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誇大宣伝にゆがめられたAI(人工知能)の正しい使い方

2017/12/7(木) 11:43配信

TechTargetジャパン

 エンタープライズITコミュニティーの多くは覚えているだろう。テクノロジーサプライヤーが2000年代初めに、製品やサービスのグリーンウォッシング(訳注:環境に配慮しているふり)を行ったことを。サプライヤーがこぞって環境への配慮を装い、消費者を惑わせ、結果として自ら災いを招いて市場にブレーキをかけたことを。

 だが、その多くはこの経験からほとんど何も学ばなかったように思える。Gartnerによると、今IT業界は何にでもAIという冠をつけることで、「AI(人工知能)ウォッシング」という自己破壊的戦略を取っているという。サプライヤーは再び顧客を惑わし、顧客は導入の決断を先延ばしにしている。

 AIという冠はどこまでが真実なのか。もし真実だとしたら、市場にこれまでどのような影響を与えてきたのだろうか。451 Researchのリサーチ部門バイスプレジデント、ニック・ペイシャンス氏は、エンタープライズソフトウェア分野では明らかにAIが過剰宣伝されており、導入が進む一般消費者市場に後れを取っていると考えている。

 「ルールベースの自動化を導入する多くの新興企業は、AIを活用していると主張している。サプライヤーもAIシステムを用意しているという。だが、それらを厳密に定義するなら、ほとんどが画像認識やスコアリングを行う機械学習ソフトウェアだ。そのこと自体には何の問題もない。だが、そうしたソフトウェアが人間の代わりに多くのことを行うロボットになることは決してない。そのため、誇大宣伝を見破り、検討している製品の本質を理解しなければならない」(ペイシャンス氏)

 Accenture TechnologyのAI部門責任者、エマ・ケンドリュー氏も同じ意見で、ハイプサイクルがピークに達していると考えている。こうしたサイクルは、ビッグデータやクラウドの可能性を活用しようとする企業のマーケティング活動や、顧客の関心の高まりに後押しされている。

 「AIはしばしば、未来を描くSF映画を連想させ、意味深長な複雑さを漂わせる。また、不可解さや邪悪な雰囲気さえ感じさせる。だが、こうした感覚はマーケティングやメディアによってもたらされる切迫感によるものだ」(ケンドリュー氏)

 このような状況から、多くの組織やその上級幹部がAIを意識し、早急にAIと向き合う必要性を感じている。ただ、どこから手を付ければよいかが分かっていない。

●試験運用と概念実証

 何に投資し、どこから着手するかに確信を持てない。「そのため、AIへの意識は高まっても、多くはどこから手を付けるべきか混乱し、不確実になっている」とケンドリュー氏は話す。

 結果として、大半の市場活動では試験運用と概念実証に力が注がれるようになる。こうした活動を行っているのは、主に金融サービス業を営む大手企業や、顧客と直接接触がある小売業界だ。こうした業界はAIの可能性を見極めるための実験に取り組み始めている。

 例えば金融サービス企業での取り組みは、詐欺の分析から顧客アカウントアプリケーションの処理まで多岐にわたる。また、業種を問わず、B2C企業は顧客のニーズを効率的に把握し、個人向けの情報を発信するために顧客サービスエージェントを導入している。

 451 Researchのペイシャンス氏は次のように語る。「導入が始まっているのは、膨大な量のデータ、具体的には文章、音声、動画のような構造化されていないデータを有し、それを手動で分析しなければならないような業種になる。つまり、あえて人間が行う必要のない時間がかかる定型的な処理の自動化に導入されることが多くなっている。よく知られた初期のユースケースには、チケットを発行するヘルプデスクの自動化などがある」

 だが、AIが開発の初期段階にあり、大半の企業にAI技術が不足している状況が、さらなる拡大を妨げている。このような状況は新たなテクノロジーにはよくあることだが、AIの変化の早さが事態を深刻にしている。ただ、ペイシャンス氏は時間がたてばこうした事態は確実に収束していくと考えている。

 企業が導入をためらう理由がもう1つある。それは、AIが機能するほど大量のデータセットを持っていないという思い込みだ。「多くのCIO(最高情報責任者)が懐疑的になる理由はデータの量にある。大手サプライヤーはモデルを構築しトレーニングするために情報を購入し、モデルの効果を上げている。だが、中規模企業は効果が上がるほどの情報を入手できないと感じている」とペイシャンス氏は言う。

 だが、今後2~3年のうちにモノのインターネット(IoT)が軌道に乗り始めると、この状況は変わると同氏は予測している。「AIの成長は、IoTの成長と密接に関連する。また、人々が以前にはなかった方法で自身の好みや考えをソーシャルメディアで発信するようになったこともこの状況に影響を与える。こうしたデータの量は膨大で、誰でも発信できるため、大きな変化が生まれるだろう」とペイシャンス氏は締めくくった。

後編(Computer Weekly日本語版 12月20日号掲載予定)では、2つの組織のAI導入事例を紹介する。

最終更新:2017/12/7(木) 11:43
TechTargetジャパン