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ドイツ、揺れる環境大国 脱温暖化目標未達の危機 再生エネ強化で電気料金高騰

12/7(木) 7:55配信

産経新聞

 【ベルリン=宮下日出男】“環境大国”のドイツが揺れている。「エネルギー転換」政策の下、再生可能エネルギーを大幅に普及させてきたが、温室効果ガス削減目標の達成は困難な情勢で、対応をめぐる議論はメルケル首相が次期政権樹立でつまずく一因となった。膨らんだ電気料金もなお重くのしかかる。

 11月中旬、独西部ボンで行われていた気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)。登壇したメルケル氏の言葉は歯切れが悪かった。

 「気候変動は世界の運命にかかわる問題」。対策の重要性を訴える一方、こうも漏らした。「計画を具体的な手段で達成するのはドイツでも容易でない」

 ドイツは温室ガスの排出を2020年に1990年比で40%削減する目標を掲げ、再生エネも発電量の約3割を占めるまで普及した。だが、追加策がなければ、20年の削減は30~31%にとどまると民間機関が試算するなど、目標達成は難しいとの見方が強まっている。

 「環境保護の先駆者としての名声に打撃」。独メディアが10月に報じた政府の内部文書は、大幅に目標を割り込む可能性に強い危機感を示していた。

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 「“環境宰相”は過去のもの」(環境保護団体)。COP23では目標達成への具体策を示さないメルケル氏に厳しい声も出た。だが、対策は当時、政権樹立に向けて山場を迎えた3党連立協議で難民対策と並ぶ主要な対立点で、メルケル氏は踏み込めなかった。

 ドイツでは褐炭を含む石炭がなお発電量で最大の約4割を占める。環境政党の90年連合・緑の党は対策の一環に石炭火力発電20施設の早期廃止を主張。だが、メルケル氏の保守系政党や中道の自由民主党は「最大でも10施設」と対立した。

 再生エネの生産は天候に影響されるため、同時に安定的な供給源を確保しておくことは不可欠。しかもドイツは22年に原発をすべて停止させる方針だ。「『脱原発』する中では過渡的技術として化石燃料は必要だ」。安定供給を重視する自民党のリントナー党首はメルケル氏の折衷案も受け入れず、連立協議の離脱を11月、表明した。

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 「電気は来年も高いまま」。連立協議の行方に国内の関心が集まる中、独メディアは電気料金の動向をこう伝えた。

 ドイツでは再生エネ普及に伴い電気料金が高騰し、2000年から倍以上になった。生産者から再生エネを買い取る費用をまかなうため、電気料金に上乗せする賦課金の急増が主要因。来年は賦課金が若干減るが、デンマークと並び欧州で最も高い電気料金の状況は変わらない。

 政府は入札による買い取りの大幅導入などの抑制策をとり、今後は賦課金の低下も期待されるが、「手頃な電気料金」実現のため財政負担を求める意見も上がる。

 一方で電気料金に含まれる送電費も徐々に増大。再生エネに対応した送電網の整備のため、一段の上昇も懸念される。

 政府の経済諮問委員会は11月の報告書で、エネルギー転換について「計画経済のような手段では費用がかさみ、非効率だと証明された」と指摘。いかなる形であれ、次期政権にはその対応が重要な課題となる。

最終更新:12/7(木) 8:25
産経新聞