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「なんだあの動きは?」「板岡錦だ!」 プリキュアがカッコよく動く、アニメーター板岡錦の世界

2017/12/7(木) 18:00配信

ねとらぼ

 板岡錦、というアニメーターをご存じでしょうか?

 プリキュアシリーズや劇場版クレヨンしんちゃん、バトルスピリッツなどさまざまなアニメの原画を描かれている方で、プリキュアシリーズでは、「キュアトゥインクル変身バンク」など、ファンの心に残る印象的なシーンを数多く手掛けています。

【画像】板岡錦さんの描く立神あおい(14枚)

 そんな板岡さんが「キラキラ☆プリキュアアラモード」第42話で、プリキュアで初の「作画監督」を務めました。

 板岡錦というアニメーターは何がすごいのか? 第42話を振り返りながら、個人的に思うことを語っていきたいと思います。

●著者:kasumi プロフィール
プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。

 キラキラ☆プリキュアアラモード第42話「歌えWOW!あおいラストソング!」。

 立神あおい(キュアジェラート)が属するバンドのリーダーである園部が脱退することとなり、自分の夢もなくなってしまうのではないか、と落ち込むあおい。

 パジャマパーティーでみんなから励まされ、「大好きなものがなくなったら、自分でつくればいい」と気付いたあおい。ライブ当日エリシオに声を奪われてもなお「心の歌」を歌い続けてエリシオをしりぞけ、これからも歌っていく決意をする、というお話でした。


●キラキラルは、スイーツ以外にも宿る

 第42話のラストのライブシーンでは、あおいちゃんがライブで歌う前に「キラキラキラル・キラキラル・思いよ届け!」とつぶやいています。そう「キラキラル」は、スイーツだけではなく、人々の思いの詰まった全ての物、全ての現象に宿るのです。それは、スイーツでつながった6人の物語が終盤に入っている証。スイーツだけではなく「どんな道にもキラキラルは宿る」のです。


●板岡錦の世界

 さて、第42話「歌えWOW!あおいラストソング!」で初めて作画監督を務めた板岡錦さん(総作画監督は川村敦子さん)。

 プリキュアファンの間ではおなじみのアニメーターさんですよね。

 板岡錦、という名前を知らなくても「ドキドキ!プリキュア」の「キュアロゼッタ」や「Go!プリンセスプリキュア」の「キュアトゥインクル」の変身バンクを描いた人、といえば分かる人も多いのではないでしょうか。

 個人的意見ですが、「空間を最大限に利用した動きのあるダイナミックな画」や、「かわいいキャラが持つカッコよさ」その逆の「カッコイイキャラがもつかわいい一面」を画に落とし込むことに、ファンからの信頼も厚いアニメーターさんだと思います。

 この第42話では、ラストのあおいちゃんのバンド演奏のシーン、特にラストのラスト、あおいちゃんが「みんな、ありがとう!」というあたりの作画の素晴らしさ、「かわいさ」と「カッコよさ」を両立しているところは、板岡さんっぽい感が出ていてすてきですよね。

 また、この第42話では、キラキラ☆プリキュアアラモード最後のあおいちゃん回ということで、久しぶりにキュアジェラートの変身バンクがフルバージョンで流れました。

 このキュアジェラート変身バンクを担当したのも、板岡さんです。


●キュアジェラート変身バンクのすごさ

 この「キュアジェラートの変身」バンク、本当にすごいのです。

 もちろん他のキャラの変身バンクもすごいのですが、個人的にはここまで「感情に訴えかける」変身シーンは初めて見ました。

 どの構図がすごいとか、画の枚数が~とか、そういったテクニック的なことは言いません。

 といいますか、自分はただのファンですから、そういったことは分かりません。

 ただ、わずか1分10秒の変身バンクの間で「立神あおい」から「キュアジェラート」へ変わっていく「ストーリー」が超絶的な技法で描かれている、と僕は感じるのです。

 キュアジェラートの変身バンクは、

「お嬢様」と「ロック」を、
「かわいい」と「カッコイイ」を、
「自由」と「情熱」を、

 そして、「なぜ、立神あおいは、キュアジェラートになるのか?」
 「立神あおいはどんなキャラで、キュアジェラートになると、どんなキャラになるのか?」を凝縮した1分10秒なのです。


