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<MASH FIGHT! Vol.6>、グランプリは該当なし「苦しい決断」

12/6(水) 20:02配信

BARKS

MASH A&Rが12月3日(日)、東京・渋谷WWWにて<MASH FIGHT! Vol.6 -FINAL MATCH->を開催。6回目となった2017年度のファイナルオーディションだが、グランプリは「該当者なし」という結果になった。

◆MASH A&R声明全文/<FINAL MATCH>画像

2017年のオーディション<MASH FIGHT! Vol.6>では、応募期間を1st Season(1~3月度)、2nd Season(4~6月度)、3rd Season(7~9月度)に区切り、年間で3度にわたるライヴ審査が行なわれた。最終決選となる<FINAL MATCH>のステージでは、全45組のマンスリーアーティストからファイナリストに選ばれたスロウハイツと太陽、zanpan、灰色ロジック、FADE LEAVES、四丁目のアンナ、Ready at Dawnの6組が熱い戦いを繰り広げた。

今回の選考結果および2018年のオーディション開催について、MASH A&Rから声明が発表されている。以下、<FINAL MATCH>のオフィシャルレポートと併せてお届けする。

  ◆  ◆  ◆

今年1月~3月を1st Season、4月~6月を2nd Seasonとし、それぞれの期間の応募の中から映像審査と公開ライヴ審査を経て選出された2バンド。それに加え、7月~9月の3rd Seasonから映像選考を経て選出された4バンド。計6組が集った<MASH FIGHT! Vol.6>の最終決選が、今年も渋谷WWWで行われた。THE ORAL CIGARETTESやフレデリックをはじめ、ここから羽ばたいたバンド達の活躍は既にご存知いただいているだろうが、“NEW ROCK NEW STANDARD”を掲げるプロジェクトらしく、普遍性はもちろん、新しい価値観を切り開くだけの独自性やオルタナティヴな音楽性の中に可能性を見出してきたMASH A&Rだけに、この日集った6組は見事に6者6様で、持ち時間15分に個性をギュッと凝縮したライヴの数々が今年もWWWを熱気に包んだ。

まず登場したのは、MASHオーディションの3rd Season・9月度のマンスリーアーティストに選出された灰色ロジック。茨城を出自にする、半田修士(Vo,G)、深谷雅博(Dr)、張替和輝(B,Cho)によるスリーピースバンドだ。登壇するなり、応募楽曲「モーニング」を名刺代わりに披露。独り言を囁くように一節を歌い上げ、「MASH渋谷、どうぞよろしく! イエーイ!」と、手短だけれど気合いを十二分に感じさせる半田の挨拶でライヴの火蓋を切ると、オーセンティックなロックンロールを基調にしながらも深い音響を纏って心地よく伸びるアンサンブルで、会場を包み込んでいく。一転、「知らない街」では、スモーキーな歌声と伸びやかなメロディが力感いっぱいにバンドを引っ張っていくようなパフォーマンス。日常の中にある機微を丁寧に拾っては日記を綴っていくような歌だが、その眼は真っ直ぐに客席の人々を見据え、力感いっぱいの歌が真っ直ぐに飛んでくる。「俺が伝えたいことはここに全部詰めたつもりです。そういう曲を最後にやります」と添えて披露された終曲は「ナイトトレイン」。飾りっ気のない8ビートに<いつだって俺は生きている>という言葉を全力で叫ぶ歌に引っ張られて思わずつんのめるように加速していき、短い時間ではあったが力感に満ちたアクトを刻み込んで灰色ロジックはステージを降りた。

