを、2つ入れられるのは面白いところだと思います。

―― VoLTE対応は日本ならではの取り組みとうかがいましたが、他には、どのようなことがあるのでしょうか。

テン氏 端末のローカライズとは違いますが、弊社は本当に本社に文句をいう日本法人です。「日本ではそんなものは売れない」と平気で言いますからね(笑)。そういった声をうまく広い、本社にフィードバックする流れができました。

 また、ZenFanというコミュニティーがありましたが、これも「A部」に名前を変えています。A部には、コアにZenFoneを使っているガジェット好きなユーザーもいるので、こういった方々に、いち早く新しいバージョンのOSを試していただけるβプログラムもやっていきたいと思っています。

阿部氏 今までだと、上がってきたものを社内で検証してOKを出すという流れでしたが、A部の人に使っていただき、みんなで製品を作っていくことができればと思っています。

●取材を終えて:ASUSならではの特徴をどう出すか

 MVNOやSIMロックフリースマートフォンの認知が進み、一般層にまで広がったことで、ZenFoneの販売方法は大きく変わった。MVNOによるセット販売がここまで増えてくると、チャネルを限定したり、カスタマイズモデルを用意したりする戦略は合理的に思える。そのために、ベースとなるASUS自身のラインアップはあえてシンプルにしているようだ。

 VoLTE対応をいち早く進めるなど、日本に向けたローカライズをきちんとしているのもZenFoneの強みといえる。一方で、競合他社も増え、ZenFoneならではの核となる特徴が、いまひとつ見えづらくなっているようにも感じる。ZenFone 4が売りにしているデュアルカメラも、スマートフォンでは一般的になりつつある。同社の次の一手にも期待したい。

最終更新:12/6(水) 6:05
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