ここから本文です

「空き巣被害2度」被害者が執念の“捜査” 自宅に防犯カメラ9台・ダミー札束のワナ…映像もとに容疑者確保 兵庫・加古川

12/6(水) 12:42配信

産経新聞

 2度にわたる自宅の空き巣被害に遭った兵庫県加古川市の男性(49)が、容疑者を捕らえるために仕掛けたワナは実に巧妙だった。約20万円をかけて屋内外に9台の隠しカメラを設置。ダミーの札束や貯金箱に手をつける不審者の映像をもとに、自ら容疑者を捜し出し、警察に突き出したのだ。捕まったのは、60年以上前から300件以上の空き巣を繰り返したとされる81歳の男。専門知識があるわけでもない男性による執念の“捜査”が、男を追い詰めた。(木下未希)

■ワナにかかった! “百万円札”入り封筒などを物色する姿がバッチリと

 9月28日午後7時ごろ。仕事から帰宅した男性は、室内のふすまが普段より10センチほど大きく開いていることに気づいた。

 「犯人が来たようだな」

 封筒に入れて置いていた“札束”や貯金箱、金庫はなくなっていた。男性の顔に、自然と笑みがこぼれる。実は、引き出しの中にしまっておいた封筒の中身は、市販されている一万円札を模した「百万円札」のメモ帳。貯金箱の中身はゲームセンターで使うコインで、金庫の中の現金は十円玉1枚だけ。盗まれたものはすべて、犯人の再来を見越して男性が仕掛けたワナだったのだ。

 そして、ひそかに設置したカメラが、施錠された玄関をドライバーで手際よくこじ開け、室内を物色する高齢の男を捉えていた。

 男性は兵庫県警加古川署に映像を提出。さらに、自ら顔写真を見せながら近隣に聞き込みを行うなど、犯人捜しに乗り出した。

■総額145万円、2度被害の末

 なぜ、男性は自ら犯人に立ち向かったのか。きっかけは昨年12月と今年6月、立て続けに空き巣被害に遭ったことだった。被害額は計145万円に上ったが、室内には不審人物の指紋が残されておらず、警察の捜査でも犯人の特定が困難だった。

 2度目の被害を受けて以降、男性は約20万円をかけて防犯カメラ9台を購入。留守中に侵入した犯人を特定するため、台所や居間など、室内外の目立たぬ場所にカメラを設置して待ち構えた。しかも、光が出ないよう、カメラを細工。犯人がカメラに気づいて壊そうとした場合に備え、センサーが反応して大きな音が出るブザーまで設置した。

 ある捜査幹部は「犯人逮捕にこれほど執念を燃やした空き巣被害者は聞いたことがない」と語る。

■シラを切っていた男も映像見せると観念

 犯人の撮影に成功した約1カ月半後の11月15日、男性は犯人と酷似した男が自宅前をうろついているのを見つけ、呼び止めて問いただした。男は当初、シラを切っていたが防犯カメラの映像を見せると、「すみません」とこれまでの事件への関与をあっさり認めたという。

 男の正体は神戸市垂水区高丸の無職、藤岡一雄容疑者(81)。加古川署で取り調べを受け、翌16日に窃盗などの疑いで逮捕された。調べに対し「(男性から盗んだ金は)ギャンブルに使った」と供述。関係者によると、藤岡容疑者は空き巣の常習犯で、少なくとも昭和28年以降、300件以上も繰り返していたという。

 男性は藤岡容疑者の親族から一部弁済を受けたが、防犯カメラの設置費用などを考慮すると、被害はほとんど解消されていない。それでも、男性の表情は達成感に満ちあふれていた。

 「完全勝利です。絶対に自分の手で捕まえたいと考えていたので、これほどうれしいことはない」

最終更新:12/6(水) 12:42
産経新聞