●キャラが良く動く

 板岡さんの描くバンクシーンは、とにかく、よく動くのです。

 しかも「カメラ」が動くのではなく、「キャラクター」が画面中を縦横無尽に動き回るのです。

 変身シーンというと、「変身する箇所のアップでつないでいく」印象があるじゃないですか。

 板岡さんの描かれる変身バンクは違うのです。

 キャラが生き生きと、画面中を動き回り、躍動します。

 変身バンク」で「キャラクターが180度回転する」ってすごいですよね。


●「かわいい」と「カッコイイ」を両立

 さらに、「かわいい」と「カッコイイ」を両立させる画の力がすごいのです。

 立神あおいってどちらかというと、カッコイイキャラだと思うのですけど、変身シーンでときおり見せる「かわいい」しぐさと表情にドキっとさせられるのです。「カッコイイ!」と思ったら、次の瞬間「かわいい!」になり、と思いきや最後はまた「カッコイイ!」となるのです。

 特に変身バンク中に描かれる「目」に力が宿っているのを感じるのです。目力がすごいのです。


●アイデア満載の変身。

 バレエっぽい動きから変身開始。
 アイスクリームに包まれて、衣装を身にまとう。
 ジャケットを羽織る姿。
 片方のソックスを上げるシーン
 ギターを弾きながらの名乗りシーン。

 変身シーンの随所に、面白いアイデアがこれでもか、とばかりにちりばめられています。

 特に、しゃがんでソックスの片方を上げるシーンは女児向けアニメとは思えない大胆な構図なのです。

 締めは、メロイックサインですしね。


●変身シーンにストーリーがある。

 バレエで始まった変身シーンが、「自由」と「情熱」を混ぜ合わせ、躍動、跳躍し、ロックで完成する。

 これは自分の想像ですけど、

 お嬢様が、その抑圧された感情を最大限解放し、プリキュアになる。

 そんなストーリーを連想せずにはいられません。

 素人がバンク演出とか語っても陳腐になるだけなのですが、とにかく「画面から伝わってくる熱量」がとんでもなく高く、「たのしい、かわいい、カッコイイを子どもたちに届けよう」という思いの力を感じます。

 自分は、プリキュアの変身バンクは例年、リピートして何回も見るのですけど、「キラキラ☆プリキュアアラモード」で最も見たのは間違いなく「キュアジェラート変身バンク」でした。

 女児向けアニメ「だからこそ」、丁寧なお仕事をされているのが画面の端々から伝わってきます。


●板岡錦さんの、プリキュアでのお仕事

 この板岡錦さん、プリキュアでは上記のキュアジェラートの変身バンクの他、プリキュアファンの「印象に残る」さまざまなシーンを描いています。

 Twitterでは、ときおり、担当されたシーンや、作画の裏話など興味深いお話をつぶやいています。

 一部ですが、板岡さんがプリキュアで担当したお仕事を紹介します。

・ドキドキ!プリキュア第4話 キュアロゼッタ変身バンク
・ドキドキ!プリキュア第11話 ロゼッタリフレクション
・ドキドキ!プリキュア第40話 まこびー、歌いながら変身
・ハピネスチャージプリキュア!第1話 キュアプリンセス変身バンク
・Go!プリンセスプリキュア第4話 キュアトゥインクル各バンク
・魔法つかいプリキュア!第3話 ルビースタイル変身バンク

