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倉科カナさん、城崎温泉で“かばん職人修行” NHKで来年1月全国放送

12/6(水) 15:00配信

神戸新聞NEXT

 城崎温泉街をはじめ、兵庫県豊岡市内各地で撮影されたドラマ「あったまるユートピア」が、兵庫県では8日午後7時半から、NHK総合で放映される。生きる意味を模索する3人の女性が、新たな一歩を踏み出すまでを描く物語。監督はNHK神戸放送局のディレクターで、2016年の熊本地震の取材などに取り組んできた酒井悠さん(27)が務めた。(黒川裕生)

 各地の放送局が制作する「地域ドラマ」の一つ。酒井さんは歴史ある温泉街と、国際的な芸術の拠点(城崎国際アートセンター)が共存する土地柄に魅力を感じ、城崎を舞台にしたドラマを企画したという。

 倉科カナさんが演じる主人公は、豊岡でかばん職人になるため修業中の鷹宮伊織。伊織は、阪神・淡路大震災で両親を亡くした震災遺児の設定だが、ドラマでは「もういちいち人に話さへんけど」というせりふが象徴するように、あえて前面には出していない。「それが僕らの世代のリアルな距離感だ」と酒井さんは思うからだ。

 酒井さんは昨年、熊本地震の被災地に通い、被害の状況や集落の再生をつぶさに見てきた。阪神・淡路の被災者にも取材を重ね、災害で突然日常を奪われながらも、懸命に生きる人たちの思いをドラマ作りに生かしたという。

 「伊織が自分のことを語るせりふには、取材で見聞きした被災者の言葉や感覚を忠実に反映させた」

 主人公が城崎で出会う外国の少女ララも、内戦で故郷を追われた過去を持つ。ただ、女性たちが再生へ向かうドラマの中で、震災や戦災の記憶は、あくまでも静かに響かせた。

 酒井さんは東京出身だが、阪神・淡路の前まで神戸の板宿で暮らした祖父は「震災の時、何もできなかった」と悔いていたという。

 「阪神・淡路に対しては、いろんな思いを抱えている人がいる。神戸の放送局にとっても、あの震災は原点。『僕たちはどう生きていくのか』という問いは、常に意識している」

 物語は終盤、城崎の祭りでクライマックスを迎え、志賀直哉「城の崎にて」の一節「生きている事と死んで了(しま)っている事と、それは両極ではなかった。それ程に差はないような気がした」と印象的にリンクしていく。ドラマ初演出ながら、酒井さんは物語に込めた思いを、そのシーンで結実させている。

 18年1月24日午後10時からは、BSプレミアムで全国放送される。1時間。

最終更新:12/6(水) 15:07
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