続いて、灰色ロジックと同じく、9月のマンスリーセレクトから選出されたReady at Dawn。まずはドンと一発轟音を放つと、ライヴの号砲は「オートマトン」。ギターのSHOTAが弾き倒す不遜なギターフレーズはオルタナティヴロックからの影響を強く感じさせるものだが、縦ノリを強調したリズムとメロディは2010年代のギターロックとして非常に王道性の高いもの。尖った同期音が四方八方から飛び交う中、主張の強い4音それぞれがグイグイと押し切ってくるような演奏だ。彩りと主張豊かな音をひとつに束ねられているのは、ヴォーカル&ギターのマコトの安定感と艶のある声質によるところが大きいだろう。不敵さを強く感じさせたかと思えば、一気にバーストしていく瞬間との行き来が目まぐるしく、その歌の物語性で魅せるところに一番の武器がある。マコトがギターを置いてじっくりと歌い上げる「ベティによろしく」では、抑制の効いたクールなリズムとセクシーな歌声で会場からはハンドウェーヴが。「売れたいっす。そんな自分達のエゴがあんた方のためになったら嬉しいです」と語ったMCから雪崩れ込んだラスト曲「月のない夜に」は、前2曲とは一転して、装飾を削いで前のめりな勢いが際立つ王道のギターロックだ。安定感のある演奏はそのまま、エンディングに向かうにつれて明らかに昂って熱を帯びていく歌がいい。スタイリッシュな佇まいに音色の多彩さと洗練が先立つが、その実は「あんた方」とマコトが話したように、汗臭いくらいに暑苦しく語り掛ける実直なロックバンド。完成度の高い楽曲自体を食い破らんとするエモーションを叩きつけるアクトは、確実に鮮烈なインパクトを残しただろう。

3番手には、福島県を拠点に活動するzanpanが登場。<MASH FIGHT!>の2nd Season勝者としてこのFINALに進出した4ピースだ。じゅんじゅわ(Vo,G)、ながいせんせ(B,Cho)、ツバサ・レイガン(G,Cho)にサポートドラム。ステージに登場すると、スッと前を見据えた刹那、透明感のあるアルペジオが鳴り響く。ハスキーな歌声が掠れるギリギリをスーッと泳いでいく「歩幅」は決して派手な装飾が施されているわけではないが、ポップなメロディで真っ向勝負を打つ堂々としたオープニングである。続けて「自分の背中を押せるのは自分しかいないということ」という口上から雪崩れ込んだ「ロックンロールとは」は、塊感のあるサウンドを叩きつける直球勝負。ながいとツバサのユニゾンコーラスとじゅんじゅわの掛け合いがスピード感を生んでいく中、回りくどい表現と展開の一切を削いで自分にとってのロックンロールとは?を掲げる1曲は、歌と言葉の輪郭をハッキリ持って鳴り響いた。「変わろうと思って変わるのは自分自身、だけど変わるきっかけを与えてくれるのは他人。そいつと最後に笑いあえたら、そんなにいいことはないなと思います」と語って、ラストはMASHに応募した楽曲「最低な日常」。フォーキーなメロディで日常と自分の背中を押す楽曲に、彼らの音楽の理由と根拠がすべて詰まっているのだろう。“僕の最低な日常が/君となら確かに変わったんだ/君をもっと知りたい”と訴える歌の情けなさと、それをひっくり返そうともがく切実さに、zanpan(ザンパン)と名付けられたバンドのプライドがキッチリと映っていたと思う。

続いては、初っ端からハイテンションなバンド名紹介で煽り、祭囃子のようなフレーズでアゲアゲのスタートダッシュを見せたFADE LEAVES。「ROCK PARTY」という名の通り、レゲトンの跳ねたリズムに合わせて横山(B)も加藤(G)も好き放題に踊りまくっては客席を手招くように前へと出る1曲で、WWWは一気に煌びやかな空間へ変貌。特に全身でベースを弾くような横山の動きは奇妙さと妖艶さをクルクルと行き来して、下世話なほど煌びやかなバンドのキャラクターの大部分を担っている。「音楽が大好きな気持ちを出せるように、今日は楽しみましょう」と語り掛ける渋木にしても、ほぼすべてを歌いながらビートを刻む金田にしても、楽しいという感情が全身から溢れ出しているアクトである。「俺達もここに来られてライヴができているけど、今日ここに来たかったけど来られなかった人もいるかもしれない。だからこそ、ここに来られたあなたに拍手。もういなくなってしまった人の分も、俺達はやっていかなくちゃいけない。だから、音楽が好きだっていう気持ちを表現していこう」という熱いMCから披露された楽曲は、“青春が止まらない”という一節がスコーンと飛んでくる、清涼飲料水のCMで流れていそうなメロディに主軸がある「ワンダータクト」。感情が先走って歌が前のめりになる場面もあったが、“wow wow”のシンガロングでその場すべての人を巻き込もうとがむしゃらな姿で最後まで突っ走る4人の姿がひたすらカラフルに映る3曲だった。

