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滅亡寸前の大相撲を救ったのは、「スー女」である。寄稿:星野智幸

12/6(水) 10:30配信

VICTORY

今の大相撲を支えるのは、女性ファンである

暴行事件に端を発し横綱・日馬富士の引退につながるなど、揺れに揺れる大相撲。2007年の弟子暴行死事件、2011年の八百長問題など、角界はこれまでも大きな問題に直面してきた。その度に角界を支えてきたのが、「スー女」と呼ばれる女性ファンであることはご存知だろうか。小説家・星野智幸氏に寄稿いただいた。(文:星野智幸)

 スポーツ観戦に関心の薄い女の友人や知人に、その理由を尋ねると、しばしば次のような答えが返ってくる。
 
「父親が巨人ファンで、いつもテレビで野球中継が流れていたのだけど、ずっと巨人選手のミスや逸機を罵っているのが、嫌だった。そんなに気に食わないなら、見なければいいのにと思ってた」

「相撲の時期になると、おじいちゃんがダメな力士のことを叱りつけていて、楽しくなかった」

 プロ・スポーツの観戦が圧倒的に男性に占められていた昭和時代には、どこでも見られた光景だろう。この「ガツンと言ってやる」文化が、スポーツ観戦に女性客の割合が増えるに従い、大きく変わってきたことは、野球やサッカーのファンであれば実感していることと思う。罵りおじさん型のファンはいまだにたくさんいるが、それが大勢を占めるという状況は、次第に減ってきた。
 
 大相撲も例外ではない。若貴ブームの一時期を除いて、大相撲はおじさんファンの度合いが最も強い競技の一つだった。友人の相撲ライターにして相撲女子(いわゆる「スー女」)である和田靜香さんは、「(十数年前は)お客さんの7割がたがおじさんで、ウイスキーとかビールの匂いがすごかった。酒臭い中で相撲を見てたんです。いまは、女子が多いからソフトクリームを食べながら見てて、館内はバニラ臭が漂ってます」と証言している(星野智幸『のこった』ころから刊)。
 
 今でも、三段目の取り組みあたりの早い時間帯に国技館に行くと、2階の椅子席でアルコールを飲みながら熱心に取り組み表に勝ち星をつけ、「そんな相撲取ってるならやめちまえ!」「おまえは日本人の期待なんだからな、蹴散らしてやれ!」といった独り言を飛ばしながら観戦しているおじさんが、ちらほら見られる。
 
 だが、同じぐらい、あるいはそれを上回る数の女性ファンが、館内を動き回っている。女性ファンは相撲を見ながら、同時にひいきの力士に声をかけるため入り待ちや出待ちをするから、じっと座っているわけにはいかないのだ。
 
 これが今の大相撲を支えている、最もコアで揺るぎない層である。おじさんファンは全体に高齢化し減っていくのに対し、女性ファンは今のところ増える一方である。2007年の弟子の暴行死事件に始まり、2011年の八百長問題に至るまで、相撲を滅亡寸前にまで追い込んだ危機の時代から、一転してここまで相撲人気を盛り上げたのは、この女性ファンの出現による。

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最終更新:12/6(水) 14:04
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