ここから本文です

【アグネスのなぜいま(20)】 若者移民の争奪戦が始まっている

12/6(水) 11:01配信

ニュースソクラ

移民にも大和魂は伝えられるのでは

 国連の経済・社会問題局の最新調査によると、「世界の移住者」のうち15歳から25歳が、12%を占めています。

 約80%がアフリカとアジアの出身者です。

 世界的には、失業中の若者の移民希望率は36%。

 特にアフリカサハラ以南の国々の若者は、44%が国外で働くことを望んでおり、アフリカ北部、中南米の若者も同様です。

 逆に北米では、移民を望む若者は17.1%。その多くが高学歴者で、こうした若者が本国を離れると、「頭脳流出」が起こるのではないかと懸念されています。

 このレポートでは、今後、仕事を求めて、世界中でさらに若い移民が増えるだろうと予測しており、「若い移民を受け入れることは、受け入れ国に有利だ」と指摘しています。

 移住後、正職につくことができた移民は、受け入れ国の生産力を高めるだけではなく、その国の年金や福祉を支えていく柱になり、消費力が増加して経済的にも貢献できると期待されているのです。

 特に高齢化が進み、労働力が不足している先進国では、若い移民は救いの手となります。

 しかし、多くの先進国は、高齢化に苦しみながらも、移民を受け入れることに抵抗しています。

 日本もその中の一つで、少子高齢化の現実に直面して、有効な解決策を見つけられないまま「もっと子供を産む社会を作る」のか、「移民を受け入れる社会にする」のかの選択肢を前に、結論を出せずにいます。

 現在、条件付きで移民を受け入れている国や地域はカナダ、イギリス、ニュージーランド、香港、北欧などで、すでに高齢化が進む国の間では、裕福で優秀な移民の争奪戦が始まっているとも言われています。

 日本では世界に類のないほど急速に高齢化が進んでいて、65歳以上の人口は27.3%で過去最高。

 要介護の高齢者は639.2万人で、国の医療費負担は40兆円にものぼります。出生率が1.44で、年々低下してる人口動向を見れば、近い将来、国を維持していくことさえ難しくなっていきます。

 こうした事態を重く見て、安倍総理は、少子化を「国難」ととらえ、教育無償化、保育園の確保、女性が働きながら子育て出来る環境の整備など、「安心して子供が産める社会の実現」を進めようとしています。

 しかし、男女の間で家事・育児の分担ができなければ、国がどんな政策を打ち出そうと、なかなか成果は上がりません。女性が仕事をしながら、「家事と育児を全て受け入れてくれる」と期待する方に無理があります。男性が意識改革をして、根強い保守的な考えを変えていく事が必要です。

 ただし、例え今後一人の女性が生涯に2人以上の子供を産んだとしても、日本の高齢化を止めることは出来ません。

 だから、日本の未来のためには、若者の移民を本格的に受け入れるしか道はないのです。

 現在の日本は、短期的な研修生や、介護や看護の労働者などは受け入れていますが、単純労働者や、移民を積極的に受け入れる制度はありません。

 日本にいる外国人の友達は「日本に永住したいと思っても、なかなか実現できない」と嘆いています。日本で働きながらも、いつかは自分の国に帰らないといけない現実に直面しているのです。

 日本語ができ、職場に貢献し、日本が大好きで、ずっと日本に住んでいたいという外国人はたくさんいます。しかし、彼らを受け入れる受け皿がないのです。

 これはとてももったいない事です。

 日本人と同様の権利が与えられないとしても、アメリカのような「グリーンカード制度」を取り入れ、若者が日本で住めるようにして、日本で働く資格を与えることは、日本の国益に反しないと私は考えます。

 一方、日本の友達の意見を聞くと、反対の声が多いことに驚きます。

 「基本的に外国人が嫌い」「外国人は怖いし、理解できない」「治安が乱れてしまう」「中国人が大量にやってきてしまうのが嫌」「日本らしい伝統や文化が薄れてしまう」と移民の受け入れに後ろ向きです。その気持ちも分かります。

 しかし日本の未来を考えれば、「排他」ではなく、人種の壁を越えた多様な社会を作っていく事が、時代のニーズに合った正しい選択だと思います。

 大和魂は生まれ持ったものではなく、育てることの出来る、心の持ち方だと思います。

 むしろ日本の独自性や素晴しさを世界の人々と分かち合っていくことが、日本の未来の存続のためにも重要なのではないでしょうか。

 移民を受け入れるのか、受け入れないのか。一人一人が自分の心に問いかける時が迫っています。

■アグネス・ M ・チャン(教育学博士)
1955年香港生まれ。本名金子陳美齢。72年日本で歌手デビューしトップアイドルに。上智大学を経て、トロント大学(社会児童心理学)を卒業。94年米スタンフォード大学教育学博士号取得。98年日本ユニセフ協会大使。2016年ユニセフ・アジア親善大使も兼務。

最終更新:12/6(水) 11:01
ニュースソクラ