ここから本文です

<日銀>超低金利政策で黒田総裁発言 金融機関の影響に配慮

12/7(木) 19:59配信

毎日新聞

 日銀の黒田東彦総裁の最近の講演で、超低金利政策が金融機関の経営に与える影響に配慮した発言が目立っている。大規模金融緩和が4年半を超えてさらに長期化が見込まれる中、低姿勢を示すことで、副作用に対する国民世論の批判の高まりを避ける狙いもありそうだ。

 「金融システムの安定は物価の安定と並ぶ日銀の重要な政策課題。できることは何でもやっていく」。7日の東京都内の講演で、黒田総裁は、2%の物価上昇目標達成一辺倒でなく、金融機関の経営にも目配りする姿勢を強調してみせた。

 黒田氏の発言の“変化”に注目が集まったきっかけは、11月13日のスイス・チューリヒでの講演だ。黒田氏は、金利を下げすぎると金融機関の収益が悪化し、かえって貸し出しが減るなどの悪影響が起こる「リバーサル・レート」という学説に言及。「こうしたリスクにも注意していきたい」と明言した。

 黒田氏は過去の記者会見で、超低金利の弊害について「金融政策は金融機関のためにやっているわけではない」と突き放していた経緯があり、市場では「日銀が超低金利政策を修正する布石ではないか」との観測を呼んだ。

 こうした見方を助長しているのが、日銀が13年4月以来継続している市場からの国債買い入れの量を急速に減らしている事実だ。世の中に出回るお金の量を増やして物価を押し上げる目的で、日銀は年間約80兆円ペースで買い入れ量を増やしてきた。だが、昨年9月に長期金利を0%に誘導する政策を導入して政策の軸足をお金の量から金利に移して以来、直近の買い入れ増額ペースは50兆円程度まで縮小した。市場では緩和縮小を明言して行う米欧中銀と対比して、「ステルス・テーパリング」(隠れた緩和縮小)とも呼ばれる。

 ただ、日銀がただちに金利を引き上げて「出口」に向かうとの見方は市場には少ない。直近の物価上昇率は0.8%と目標に遠く、2%の達成は日銀見通しでも19年度ごろの見込みだ。黒田総裁は7日の講演で「あくまでも2%の実現のために政策を運営していく」と述べ、政策変更の必要はないと強調した。

 東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「黒田総裁の現状維持の意思は強く、リバーサル・レートへの言及は、むしろ一部審議委員が主張する追加緩和論へのけん制の意味が大きいのでは。長期金利引き上げに動くのは早くても来夏前後ではないか」と指摘する。【坂井隆之、宮川裕章】

 ◇キーワード【長短金利操作】

 日銀が2016年9月に導入した新たな金融政策の手法。短期金利をマイナス0.1%、長期金利(10年物国債利回り)を0%程度に誘導し、企業向け貸し出しや住宅ローンなどの金利を低く抑えることで、投資や消費の活性化を促し、物価の押し上げを図る。

 日銀は黒田東彦総裁就任直後の13年4月以降、市場から買い入れる国債の「量」を操作目標とする金融政策を採用してきたが、日銀が保有する国債が膨らみ過ぎて持続できなくなる懸念が強まったため、金利を軸足とする政策に転換した。長期金利を0%程度に維持するのに必要な国債の量しか買わなくなった結果、国債購入ペースは新政策導入前に比べて大幅に縮小している。

最終更新:12/7(木) 20:35
毎日新聞