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沖縄・翁長雄志知事が“天唾”? 政府計画妨害も米軍基地返還遅れの「もろ刃の剣」

12/6(水) 10:55配信

産経新聞

 米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古(へのこ)移設をめぐり、政府と対立を続ける沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事が新たなカードを持ち出してきた。環境影響評価(アセスメント)条例を改正し、施行区域20ヘクタール以上の土地の造成を伴う事業について環境アセスを求めるというものだ。翁長氏にとって条例改正は抑止力強化に向けた政府の計画を妨害する効果が期待できる一方、沖縄振興に資する米軍基地返還を遅らせる弊害も大きく、もろ刃の剣といえる。(社会部編集委員 半沢尚久)

■改正案はレアケース

 「沖縄県環境影響評価条例及び施行規則の改正案の概要」

 11月上旬、こう書かれた通知が沖縄県から防衛省など国の機関に届いた。これまで翁長氏が辺野古移設で繰り出してきた妨害策の大半は事前に予期されていたが、政府は今回の条例改正を予期していなかった。

 環境アセスは施設の建設などで環境に影響を与える可能性のある事業について、事業者が環境への影響を調査・評価し、環境保全を踏まえた事業計画を作成することが目的。沖縄県の環境アセス条例は飛行場やダム、ゴルフ場の建設などを例示し、環境アセスを行う必要のある事業として指定している。

 県は条例改正により環境アセスが必要な対象に「施行区域20ヘクタール以上の土地の造成を伴う事業」を追加すると通知した。20ヘクタール以上の造成事業はあまねく環境アセスの対象とするわけだ。

 政府の調べでは、飛行場やダムといった事業目的を問わず、しかも施行区域20ヘクタール以上という面積が比較的小さい事業も環境アセスの対象としているのは岐阜県だけとされ、条例改正案はレアケースだ。

■陸自施設狙い撃ち

 防衛省はこの20ヘクタール以上という仕分けに神経をとがらせている。宮古島と石垣島で計画している陸上自衛隊の警備・ミサイル部隊配備に向けた施設整備が環境アセスの対象になりかねないためだ。

 宮古島の配備計画では駐屯地部分は敷地面積が約22ヘクタールだが、既に11月20日に着工している。条例改正は遡って適用はされないため駐屯地部分は環境アセスの対象にならない。

 だが、ミサイル弾薬庫を島内の別の場所に設置する予定で、「敷地面積は20ヘクタールを超える可能性がある」(自衛隊幹部)とされる。

 石垣島でも警備・ミサイル部隊の配備計画を本格化させる。施設整備は宮古島と同じ規模になるとみられ、環境アセスの対象になる恐れがある。

 つまり20ヘクタールという仕分けは宮古島と石垣島での陸自の施設整備を狙い撃ちにしているように映る。環境アセスを行えば3~5年かかり、その分だけ部隊配備に遅れが生じる。陸自配備に抵抗している反対派や革新勢力にとって留飲が下がる措置だ。

 実際、「条例改正案を陰で主導しているのは宮古島の陸自配備反対派だ」(政府高官)との見方がある。

■質問攻勢で政府対抗

 条例が改正されれば辺野古移設への影響も懸念される。

 防衛省は辺野古移設で海上埋め立てや滑走路建設を中心に環境アセスを終えているが、それらの工事に付随し、建設予定地に隣接するキャンプ・シュワブ陸上部でも新たな施設建設が想定される。そうした施設建設で環境アセスを求められれば、辺野古移設の全体計画が遅れる可能性がある。

 そのため、政府は対抗策として11月28日に数十項目にわたる質問状を県に提出し、攻勢に転じた。県は同29日を期限に防衛省などに条例改正案に関する意見照会を求めていたが、質問に対する回答があるまで意見提出を留保する。

 それにより条例改正案のとりまとめは遅れ、年明けの県議会での可決を経て来年3月に改正条例を公布するという県の想定通りに作業は進まなくなる。

 同時に、20ヘクタール以上という仕分けがどういう根拠に基づいているのかや、建設する施設の(1)外周(2)造成(3)建物-のいずれの部分の面積を指すのかについても県の見解をただす。

■統合計画にも影響

 政府は、条例が改正されれば嘉手納(かでな)基地(嘉手納町など)より南にある米軍基地の統合・返還計画に遅れが生じることも問題視している。

 統合・返還計画の柱となるのは、極東一と呼ばれる広大な兵站(へいたん)補給整備基地として軍需物資や生活用品を貯蔵している牧港(まきみなと)補給地区(浦添市)だ。那覇市の市街地に近い牧港補給地区は返還後の跡地利用への期待が地元では大きい。

 牧港補給地区の返還には条件があり、10棟以上ある巨大な倉庫群を沖縄本島中・北部にある嘉手納弾薬庫地区(沖縄市など)などに移し、機能を統合しなければならない。条例が改正されれば、嘉手納弾薬庫地区で倉庫群を整備するにあたって環境アセスを行う必要があり、3~5年を浪費することになり、牧港補給地区の返還も遅れる。

 それを自覚しているからかどうか定かでないが、翁長氏は条例改正について県民向けにアピールすることを控えている。

 県の要望で工期を大幅に短縮させておきながら、辺野古移設阻止とてんびんにかけて那覇空港第2滑走路建設工事を中断に追い込んだことがある翁長氏だけに、「得意の天に唾する措置か」(県経済界幹部)と冷ややかな声があがっている。

最終更新:12/6(水) 10:55
産経新聞