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次世代ハイエンドSoC「Snapdragon 845」の詳細が明らかに

12/7(木) 12:52配信

Impress Watch

 Qualcommは12月5日~12月7日(現地時間)の3日間にわたって、技術説明イベント「Snapdragon Tech Summit」を、米国ハワイ州マウイ島で開催している。

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 2日目となる12月6日の午前中には、前日に行なわれた基調講演で発表された同社の最新ハイエンドSoC「Snapdragon 845」の詳細が説明された。

 Qualcommによれば、Snapdragon 845はオクタコアCPUのKryo 385、新デザインGPUのAdreno 630、AI対応アプリを実行できるDSPのHexagon 685、さらには4K/60fpsの動画の撮影を可能にするISPのSpectra 280などから構成されているヘテロジニアス構成のSoCで、Samsung Electronicsのファウンダリサービスが提供する10nm LPPというプロセスルールで製造される。

 すでにOEMメーカーに大量出荷が開始されており、Snapdragon 845を搭載したスマートフォンなどは、来年(2018年)の前半に市場に登場する見通しだ。

■CPU、GPUが新設計に、Samsungの改良版10nmプロセスルールで製造

 Snapdragon 845の特徴を、従来世代のSnapdragon 800シリーズと比較してまとめたものが以下の表1となる。基本的にはどのユニットも強化されており、全体的に性能が底上げされていることがわかる。

 製造プロセスルールは現行世代Snapdragon 835と同じSamsung Electronicsの10nmプロセスルールを利用して製造される。ただし、同じ10nmプロセスルールではあるが、若干進化しておりSnapdragon 835が10nmLPEを利用していたのに対して、Snapdragon 845は10nm LPPを利用している。

 Qualcomm Technologies 製品管理担当上席副社長 キース・クレッシン氏は「10nmLPPは、10nmLPEに比べて最適化が進んでいるプロセスルール。このため、若干の性能向上と電力効率の改善が期待できる」という。

 ただ、前回のSnapdragon 835では30億と発表されていたトランジスタ数は、今回のSnapdragon 845は公表しないとクレッシン氏は述べた。

 CPUはKryo 280からKryo 385に、GPUはAdreno 540からAdreno 630へとアップグレードされており、クレッシン氏は「どちらもスクラッチから設計した新デザイン」と説明。また、DSPもHexagon 685に、そしてISPもSpectra 280へと強化されており、SoCに内蔵されているブロック全体に手が入れられている印象だ。

 今回から新しく導入された機能としては「システムキャッシュ」がある。3MBのこのシステムキャッシュは、CPUだけでなく、GPU、DSP、ISPなど、SoCに内蔵しているブロックがメモリにアクセスするときのキャッシュとして利用できる。

 IntelのHaswell以降の一部製品で採用されているeDRAMと同じように、メインメモリのキャッシュとして動作し、メモリ帯域幅の圧迫を削減したりすることが可能になる。それにより、メモリへのアクセスを減らす効果もあるので、結果的に省電力でも効果がある。

■CPUのKryo 385はCortex-A75/55ベースのセミカスタム。GPUは30%の性能/電力効率を実現するAdreno630

 Kryo 385は、ArmのBoC(Based On arm Cortex technology)ライセンスに基づいて設計されているセミカスタムデザインのCPUだ。Armが提供するCortexシリーズのデザインを利用して、カスタムブロックを盛り込んだCPUになっている。

 Qualcomm Technologies 製品管理 上席部長のトラビス・ラニアー氏によれば「Cortex-A75とCortex-A55に基づいている」とのことで、Big.LITTLE構成のBig側がCortex-A75のクアッドコア、LITTLE側がCortex-A55のクアッドコアをベースにして設計が行なわれている。

 それぞれのCPUのキャッシュ階層については、L1キャッシュが64KB+64KB(命令+データ)、L2キャッシュが256KB、そしてCPU全体でシェアするL3キャッシュが2MB搭載されている。

 また、省電力化のために周波数と電圧は3つのドメイン(Big側CPU、LITTLE側CPU、L3キャッシュ+システムコントローラ)に分割されており、それぞれに異なる周波数や電圧で動作させることができる。

 Big側となるCortex-A75は最大で2.8GHzまでクロック周波数を上げることができ、Snapdragon 835のBig側(最大2.45GHz)に比べて周波数とアーキテクチャの改善により、25~30%の性能向上が期待できる。

 LITTLE側となるCortex-A55は最大1.8GHzまでクロック周波数を上げることが可能で、これによりSnapdragon 835のLITTLE側と比較して15%の性能向上が期待できる。

