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100年前の小水力発電を復活、三重県で地域活性化プロジェクト

2017/12/6(水) 7:10配信

スマートジャパン

 三重県伊賀市で、約100年前に稼働した小水力発電所を復活させる試みが本格的にスタートした。三重大学と地元の建設会社であるマツザキが中心となり、地元の地域協議会と協力して2013年から取り組みを進めてきたプロジェクトで、数年にわたる事業性評価を経て、2017年秋に発電所の建設・運営を担う新会社、みえ里山エネルギーが立ち上がった。民間主導の地域活性化を目的とした珍しい小水力発電事業であるとともに、エネルギー源となる水の輸送方式に新しい手法を取り入れるなど、注目のプロジェクトだ。

発電所の建設位置と設備の概要 資料提供:三重大学

 三重県の伊賀地区には、大正初期に創業を開始した河川水を利用する小水力発電所が2カ所あった。そのうちの1つが、伊賀馬野川水電の小水力発電所だ。出力60kWのベルトン水車と50kWの発電機を利用するこの発電所は、1918年に稼働。しかし、老朽化などの理由によって、1958年に廃止となっていた。今回のプロジェクトは、この伊賀馬野川水電の小水力発電所があった場所に、新たに発電所を建設し、再生可能エネルギーを活用した地域活性化を目指すものだ。

発電出力は約4倍に

 新たに立ち上げる発電所は、旧発電所の約70m上流に建設する。馬野川の中~下流部分は三重県が管理しており、河川法上の扱いは一級河川となるため、水利権が発生する。そこで今回のプロジェクトに際し、三重県などと河川協議を行った結果、上流部分は伊賀市が管轄し、河川法の適用を受けない普通河川となることが決まった。新たに建設する発電所は、この普通河川エリアから取水し、導水路を通してエネルギー源となる水を得る。出力199kWの水車で発電を行い、約1010MWhの発電量を見込んでいる。発電出力は旧発電所の約4倍だ。

 そして、今回のプロジェクトではこの導水路による水の運搬方法に、大きな工夫を凝らしている。旧発電所では、山中に建設された小水力発電所などでよくみられる、開水路とよばれるU字型の水路を利用していた。この方式の場合、水は緩やかな流速で、多くの水は流せない。工事も人手で行わなければならず、水中植物が発生しやすいため、保守コストも掛かるという課題があった。

 そこで、今回の発電所には、三重大学の坂内正明特任教授が開発した、パイプ型の導水管の導入を決めた。

「パイプ型の導水管」、そのメリットとは?

 導水管として利用するのは、直径約50cmのパイプだ。この中に水を密閉するように、満水状態にして水を運ぶ。管内が液体で満たされていれば、圧力によって管の途中に出発地点より高い地点があっても、ポンプなどを利用せずに水を運搬できる「サイフォン効果」を生かした導水手法だ。U字型の水路より、多くの水を運べるだけでなく、ポンプ設備を利用しなくていいため、設置コストを削減できるメリットもある。今回のプロジェクトでは、長さ1080mのパイプ管を敷設し、約76.7mの落差を利用して発電する。

 この方式を考案した坂内教授によると、50cmというパイプの直径は、さまざまな問題を考慮して決められた大きさなのだという。

 「パイプ内を満水状態にして水を流すので、水を運ぶ距離が長くなると、パイプと水の間に摩擦が発生し圧力が少しずつ低下します。さらに、圧力がさらに低下し、飽和圧力より低くなると泡が発生してしまいます。この気体の泡は水が高所から低所に落ちる際に圧力が再び上がることで、再び水(液体)に戻ります。この現象が起きると高圧の圧力波が発生し、最悪の場合水車の羽根を損傷させてしまう場合がありました。そこで今回はこの現象を避けるため、気泡を発生させることなく、最小のパイプ径で最大限に水を流せるようにする計画を立てました。この工夫によって、パイプの材料費や工事費を削減するとともに、水量を増やして発電量を最大化できる最適な設計を行っています」(坂内教授)

数年で黒字化、利益は地域活性化に生かす

 建設する発電所、2019年4月の稼働開始を予定している。発電した電力は、全量を「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」を利用して、中部電力に売電する予定だ。年間の売電収入は約3500万円を見込んでいるという。建設に掛かる総事業費は約3.7億円だが、坂内教授は「発電所の建設費と保守に要する費用と、馬野川からの取水量を元に試算すると、今回の発電所は発電から2~3年後に単年度で黒字化となる計画」と話す。

 この売電収益を、出資者や地域に還元する取り組みも進める。新会社の、みえ里山エネルギーは、馬野川小水力発電を復活させるプロジェクト地域協議会などと共同で、発電所の稼働に合わせて一般社団法人を設立する。この一般社団法人を通して売電収益を、特産品などの形で出資者に還元する他、地域の活性化事業などに活用していく計画だ。

最終更新:2017/12/6(水) 7:10
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