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<川口のクルド人>日本語教室 ボランティア頼み

12/6(水) 11:04配信

毎日新聞

 日本で最大のクルド人集住地区の埼玉県川口市。さまざまな事情を抱え、トルコから逃れて来日したものの、これまで日本政府は1人もトルコ系クルド人を難民として認定してない。故国への強制送還におびえ、収容施設での生活を余儀なくされる者もいる。地域住民との交流や難民認定を求める切実な声など、クルド人の生活を追った。【鴇沢哲雄】

 「コンニチハー」。ある土曜日の午後、川口市芝の芝公民館でクルド人向けの「日本語教室」があり、子どもたちの元気な声が響いた。主宰者の小室敬子さん(58)と日本人ボランティアらが笑顔で出迎えた。あいにくの雨模様で、参加者は子ども4人、大人2人と、いつもの半分ほどだ。

 小学2年の少女(7)がかばんから筆記用具を取り出し、配られた国語のドリルを始めた。絵や文章を読みながら答えを書き始める。「つばめは はるに みなみのくにに いきます」。日本で生まれたという少女は、なまりのない日本語で書き込んだ文章を読んだ。

 小室さんが問題を見ながら「オートバイって知ってる」と尋ねる。女の子は「家の前に時々止まっている」と答えた。小室さんは「家ではクルド語で会話することもあり、ボキャブラリーが足りない。時々、日本で使う言葉の意味を確認するんです」と説明した。

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 「日本語には小さい『つ』や『よ』が、たくさんあってびっくり」。隣の机で、ユウさん(29)=仮名=がつぶやいた。ボランティアの熊谷淳子さん(50)が小型のホワイトボードに例文を書きながら指導する。「若いクルド人は『とうがらし』と発音するけど、年寄りは『とーがらし』」とユウさんが話すと、日本人ボランティアから「違いが分からない」と笑い声が起きた。

 ユウさんは2003年に家族らと来日し、市内の中学校に通った。今はクルド人の夫とともに難民申請中だ。通院の医療費負担が重く、「生活は大変」とため息をつく。子どもを持つのが夢だという。最近はクルド人同士や、クルド人男性と日本人女性との結婚も増え「今年も(自分の周りで)赤ちゃんが30人くらい生まれた」と話した。

 熊谷さんが、この教室で日本語を教え始めたのは1年ほど前。自宅近くにクルド人家族が住んでおり、「交流してみたい」と思ったのが、きっかけだった。当初は自宅周辺のクルド人に日本語であいさつしても無視されたが、ある時、トルコ語で高齢女性に「メルハバ(こんにちは)」と声をかけたら、互いの距離が縮まったという。

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 川口市内で外国籍住民を対象にした日本語教室は約20カ所に上るが、多くは川口駅前周辺にある。JR蕨駅が最寄り駅となる川口市芝地区の周辺に住むクルド人には通いづらい。小室さんは自身の子どもが幼稚園に通っていたころ、フィリピン人の母親が日本語が分からずに困っていたのを手助けした経験があり、2年前に芝地区のクルド人を対象にした日本語教室を始めた。

 これまでに指導したのは延べ50人ほど。小室さんは「日本語が分からない母親たちは、子どもの学校の成績表も読めないので、いろいろな相談がくる。多くの母親に日本語を学んでほしいので、ポケットにはいつも教室の案内チラシを入れている」と話した。

最終更新:12/6(水) 11:04
毎日新聞