 これ以外にも、たくさんの印象的なシーンを手掛けています。

 個人的に大好きなのは「魔法つかいプリキュア!」第49話のAパート。

・変身が解けたみらいちゃんとリコちゃんが、宇宙空間で別れるシーン

 あと、同「魔法つかいプリキュア!」第49話Bパートの……。

・大人みらいちゃんが泣きながら「キュアップ・ラパパ」と叫ぶシーン。

 どのシーンもプリキュアファンであれば、絶対に覚えているようなすてきなシーンばかりです。

 「魔法つかいプリキュア!」第49話のみらいとリコが別れてしまうシーンは、プリキュア史に残る名場面の1つであると思います。

 動きのあるダイナミックな作画から、繊細な感情表現までを手掛ける板岡さんは、プリキュアというアニメーションには欠かせない存在なのです。


●とにかく

 板岡錦さん。
 空間を最大限利用し、とにかくよく動く「見た人を感動させる」バンク。
 かわいいの中にカッコイイを、カッコイイの中にかわいいを両立させる画力。
 女の子のちょっとした表情を切り取り、それを1枚の画へと昇華する力。

 自分は作画とかは完全な素人なので深く言及できませんが、どれだけの努力と研鑽(けんさん)を積めば、ここまでのことができるようになるのか想像もつきません。

 でもね。
 だた、僕の「心に響く」のです。

 お会いしたこともないので推測なのですが、板岡さんは絵を描くことが、プリキュアを描くことが、好きで好きでたまらない方なのではないでしょうか。

 プリキュアファンは、少なくとも僕は、その画から「あふれてくる熱量」に魅かれているのだと思います。

 板岡錦さん。

 今やプリキュアというアニメーションには欠かせない人物です。

 これからのプリキュアシリーズにおいても、さらに大きく活躍されていくことでしょう。

 2018年プリキュア15周年作品「HUGっと!プリキュア」でもすてきな変身バンクを見られると良いですよね。

 「あれ? 今のバンク、すごかったぞ……」
 「あれ? このキャラ、カッコイイとは思ってたけど、こんなにかわいかったっけ?」
 あなたがそう感じたとき、それはアニメーター、板岡錦の仕事なのかもしれません。


☆プリキュアレコメンド☆

 毎回、その週のプリキュアのお話が気に入った方におすすめする、過去プリキュアストーリーを紹介していきます。

 キラキラ☆プリキュアアラモード第42話「歌えWOW!あおいラストソング!」」がお気に召した方は、下記のプリキュアストーリーもおすすめです。

 今回は「パジャマパーティー!!」に焦点を当てた珠玉の3話を紹介します。

・ドキドキ!プリキュア第43話「大切な人へ!亜久里の授業参観!」

 ドキドキ!プリキュアでは第33話「ありすパパ登場!四葉家おとまり会!」と、この第43話でパジャマパーティーが開かれました。1作品中2回もパジャマパーティーを行った稀有(けう)な作品なのです。茉莉おばあちゃんに正体がバレたと思った亜久里ちゃんを、仲間の4人が元気付けるお話です。亜久里ちゃんと、茉莉おばあちゃんが家族である事をお互いに再認識する、そんな感動の物語です。

・ハピネスチャージプリキュア!第44話「新たなる脅威!?赤いサイアーク!!」

 クイーンミラージュを浄化し地球に平和を取り戻したハピネスチャージプリキュア。失恋して落ち込むめぐみちゃんを慰めようと開かれたパジャマパーティー。女子トークではなぜか神様ブルーへの不満まで話題になります。そんなコミカルな回と見せかけて、「世界の幸せのために、自分の幸せを犠牲にして良いのか?」を突きつける重要な回でもあるのです。めぐみと誠司のデートシーンのラストがもう、本当に素晴らしいのです。

・魔法つかいプリキュア!第41話「ジュエリーな毎日!魔法学校へ放課後留学!」

 プリキュアのパジャマパーティーは「誰かの悩みを聞くため」に開かれる事が多いのですが、この魔法つかいプリキュアのパジャマパーティーは友達との友情を深めるために開かれました。教頭先生とのコントが面白かったですよね。とはいえ「マホウ界」と「ナシマホウ界」をつなぐための重要な回でもあり、校長先生の過去が描かれます。この回ではキャラクターデザインの宮本絵美子さんが作画監督を務めました。

最終更新:2017/12/7(木) 19:14
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