ここから本文です

狂気に満ちた愛憎が交差する映画「ビジランテ」/週末エンタメ

12/6(水) 15:00配信

サンケイスポーツ

 旬の俳優、大森南朋(45)、鈴木浩介(43)、桐谷健太(37)がトリプル主演を務める話題の映画「ビジランテ」が9日に封切られる。

 3人が演じるのは、幼い頃に失踪した長男・一郎(大森)、市議会議員の次男・二郎(鈴木)、デリヘル業の雇われ店長の三男・三郎(桐谷)の3兄弟。地方都市が舞台で、父親の死をきっかけに再会した3人が土地の遺産相続を巡り対立。欲望・野心・プライドがぶつかり合い、それぞれの人生が狂い始める。

 脚本は、「ジョーカー・ゲーム」(2015年)や「22年目の告白-私が殺人犯です-」(17年)といった人気作を手掛けた若きヒットメーカー、入江悠監督(38)のオリジナル。ロシアの文豪、ドストエフスキーが1880年に出版した最後の長編小説「カラマーゾフの兄弟」を思わせる、ドロドロした3兄弟の運命が描かれている。

 「ビジランテ」は英語で直訳すると「自警団」。「法や正義が及ばない世界」「大切なものを自ら守り抜く集団」という解釈もできる。

 市議会最大会派に属する二郎は、出世コースをはい上がるために遺産の土地を利用しようともくろむ。一方、3兄弟で最も冷徹に見える一郎だが、30年ぶりに帰郷したのは祖父の代から受け継がれた土地を守るため。人生の底辺をさまよう三郎は、デリヘル嬢たちに兄のように接するなど、それぞれの「守るべきもの」が見えてくる。

 多数の映画やドラマに出演する3人は、意外にも初共演。入江監督の故郷、埼玉・深谷市で1月に行われた撮影は、最低気温2度の中、川で殴り合うシーンなど過酷な環境で敢行されたが、プライベートでも仲が良いという3人のチームワークで乗り切った。

 もうひとつ触れたいのが一郎の恋人・サオリを演じた女優、間宮夕貴(26)。13年の映画「甘い鞭」以降、ヌードも辞さない熱演で注目を集め、今作でも濡れ場の体当たり演技だけでなく、狂気に満ちた世界に困惑する女性を好演した。

 ハッピーエンドでもなければ、いわゆる「泣ける映画」でもない。テーマが明確で分かりやすい作品が多い中、観た人に解釈を委ねる同作は「自分の守るべきものは何か」を考えるきっかけになる。(渡邉尚伸)