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羽生善治 前人未到「永世7冠」の価値

12/7(木) 11:00配信

東スポWeb

 流行語ではないが、羽生善治棋聖(47)が「空前絶後の」永世7冠達成という、とてつもない偉業で将棋ブームで沸いた一年間を締めくくった。5日に鹿児島県指宿市で指された将棋の竜王戦第5局で挑戦者の羽生棋聖は渡辺明竜王(33)を破り、15期ぶりに竜王に復帰。規定により「永世竜王」の資格を獲得し、他のタイトルと合わせて前人未到の永世7冠に輝いた。将棋界のレジェンドが成し遂げた国民栄誉賞ものの快挙。その価値をプロが語った。

 タイトルによって異なるが、規定のタイトル数を獲得した棋士に与えられる永世称号。竜王は通算7期か5期連続が条件で、羽生棋聖は今回の勝利で通算7期目となり、永世竜王に輝くと同時に、名人など他の6タイトルと合わせた前人未到の永世7冠を成し遂げた。

 穏やかな表情で羽生棋聖は「悔いが残らないように臨んだ。自分の力は出し切れたと思う。大きな目標を達成できてうれしい。充実感がある」と対局を振り返った。

 歴史的快挙に、「ひふみん」こと加藤一二三・九段(77)は「覇者として将棋界をけん引し続けて三十余年。類いまれなる才能をたゆまぬ努力により開花させ、前人未到の金字塔を打ち立てられたことに最大限の賛辞を贈りたい」と絶賛。将棋界最多の29連勝を達成した最年少棋士の藤井聡太四段(15)は「永世7冠という言葉の重みに、羽生先生が積み上げてこられたものの大きさを改めて感じています」と偉大な先輩をたたえた。

 21年前に羽生棋聖が史上初の7冠を獲得する際には「巨大な象を針の穴に通すより難しい」とされた。ならば、今回成し遂げた偉業で針の穴に通したのは象ではなく、鯨かもしれない。史上最年長でプロ棋士となった今泉健司四段(44)はこう解説する。

「羽生先生が勝った4局はいずれも完勝。相当な研究をして対局に臨んだんだなと感じました」

 特に竜王復帰を決めた5局目は、渡辺竜王に付け入るスキを見せない圧勝劇だった。永世7冠はどれほどの偉業なのか。

「一つのタイトルの永世資格を取ることでさえ、とてつもない。それを7つ揃えるなんて、あり得ない。おそらく今後、誰も成し遂げることはできない。藤井聡太四段でも難しいでしょうね。あまりにもすごすぎて表現が難しいのですが、一般の人に向けて分かりやすく言うなら、野球のイチロー選手が成し遂げた偉業を想像してもらうといいと思います。それくらいすごすぎることです」(今泉四段)

 イチローといえば、日米通算4257安打、メジャーでシーズン最多安打、10年連続200安打など途方もない偉業を達成したレコードホルダーであり、44歳の今も現役としてなお高みを目指している。羽生棋聖も47歳にして、常に新しいものを取り入れ、研究に時間を費やす。そんなストイックな姿勢には共通するものがある。

 数々の記録を残してきたイチロー同様、羽生棋聖も竜王7期のほか、名人9、王位18、王座24、棋王13、王将12、棋聖16と計99期の史上最多タイトルを積み上げた。王座戦での19連覇、通算24期はいずれも同一タイトルの歴代最多記録。政府が表彰する国民栄誉賞は優れた記録や業績などに与えられており、永世7冠はそれに相当する金字塔だ。

 藤井フィーバーやひふみん人気で注目された将棋界にあって、その偉大さを再認識させた羽生棋聖。そんなレジェンドへのリスペクトは将棋界を超えて広がる。元女優の理恵夫人(47)はツイッターで、快挙をたたえる各界著名人のツイートを転載。陸上男子短距離のリオ五輪メダリスト山県亮太(25)は「羽生さんの著書を読んで脚が速くなり、以前対談させていただいた身としてとてもうれしい」と喜びのコメントを発している。

 次なる大きな目標は、これまた空前絶後の通算タイトル100期。対局後の記者会見では「将棋はまだまだ分からないことがたくさんある」と語っていた羽生棋聖にとっては、それさえも通過点にすぎないのかもしれない。

最終更新:12/7(木) 11:00
東スポWeb