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<共生のかたち さが在留外国人の人権>①急増する技能実習生 「安く使う」問われる企業

2017/12/6(水) 17:24配信

佐賀新聞

 勤務時間を記したノートには連日のように「12・5」「11」という数字が並んでいた。技能実習生として佐賀県内の会社で働いていたベトナム人女性は昨年12月、日本人の支援者に訴えた。「助けてください」

 時間外勤務の時給は最低賃金を下回る400円。会社には労働時間を管理するタイムカードもなかった。

 後日、労働局や入国管理局による立ち入り調査があり、「未払い分の支払いがあった」という報告が女性から支援者に届いた。支援者はこぼす。「こうして問題が表面に現れるのはごく一部。日本にいる間は事を荒立てず、我慢するというケースも少なくない」

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 国の技能実習制度は「途上国への技術移転」を掲げて1993年に始まった。対象は機械・金属や食品製造関係に加え、農漁業など70を超える職種に拡大した。佐賀県によると、県内で暮らす外国人の2017年10月1日現在の推計人口は6248人で、昨年より1108人増え増加率は17・7%。在留資格別では技能実習が最多の1863人で全体の36・2%を占める。

 出稼ぎの側面もあり、佐賀市に住むベトナム出身の20代の男性実習生は「母国の家族を楽にするため日本でたくさん働き、お金をもらいたい人は多い」と話す。

 近年は人手不足に悩む企業や農家の労働力としての期待も強まっているが、問題もはらむ。佐賀では昨年、労働基準監督署が受け入れ企業の立ち入り調査をした63件のうち、49件で安全基準や賃金不払いなどの労働基準関連の法律違反があり、是正勧告を受けた。

 「少子高齢化に悩む地域の衰退を、若い実習生が食い止める。そうした面で過疎地では積極的に受け入れられてきた」。技能実習の調査研究を手掛けてきた上林千恵子法政大社会学部教授(68)は指摘する。

 受け入れられながらも「地域社会から隔離されてきた側面もあった」という。過去には企業側が生活指導の一環として携帯の所持を禁止したり、外出の際に目的を申告させたり。「ブローカーからの別の仕事の誘いを遮断して失踪を防止し、他社の実習生と情報交換をして不満を募らせるのを防ぐ狙いがあった」

 問題が顕在化しづらい一因にもなってきたとみているが、こうした対応が問題視されるにつれ状況は変わる。労働実態はSNSなどで外国人同士で共有され、悪評は瞬く間に拡散する。

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 11月に施行された「技能実習適正化法」は実習の適正な実施や実習生の保護をうたい、人権侵害への罰則も設けた。受け入れ先の企業や団体の立ち入り調査もする「外国人技能実習機構」が監督を強化。優良企業と認められれば、受け入れ期間が現行の最長3年から5年に延長される。

 8年前から実習生を受け入れている佐賀市の木工所社長(52)は「報酬は限られているけれど、実習生はよく頑張って働いてくれる」と振り返る。誇りを持って取り組んでもらおうと、実習年数を重ねるごとに賃金を上積みするようにした。「同じ職場の仲間として接することが大事。『安く外国人を使ってやろう』という会社はこれから淘汰(とうた)されていくだろう」。率直な思いを吐露した。

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 定住する外国人が急増している佐賀県。10日までの人権週間に合わせ言葉や文化が異なる人たちのさまざまな境遇を見つめ、課題や日本人側の意識を考える。(全5回)

最終更新:2017/12/11(月) 12:21
佐賀新聞