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<書店>児童図書専門「ひつじ書房」42年の歴史に幕 神戸

12/6(水) 9:37配信

毎日新聞

 書店が全国的に減っている中、神戸市でもまた一つ、街の本屋の灯が消えた。東灘区岡本1で42年間にわたり地元の人々に愛されてきた児童図書専門店「ひつじ書房」だ。店主の平松二三代さん(86)=東灘区岡本2=が「子どもたちが心を豊かにする本と出合えるように」と採算を度外視して店を守ってきたが、加齢と後継者不在のため、常連客や地域の人に見守られて3日、閉店した。【松本杏】

 11月下旬以降は閉店を聞き付けた客が詰め掛け、平松さんが本を包装する手を休める暇がないほどにぎわった。近くに住む末広麻友さん(33)は親子4世代で通う常連で、12月1日に息子の和輝ちゃん(1)と母、祖母と来店。小学生の時にマリー・アントワネットの伝記を薦められたと振り返り、「息子の本も相談したいと思っていたので寂しい」と話した。

 中国・大連生まれの平松さんは戦時中に両親を亡くし、引き揚げ後は中学卒業と同時に東京から親戚を頼って来神。市立図書館で働きながら定時制高校を出た。司書として長年児童室を担当した後、店を開いた。選書に定評があり、平松さんも「新刊や流行書でも、視覚に頼り過ぎ、刺激の強過ぎる本は置かない。読んで良かったと子どもが満足し、希望が持てるハッピーエンドの本を選んできた」と自負する。

 近所に住む児童文学作家の岡田淳さん(70)は、作品を読んでもらった平松さんのお墨付きでデビューに至った。岡田さんの長女によると、父娘でよく店を訪れ、11年前にブックカフェを開いた際には「ひつじ茶房」と“のれん分け”も許されたという。長女は「私には本当のおばあちゃんのような人。86歳までやり切ったのが素晴らしい。これからは私らが頑張らな」と語る。

 閉店間近の今月1日、かつて厳選された約7000冊が並んでいた店内の本棚は空間が目立っていた。平松さんは穏やかな表情で本棚を見やりながら、児童図書専門店に懸けた思いを言い置いた。「子どもの心は本の登場人物の人柄や生き方を通して育つから、いい本と出合い、本を読むことを好きになってほしい。お互いの幸せを望みながら生きる人になってほしいのです」

 ◇書店数は18年で4割減

 書店調査会社「アルメディア」(東京)によると、全国の書店数は年々減少の一途をたどっている。今年度は1万2526店(5月現在)で、記録の残る1999年度から約44%減った。

最終更新:12/6(水) 16:05
毎日新聞