終盤戦に突入すると、お次は詩情を強く匂わせるバンド名通り、自身の内面を抉り出す言葉を連射していく歌の応酬が印象的な4人組が登場。ポエトリーを交えながら蒼い歌声を刺すように繰り出していくのは、今オーディションの1st Seasonを制して勝ち上がって名古屋からやってきた4ピース、スロウハイツと太陽である。一音鳴った瞬間から、音に潜り込む速さと深さが凄まじい。“学校”を象徴に現代社会そのものを想起させる情景と、その中で居場所を失って行く感情を列挙しながらギターの音の壁と叫びが立ち上がっていく「本当につらくなってしまったあなたへ」。自分の吐き出す言葉で自分自身を抉り、その行き場のない心を掬おうとするシミズの歌には、無垢な少年性と醒めた大人を行き来するような両面性がある。「あなたが僕達に初めて出会ったのかどうかは関係なくて、今のあなたと、いつか苦しくてたまらなかったあなたと救いたいと本気で思っています」と語るこのバンドはシューゲイザーの影響を色濃く感じる音像の深さが印象的だが、とにかく、まるで泣き叫ぶように震えながら破裂していく歌の力の素晴らしさが鮮烈である。無償の愛を受けながらそれを背負って行くことの重みに破裂していくような歌「1960」の迫真のパフォーマンスには思わず息を呑む。「この照明がないと生きられないと思ったのは僕達だけじゃない」という言葉で共演者も来場者も祝福するような言葉を添えて雪崩れ込んだ「光の中へ」。痛切な歌も泣きの強いギターもそのままに、すべてを振り切っていくスピードと深い残響を残してステージを降りたスロウハイツと太陽。爪痕と傷跡をクッキリと刻むアクトだった。

さあ、オーディションアクトのラストを飾る唯一の男女混成5ピースは、自称“ハイパー台湾ニーハオジャパンポップバンド”、四丁目のアンナだ。ステージの幕が開くと、ドンドンドドドンッ!というビートに合わせてギターのともちん(男性です)が長髪を振り乱し、その強烈なヴィジュアルと愛嬌あるキャラクターで煽りまくる。オープニングを飾る「sarigiwa-no-girl」は、性急でハイテンション過ぎるジュディ・オングのような、あるいは古き良き昭和歌謡に今のビート感とオリエンタルな要素を注入したような、不思議な食べ合わせ感と壮快感が突き抜ける1曲。ハイトーンな歌声の突き抜け具合は間違いなく武器のひとつだが、たとえば外国語の挨拶をリズミカルに交えながら猛進する「台湾の留学生」では、やたらと獰猛なビート感と重心の低いリズムが強烈なパンチを放つ。音楽的な混ざり具合にしても、ともちんをはじめとして好き放題に舞いまくるステージングにしても非常に自由で楽しいが、その音楽の根っこからはパンキッシュな衝動がダダ漏れているのがいい。ただでさえ短いライヴ時間の中で「来年の1月にワンマンライヴがあります。チケット持ってきてます」と告知までしていくところも太々しくていいが、ラストに披露した「花と嫁」まで、ストロングスタイルな演奏はあくまでロックバンドとしての姿勢を響かせながら、リズムと摩訶不思議な歌詞とキャラクターが混然一体となって広がっていく音楽集団という言葉が似合うパフォーマンスだった。オーディションであることを一瞬忘れてしまうような時間を誰もが過ごしただろう。

