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JOLED、印刷方式の有機ELパネルを出荷開始

12/6(水) 9:43配信

EE Times Japan

●印刷方式の有機ELパネルを製品出荷

 日本メーカーから、RGB印刷方式で製造した有機ELパネルがついに出荷された。

韓国メーカーが採用する蒸着法(左)と、JOLEDが採用するRGB印刷方式の違い 出典:JOLED(クリックで拡大)

 JOLEDは2017年12月5日、東京都内で記者説明会を開催し、同社のRGB印刷技術で製造した21.6型の4K(3840RGB×2160画素)有機ELパネルの出荷を開始したと発表した。印刷方式の有機ELパネルの製品出荷は「世界初」(同社)とする。本格的な量産開始は2019年を目指す。

 精細度は204ppiで、ピーク時の輝度は350カンデラ/m2。コントラスト比は100万対1。消費電力は14.6W(40%Window/6500Kにおいて)。寿命は1000時間(350カンデラ/m2時)とする。同社は2017年4月からパネルを有償でサンプル出荷していたが、今回は製品として出荷を開始した。主な仕様は、サンプル出荷時と変わっていない。

 JOLEDのCTO(最高技術責任者)兼CQO(最高品質責任者)を務める田窪米治氏は、12月5日に出荷されたパネルの量および価格は非公開としたが、出荷先についてはソニーの医療関連事業と明かした。

 製造は、ジャパンディスプレイ(JDI)の石川工場(石川県川北町)の生産ラインで行う。ただ、同生産ラインはあくまでパイロットラインで、月産2000枚(21.6型は3面取りできるので、パネルとしては月産6000枚)と、製造の規模としては少ない。

●まずは中型ディスプレイから

 JOLEDが狙うのは、12~32型くらいの中型パネルの領域だ。同社の管理部門 広報チーム マネジャーを務める加藤敦氏によれば、この領域は「需要があるにもかかわらず、有機ELパネルとしては、まだ市場が形成されていないところ」だという。

 有機ELパネル市場ではSamsung ElectronicsとLG Electonicsの韓国メーカーの強さが際立っているが、Samsungが強いのは5~10型程度のスマートフォンやタブレット向けの小型領域、LGが強いのは50型以上などTV向けの大型領域で、その間がすっぽりと抜けているのである。これは、SamsungとLGが採用している製造法が、中型パネルには向かないからだ。

 Samsungが採用しているFMM(Fine Metal Mask)-RGB蒸着法は、メタルマスクを使ってRGBを真空環境で成膜する方式だが、マスクが大型になると、成膜する時の位置ずれが大きくなってしまうという問題がある。一方のLGが採用している白色EL蒸着法は、RGBのEL(発光)層を縦に積層し、それらを白として発光させ(R+G+B=白)、カラーフィルターによってRGBの色を形成する。こちらはカラーフィルターを使用するため光の利用効率が悪くなり、省電力化も難しいので小型化が難しい。

 田窪氏は、「蒸着法では難しい中型パネルで、われわれが市場を形成する」と意気込む。具体的には医療用などのモニターや大画面タブレット、デジタルサイネージ、車載用ディスプレイなどだ。

●1つのプロセスで全てのパネルサイズに対応したい

 現時点で、JOLEDが自社の事業として行うのは中型パネル領域だが、パートナーのパネルメーカーに技術を提供するという形(アライアンス戦略)で、大型パネル領域への参入も進めていく。加藤氏によれば、大型TV向けの有機ELパネルの製造に印刷方式を使いたいという問い合わせもあるという。JOLEDは大型化に向け、川幅2000mm以上のワークサイズを実現できる印刷設備についても、開発を完了している。ただし、開発が完了しているのは装置単体のみで、乾燥など前後のプロセスについてはまだ開発を完了していない。

 アライアンス戦略については、「詳細は明かせない」(加藤氏)としながらも、「アライアンス戦略で提供しようとしている技術、装置、材料と、JOLEDがこれから事業化する高精細の中型パネル向けの技術、装置、材料は、厳密には同じものではない」と説明する。「つまり、われわれが、大型TV向けとして(パネルメーカーに)提供した技術を使って中型有機ELパネルを製造しようとしても、高精細な製品は実現できないだろう。そのようにして、すみ分けを図っていく予定だ」(同氏)

 田窪氏は「われわれの1番の目標は、全てのサイズを同じプロセスで製造できるようにすること」だと強調する。「それができない限り、有機ELディスプレイが液晶ディスプレイに取って代われるほど発展しないだろう。例えば、液晶パネル向けマザーガラスのG6(第6世代)というのは、もともとは32型TVを製造するための基板だった。だが現在は、ほとんどスマートフォン向け液晶ディスプレイがG6で製造されている。つまり、市場の変化にすぐに対応できるような製造プロセスでなければ、発展が難しいということだ」(田窪氏)

●1000億円を投資

 前述の通り、JDIの石川工場の製造ラインはパイロットラインであり、大規模な量産には対応できない。2019年の量産開始に向けては約1000億円の資金が必要になるとみられていて、田窪氏は「資金調達については2018年3月末までのクロージングを目指し、現在さまざまなところと交渉を進めている」と述べた。

最終更新:12/6(水) 9:43
EE Times Japan