 GPUのAdreno 630も新規設計されているとのことだが、どのようなアーキテクチャになっているのかに関しては、Snapdragon 835の発表時と同じく明らかにされなかった。

 ただし、前世代に比較して30%の性能向上と電力効率の改善、さらにはディスプレイスループットが2.5倍になるなどの改善が実現されていると説明された。また、Room-Scale 6DOFなどの、VR/AR向けの機能が追加されているのも特徴の1つだ。

■NPUなどのAIアクセラレータは搭載せず。CPU/GPU/DSPをヘテロジニアスに利用してAIの機能を実現

 DSPのHexagon 685は、Snapdragon 835に搭載されているHexagon 682に比べて処理能力が上がっているという。ただし、具体的な説明はなく、どのような改善点があるのかは明らかにされなかった。

 Qualcommは、前世代のSnapdragon 835から、CPU、GPU、DSPをソフトウェアのコンパイラレベルで統合的に扱うソリューションをAIアプリ向けに提供している。

 CPUでFP32とINT8を、GPUでFP32とFP16を、そしてHexagon 685でINT8を扱うことができる。どの処理をどのユニットで行なうかは、コンパイラのレベルで自動調整を行なうか、開発者が指定して利用する仕組みになっている。

 それにより、NPUなどのアクセラレータはなくとも、端末側で深層学習/機械学習の推論を行なうことについて、NPUよりも高い性能を持っていると説明している。実際、Snapdragon 845のAI時の処理能力は、Snapdragon 835の3倍だという。

 カメラから入力される映像を処理するISPも大きく強化されており、Spectra 280を実装した。Snapdragon 835に搭載されていたSpectra 180に比べて強化されているのは、4K動画処理時の性能とスローモーション撮影などの機能だ。

 Snapdragon 845のSpectra 280では色深度、カラーガンマ、輝度などの機能がHDRに対応している。たとえば、輝度ではRec.2020に対応しており、4K HDR/60fpsの動画撮影が可能になる(もちろん光学側の対応も必要になるが)。

■下り1.2GHzのGigabit LTEを実現、独自のセキュリティプロセッサも搭載

 無線関連としては、モデムがSnapdragon X20 modemにアップグレードされている。QualcommはSnapdragon 835でSnapdragon X16 modemを内蔵し、SoCとしては初めてGigabit LTEに対応した。

 今回のSnapdragon 845に搭載されているX20 modemは、下り1.2Gbpsの転送速度を実現できるLTE-Advancedのカテゴリ18に対応し、5CA/4x4 MIMOなどの組み合わせで下り1.2Gbpsを実現する。

 従来のX16 modemに比べてCAの組み合わせも柔軟になっており、アンライセンスバンドと呼ばれる免許の必要がない5GHzをLTE通信も含めてCAすることで、1.2Gbpsを実現できる。

 また、DSDS(Dual Sim Dual Standby)にも対応しており、両方ともにLTE回線に接続し、かつVoLTEにも対応させることが可能だ。

 Bluetooth 5.0の機能も拡張しており、Qualcomm独自の「TrueWireless」と呼ばれる仕組みが導入された。従来、左右が分離しているBluetoothイヤフォンなどで、右または左のイヤフォンがスマートフォンとつながり、さらに左右のイヤフォンそれぞれBluetoothで接続されるという無駄が多い仕組みになっていたのに対して、TrueWirelessでは左右それぞれがスマートフォンに接続される形に簡素化され、50%の電力削減を実現できる。

 ただし、現時点ではこれはQualcomm独自の拡張となるため、端末、イヤフォンそれぞれで実装が必要になる。

 このほか、Snapdragon 845には、Qualcomm独自のセキュリティプロセッサが内蔵されている。

 このセキュリティプロセッサの内部にはCPUコア、メモリ、RNG、暗号化エンジンなどが内蔵されており、OSからは完全に独立して動作している。従来の生体認証での実装では、OSレベルでデータを暗号化してストレージに格納するため、そうした生体情報が外部に漏れる危険性があった。

 しかし、今回のセキュリティプロセッサはOSから独立して動作しており、生体情報をセキュリティプロセッサ内部の暗号化エンジンなどで暗号化してストレージに格納する。これにより、セキュリティエンジンがない場合には復号化できないため、高いセキュリティ性を実現できる。

 冒頭で述べたとおり、Snapdragon 845はすでにOEMメーカーへの大量出荷を開始した。2018年の前半に採用製品が投入される見通しだ。

PC Watch,笠原 一輝

最終更新:12/7(木) 12:52
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