気合いと個性にまみれたオーディションアクトは終了し、最終審査を待つ間はゲストアクトのライヴである。昨年の<MASH FIGHT! Vol.5>のグランプリを獲得した“先輩”であるYAJICO GIRLが登場すると、小気味いいリズムと四方のまろやかな歌声がリラクシングな空間を作り出す。気合い溢れる爆音のアクトが続いた後ということもあって、風通しのいい音の重なりが爽やかな風のように響き渡っていく。「自由に楽しんでいってください」という言葉の通り、「Casablanca」のトロピカルなフレーズと腰を揺らすリズムの上で気ままに舞う四方の姿が目と耳に楽しいが、この1年での成長がハッキリと表れているのは、その歌とリズムの安定感。踊らせながらきっちりと聴かせる、そのバランス感覚に秀でているバンドであることを“凱旋”で魅せていく5人だ。「これは、勝ったら事務所が契約してくれるっていうイベントで。それで大人の人と話する機会が増えて、そこで進境が変わったことでできたのが『沈百景』です」と、MASHと自分達の関係をフワッと説明してから披露したのは、「光る予感」。先ほどのリラックスしたムードを一瞬で塗り替え、一気に音に没頭していくようなパフォーマンス。グランプリを獲得してからは、音楽的にも精神的にも忙しく目まぐるしい日々が続いただろう。その1年を経てこの場で再びライヴをすることはきっと、現在地と初心を再度確認することに繋がったはず。終始マイペースな“らしい”5曲だったが、深い残響を残した「サラバ」まで、ひたすら丁寧に歌を届け続ける痛快なライヴだった。

そして、こちらもYAJICO GIRLとともに昨年のグランプリを獲得したSaucy Dog。今年5月にファーストミニアルバムをリリースしたばかりだが、来年の<スペシャ列伝ツアー>出演も決定するなど、急速に状況を拡大してきたこの1年をキッチリ示すライヴを見せていく。まるで呼吸のような石原の歌声がスーッと空間いっぱいに伸びていく「マザーロード」にしても、少年性と女性性の両方がクルクルと入れ替わりながらつんざくような叫びになっていく「煙」にしても、ギターロックの青春性を彼らが求める必然を感じてしまうような、一心不乱にメロディと同化しては内面を切実に吐露していく歌だ。メロディと歌に憑依されたかのような歌いっぷりにゾクッとしてしまう瞬間が暇なく訪れるライヴ。「あなたの希望になる歌を」という言葉とともに演奏された「ロケット」では、つんのめるようなスピードと緊迫感に満ちたアンサンブルで爆走。石原の歌の響きは類まれな武器として変わらぬまま、バンドとして一気に行くところの瞬発力とビルドアップが成長としてハッキリ表れているステージである。MCでは「みんな、もうちょっと動いてもいいんだぜ?(笑)」と語り掛けておどけるなど珍しい場面もあったが、「僕の言葉を最高の形で届けられるのは、このメンバーがいてこそ。僕の一番の武器はこのメンバーだと思ってます」と、変わらぬ自身のバンド観とともに放ったのは「いつか」。押しも押されもせぬ代表曲を凄絶に歌い上げてステージを降りた3人だったが、イベントの大トリと言うよりも、歌にもバンドにも未だ可能性だらけだということを示すようなライヴという意味では、MASH A&Rというプロジェクトそのものを象徴しているような感さえあった。

百花繚乱という言葉が似合う、個性豊かなラインナップで争われた今年の<MASH FIGHT!>。しかし最終審査の結果は、<Vol.3>以来の「グランプリ該当者なし」となった。その経緯はMASH A&Rを構成する4社を代表して鹿野淳氏から「音楽とこの先の人生をともに展望し歩んでいくイメージを抱くことが、今日の最終オーディションの中でできなかった」というハッキリとした説明があったが、このステージは、全力で個性を研いで激突するバンドとMASH A&Rの真剣勝負の場所でもある。参加してくれたバンド達に深い敬意と感謝を丁寧に述べた上で、嘘のない言葉で伝えられた結果だった。

MASH A&Rの来年へ向けての動きはこれから詳しく発表されていくとのことだが、この場所が、6バンドにとっても新たな可能性と大きな飛躍のきっかけとなっていくよう、心から願う。

Photos by 白石達也

最終更新:12/6(水) 20:02
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