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村田が後輩の尾川の世界初挑戦を予想「5RまでのKO勝ち」

12/7(木) 13:18配信

スポーツ報知

 スーパーフェザー級の世界タイトルマッチが9日(日本時間10日)、米ラスベガスとニューヨークで行われる。ラスベガスで行われるIBF王座決定戦には前日本王者の尾川堅一(29)=帝拳=が出場し、技巧派サウスポーのテビン・ファーマー(27)=米国=と拳を交える。ニューヨークのWBOタイトルマッチでは、王者ワシル・ロマチェンコ(29)=ウクライナ=が2階級下のWBA世界スーパーバンタム級王者、ギジェルモ・リゴンドー(37)=キューバ=を迎え撃つ。

 アマチュア時代に五輪連覇を果たしたサウスポーのスーパー・テクニシャン同士の一戦だ。この注目ファイト2試合について、WBA世界ミドル級王者・村田諒太(31)=帝拳=にみどころを聞いた。観戦する側にまわったときはボクシングマニアでもある村田は「尾川は期待を込めて5ラウンドまでのKO勝ち。WBOの方はロマチェンコの判定勝ちと予想するが、番狂わせも…」と展望している。注目の2戦はWOWOWメンバーズオンデマンドにて2元先行ライブ配信される。

 《尾川勝利のカギは対サウスポーのポジショニング》

 ―尾川選手とは同じ帝拳のジムメートでもありますが、分かりやすく説明すると、どんな選手ですか。

 村田(以下、同)「天性の瞬発力があり、倒すボクシングをするので華がありますね。彼は日本拳法出身なので、それを土台にした独特のリズム、踏み込みの速さがあるんです。そしてストレート系のパンチで倒す。左フックでKOしたこともありますが、ベースは右ですね。それに仮に練習ではもうひとつだったとしても、本番に強い、勝負強い面があります」

 ―性格は。

 「明るいですね。この前の僕の試合前『村田さん、痩せましたが、どうしたんですか?』と。今度は僕が『尾川、痩せたけど、どうした?』と言い返しました。でも、お互いに体育会系で長くやっているので先輩(東洋大出身の村田が明大出身の尾川よりも2学年上)と後輩の一線は超えないんです」

 ―相手のファーマーはサウスポーの技巧派です。

 「相手のパンチを外して隙をついて打つ、そんなタイプです。KO率が低い(30戦25勝5KO4敗1分)けれど、逆にここが厄介なところなんです。フルラウンドを戦って勝つだけの技量があるということなので。KO率が低くて勝率が高い選手には、やりにくい選手が多いですね」

 ―デビュー当初、ファーマーの戦績は12戦7勝4敗1分でしたが、以後は18連勝中です。

 「もともと良いものを持っていて、試合するなかで戦い方を覚えていって勝利を重ねてきたんでしょう。どうやれば相手が嫌がるか、どうやれば自分が勝てるか、それを分かっているはず」

 ―サウスポーとの試合では、どんな点がカギになりますか。

 「右構えの選手と比べると距離も違うしタイミングも違うので、相手のパンチがしっかり見えるかどうか、反応できるかという点が重要ですね。いつもならパンチが当たる位置にいるはずなのにサウスポーの場合は異なる。ポジショニングが違うんです。そこで戸惑うと戦いにくくなるので、しっかりポジションがとれるかどうかがカギになりますね。スピードに差があるとポジションがとれるので、その点、尾川に利があるかなと思います」

 ―尾川選手にとって理想的な展開は?

 「尾川はステップインが速いので、それを相手が読めないうちに(パンチを)当ててダメージを与えること。悟られる前に当てたいですね。序盤の三つ(3ラウンド)が大事です。あとは恐怖心を与えること。そうすれば出て来られなくなるし、ガードも下げられなくなるので」

 ―逆にイヤなパターンは?

