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夫婦で経営してきたが…銭湯廃業 後継者不足など厳しい業界

2017/12/6(水) 17:46配信

福井新聞ONLINE

 昔ながらの銭湯では福井県越前市内で唯一残っていた公衆浴場「城勝湯」(じょうかつゆ)=若竹町=が、このほど廃業した。地域住民の憩いの場、生活に欠かせない存在として、55年にわたり親しまれてきた。常連客からは「毎日の楽しみだったので残念」と惜しむ声が聞かれる。

 開業は1962(昭和37)年。松浦禮治さん(79)、繁子さん(82)夫妻が経営し、ピークだった昭和40年代は1日当たり約200人が訪れた。集合住宅を含めてほとんどの家に内風呂が普及したことなどに伴い、客数は近年減ったが、それでも高齢者を中心に50人ほどの利用があった。

 禮治さんは毎日、昼前からボイラーのある「釜場」で湯を沸かす作業に当たってきた。おがくずが燃料の旧式のため、温度を上げるのに時間がかかったという。繁子さんは番台や掃除を担当。定休日は週1日、連休は1年のうち元日と翌日の2日間のみで、夫婦2人で切り盛りしてきた。

 製材所からおがくずを調達する作業など、体力の衰えを感じる場面が増えた禮治さんだが、「まだ2、3年はやりたい」と考えていた。しかし今年7月、繁子さんがのれんを下ろす際に椅子から転倒。尾骨にひびが入るけがを負い、番台に長時間座れなくなった。2人がそろわないと運営は難しく、悩んだ末に9月初めに廃業した。

 市内では6年ほど前、京町3丁目にあった1軒が廃業。スーパー銭湯や市の施設を除くと、城勝湯が唯一の公衆浴場となっていた。夫と週4、5日のペースで通っていた関弘子さん(74)=同市=は「毎日温かいお風呂を楽しみにしていた。ご主人には『少しの時間なら番台手伝うよ』と言ったくらい。何とか復活の道はないかと願っている客は少なくないはず」と寂しがる。

 禮治さんは「常連さんが喜んでくれていたし続けたかったが、仕方がない。設備を活用してくれる人がいるなら提供したい」と話し“銭湯の灯”が何らかの形で継承されることを願っている。

 福井県公衆浴場業生活衛生同業組合によると、同組合に加盟する県内の銭湯は最盛期の1960年代前半に約170軒あったが、後継者不足や経営難により大きく減少。現在は福井、敦賀、大野、勝山、坂井市と永平寺町にある18軒のみとなっている。

最終更新:2017/12/6(水) 17:46
福井新聞ONLINE