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米国は手数料なしが主流 未だ販売手数料で稼ごうとする日本のファンド

12/7(木) 11:00配信 有料

THE PAGE

(この記事は、2016年12月15日に月額有料サービスで配信した記事の再掲載です)
 バランスよく投資をしたい人に最適なのが、納得できる投資方針の投資信託を購入することです。しかし、投資先進国の米国とそうではない日本では、そもそも投資運用会社や投資信託とファンド販売業界の考え方が異なっています。両国の投資信託の発展から現状までをあおぞら証券・顧問の伊藤武さんが解説します。

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 1980年代の後半、日本経済は未曾有のバブルが生じ、崩壊後現在にいたるまで、日本経済は「失われた時代」と称されています。2008年に発生した金融危機以降、世界経済も同様のショックを受け、その後の低成長が余儀なくされています。それらで露呈したのは金融機関の脆弱性で、優勝劣敗の構図が鮮明になりました。日本の金融機関はバブル後完全に弱体化し、今回はイタリアの銀行業界が大きな打撃を受けています。それに反し、アメリカの金融業界は完全に立ち直り、競争力に徹底的な差がついてしまいました。1990年以降、投資の世界でも日本は完全に遅れを取ってしまいました。


  巨大ファンド会社の出現

  まず数字から見てみましょう。統計によると現在世界の投資運用会社上位400社の運用資産残高は60兆ドルを超え、トップの10社がその1/3を占め、そして9位までが米国の会社です。資産残高1位のブラックロックは5.1兆ドル、2位バンガードは3.8兆ドル、3位のステートストリート・グローバルアドバイザーズは2.4兆ドルの運用資産残高となっています。50位までに日本の金融機関では、かろうじて三井住友信託および三菱UFJフィナンシャルグループが含まれていますが、この2社は本質的には運用会社ではありません。日本で純粋な投資運用会社のトップは野村アセットマネジメントで、預かり資産は約37兆円(0.32兆ドル)です。しかも預かり資産の一部は他社運用のものです。

 このように、金額的に見ても、日本は世界的な投資運用会社と太刀打ちすることは到底不可能となっています。日本は世界第2位の金融資産大国でありながらこのような有様になってしまってしまいました。それを理解するには、対比する米国と日本の歴史的な背景を知る必要があります。両国とも個人投資家を対象として投資信託ブームが生じました。ところが、ブーム後の成長の軌道が対照的となり、米国の個人投資家の資産残高は飛躍的に成長したのに対し、日本の投資家は置き去りにされてしまいました。


  米国のファンドはノーロードが主流 投資家に何を期待しているのか?

 1980年代初期までの10年間、米国はスタグフレーションに悩まされ、連邦準備制度理事会(FRB)議長にポール・ボルカー氏が就任した後に徹底的なインフレ退治に臨みました。1982年にはレーガン政権が誕生し、今では語り草となっているレーガノミクスにより、米国経済は成長軌道に発進しました。当時トップの投信会社フィデリティの旗艦投信「マジェラン・ファンド」のファンドマネジャーにピーター・リンチ氏が1977年に就任し、1990年に46歳の若さで引退してしましました。これ以上成績を維持することはできないとのことが理由でしたが、マジェラン・ファンドはその間驚異的な2700%のリターンを創出したのです。ブームの火付け役はリンチ氏でありましたが、投資信託拡大の持続性をもたらしたのは、業界の構造変革でした。

 日本同様米国でも、投資信託は主として証券会社や銀行が販売し、大手メリル・リンチ等の販売会社にとり、販売手数料は重要な収入源でした。ところが、投信ブームにより、個人投資家はこぞって投資信託の購入を望み、高額の手数料を求める販売会社の必要はなくなってしましました。当時から、販売手数料がゼロであるノーロード・ファンドが普及し始め、今日に至っては、一部の投資信託を除き、ノーロード・ファンドが主流となっています。

 同じ時代の1976年に、上記バンガードの創業者ジョン・ボーグル氏は、世界で初めてS&P500社指数に連動する指数ファンドを発足させました。募集資金は目標の1億5000万ドルに対しその1/10以下に過ぎませんでした。しかし諦めず、1980年代の上昇相場に転じて以来、ファンドの人気は高まっていきました。ボーグル氏の抱負に基づき、信託報酬はファンド規模に準じ恒常的に引き下げています。この旗艦ファンドの資産残高は現在2600億ドルとなり、信託報酬は僅か0.05%まで引き下げられています。バンガードは上場企業ではなく、外部株主還元策を講じる必要もなく、ファンドの収益は信託報酬を引き下げることにより、投資家に一部利益を還元できる仕組みが構築されています。指数ファンドの信託報酬が大きく引き下げられことにより、競争上ファンドマネジャーが運用するアクティブファンドの信託報酬も下げられ、現在の平均は0.87%となっています。

 1990年代以降の米国は、投資信託やすべてのファンド会社預かり資産の拡大を最大目標とし、規模の利益を求め、ファンド、販売会社と投資家の利害を共通させることに主眼を置いてきました。その結果、世界的な巨大規模の資産運用会社を創出ています。他国のファンド会社は独立して太刀打ちすることは、ほぼ不可能となっています。好循環となった業界は資金力も膨大となり、数知れぬ技術改革がなされ、一層の磨きがかけられています。

 証券販売で手数料収入を得ることも困難となり、その環境では、営業担当者も販売手数料に依存することはできなくなり、彼らも、証券アドバイザーとして、顧客優先に転じる要請が高まりました。現在においては、フィナンシャル・アドバイザー (FA) 制度が根付いています。報酬は基本的に預かり資産額に対してであり、顧客資産規模と運用成果が高まれば、営業担当者の報酬も増える仕組みとなっています。また、諸々の販売手数料は全て開示しなければなく、投資家は高い透明性が保証されます。   本文:5,132文字

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最終更新:12/10(日) 5:52
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