 「尾川のパンチが当たらず、逆に相手に余裕がある場合ですね。打とうとして躊躇してフェイントをかけ合っているときに軽いパンチをもらってしまうというのが最悪のパターン」

 ―尾川選手は国外初試合となります。ラスベガスでの試合経験もある村田選手からアドバイスはありますか。

 「時差があるので、渡米してから最初の2日間ぐらいは体が動かず汗も出にくいんです。息切れしやすいけれど焦らないこと。アジャストするまでに時間がかかりますから。そういうことは伝えてあります」

 ―どんな結果を期待しますか。

 「今回の試合は“尾川のスピードとパワー対ファーマーの技術”という分かりやすい構図です。僕は5ラウンドまでに尾川のKO勝ち、12ラウンドまで行っても判定勝ちと予想します。できることなら勢いのあるうちに倒してほしいですね。とにかく判定でもいいのでタイトルを取ってほしい」

 《完全制覇のチャンピオン同士の対決》

 ―ロマチェンコ対リゴンドーは五輪で連覇を果たした実績を持つ者同士の試合ですが、4年に一度の五輪で2大会続けて金メダルを取ることは難しいですよね。

 「僕も金メダル(12年ロンドン五輪)を取ったけれど、僕はその大会のチャンピオンであって、アマチュアのチャンピオンというわけではないと思っています。11年の世界選手権で準優勝しているので、あの当時のアマチュアのミドル級最強のひとりではあったと思いますが、大会によっては負けることもありましたから。でも、このふたりは紛れもないアマチュア・チャンピオンなんです。ただの金メダリストではなく、世界選手権も五輪も連覇している完全制覇のチャンピオンです。このふたりはアマチュア史上、最高の選手のトップ5に入るレジェンド。そのふたりが戦うだけでもすごいことです。ましてリゴンドーは2階級飛び越えて試合をするわけですから、とにかく興味深いカードです」

 ―ロマチェンコのアマチュア戦績は397戦396勝1敗といわれています。

 「1敗は07年のシカゴの世界選手権決勝でアルベルト・セリモフ(ロシア)に喫したんですが、この試合、僕は見たんですよ。接戦でしたが、負けたあとロマチェンコが悔しがって『俺が勝ってただろう? おかしいよ』と泣いていました。今回、ロマチェンコは“最強の敵が来た”という気持ちだと思いますよ。ニコラス・ウォータース(ジャマイカ)やジェイソン・ソーサ(アメリカ)らと戦ったときとは違う危機感があると思います」

 ―対するリゴンドーのアマチュア戦績は475戦463勝12敗。こちらもすごい数字ですね。

 「そもそも475回も人と殴り合っていることが驚きです(笑)。このリゴンドーは誰もが敬遠する選手で、アマチュアのなかではレジェンドのなかのレジェンドです。彼と戦ったことのある日本の選手(辻本和正=96年アトランタ、2000年シドニー両五輪出場)から聞いたんですが、『パンチもありスピードもある、技術もある―ないものは何もなかった』と」

 ―今回はプロのスーパーフェザー級での試合で、リゴンドーは2階級上げて戦うことになります。

 村田「階級を上げてどれだけのプラスがあるのか、蓋を開けてみないと分かりませんね。タフネスでプラスがあるのか、パンチ力が上乗せされるのか、減量から解放された分、スタミナでプラスがあるのか。もともとリゴンドーの左は切れますからね」

 ―オッズは9対2でロマチェンコ有利と出ているみたいです。

 「妥当なところだと思います。ロマチェンコが頭を振って距離を詰めて、駆け引きでも勝ればロマチェンコが有利。逆に駆け引きでリゴンドーが上を行くようならば番狂わせもありますね。リゴンドーの攻撃力が過小評価されていますが、左が入ればエーッというシーンもあるんじゃないですか」

 ―ずばり予想は。

 「ロマチェンコの判定勝ち。仮にリゴンドーがダウンしたとしても2度、3度と倒れるシーンが思い浮かばないんです。ロマチェンコでもTKOに持ち込むのは難しいと思います。もしもリゴンドーをKOしたらロマチェンコに拍手を送るしかないですね」

 ―どこに注目して見ればいいでしょうか。

 「僕が楽しみにしているのは技術合戦です。どんな駆け引きが行われるのか―。でも、これは通の見方になるでしょうか。ともかくアマチュアでもプロでも、誰も戦いたくない相手同士が戦うわけですから、単純にそのふたりが戦ったらどうなるか、そういう試合です」

 ―最初から目が離せませんね。

 「そうです! リゴンドーの左が一瞬で決まるかもしれないし、ロマチェンコの右フックが当たれば(リゴンドーが)倒れるかもしれない。今年はアンソニー・ジョシュア(英国)対ウラディミール・クリチコ(ウクライナ)やゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)対カネロ・アルバレス(メキシコ)など、おもしろい試合が多かったけれど、この試合も引けをとらないカードです」

最終更新:12/7(木) 13:19
スポーツ報知