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こいのぼり、「ミトコンドリア病」治療薬開発 日本初、患者家族中心に創薬事業

12/7(木) 7:15配信

SankeiBiz

 難病である「ミトコンドリア病」の治療薬を開発し、商業ベースにまで引き上げよう-。一般社団法人こいのぼりが、こんな社会的課題に挑戦している。この取り組みは「7SEAS PROJECT(セブンシーズ・プロジェクト、7SP)」と名付けられた。医師で菅沼医院(愛知県豊田市)の菅沼正司院長がこいのぼり代表を、娘がこの難病にかかっている篠原智昭こいのぼり理事が7SP代表をそれぞれ務めている。患者数の少ない難病は意欲的な専門医や研究者がいたとしても、医薬品メーカーなどがあまり積極的にならないことが多いという。このため7SPは、独自に研究を続け、創薬にこぎ着けようと考えた。

 ◆特許取得目指す

 ミトコンドリアは細胞の中にある小さな器官で、エネルギーを産生する働きがある。その働きが落ちると細胞の活動が低下。脳の神経細胞であれば見たり、聞いたり、物事を理解したりする力が下がり、筋肉細胞なら運動機能が低下したり、疲れやすくなったりする。こうしたミトコンドリアの働きが落ちることによって起きる疾患の総称が、ミトコンドリア病と呼ばれている。

 原因となる遺伝子異常には、ミトコンドリア固有の遺伝子変異と細胞核の遺伝子変異がある。極めて多彩な症状を呈する疾患で、まだ治療法がない。

 このため学際的なアプローチをすべく、研究チームには大学の医学部や薬学部のほか、農学部、工学部、パートナー企業などの研究者らが参画。7月から多角的な研究が本格化した。

 研究の過程では、ミトコンドリア機能異常が糖尿病や免疫疾患、さらには老化を促進する可能性がみえているという。研究に参加する京都府立医科大学大学院の五條理志教授は「ミトコンドリアはエネルギー産生を中心に研究されてきたが、免疫にも大きくかかわっている。一連の研究はその実態を明らかにしていくことでもあり、関連する疾病の治療にも役立つ可能性がある」という。7SPでは、共同研究の成果として2018年頃の特許取得を目指す考えだ。

 特許が確立すれば医薬品メーカーとの提携や多方面からの出資を募るなどして資金を確保。ミトコンドリア病を対象にした臨床試験を実施し、まずは日本で医薬品としての承認取得を進める。また、ミトコンドリア病以外の疾患を対象にした開発権は、提携する医薬品メーカーに導出するとしている。

 ◆娘の命助けたい

 こいのぼりでは、この7SPを前進させるために寄付を通じた資金援助を募っている。現時点では株式会社のように出資を受けることが難しいためだが、医薬品メーカーだけでなく、ヘルスケア関連企業などからミトコンドリアの技術展開を目指した資金協力もあり得ると考えられる。この取り組みは、大きな可能性を秘めている。

 このスキームは、難病患者の家族が中心となって創薬事業に乗り出すという日本では初めての試みであり、希少な難病に関係する医療・医薬の世界に一石を投じている。自分の娘の命を何とか助けたいという父親の一念から始まった7SPのミトコンドリア病根本治療への挑戦は、ハリソン・フォードが総指揮をとった米映画「小さな命が呼ぶとき」に描かれた難病であるポンペ病治療薬開発を思い起こさせる。次の新たな奇跡が、日本で動き出している。

最終更新:12/7(木) 7:15
SankeiBiz