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断れない人がムダにしている“2つの資源” 相手を納得させられる「最強の断り方」

12/7(木) 10:00配信

SankeiBiz

 言いたいことがうまく伝えられない。悪気はないのに相手を不快にしてしまった。皆さんも、そんな経験はありませんか? この連載ではコミュニケーション研究家でアップウェブ代表取締役の藤田尚弓が、ビジネスシーンを上手く切り抜ける「最強の話し方」をご紹介していきます。

 第4回は、人からの依頼や誘いをうまく断れないというケース。なかなか嫌と言えない人がいる一方で、ハッキリ断りすぎて波風を立ててしまう人もいます。

どうすれば自分も相手も大事にした断り方ができるのか。NOと伝えてもカドが立たない「最強の話し方」をご紹介します。

◆断れない人がムダにしている2つの資源

 相手を不快にさせたくない、嫌と言いにくい、いい人だと思われたい……。依頼や誘いをなかなか断れないという人が、知らず知らずのうちにムダにしている資源があります。

 一つめは時間。仕事にかける時間を今までどおり確保しても、その分、自分の時間が削られていきます。いいパフォーマンスをするための休息時間、学びの時間、感性を刺激するための時間など、自分を成長させるための時間が失われます。これらの無駄はすぐには影響がでませんが、3年後、5年後には大きな差となります。

 二つめは自己制御のためのエネルギー。「眠いけれど早く起きなければ」「面倒だけれど調べておこう」といったように、私たちは日常の様々なシーンで自己制御のためのエネルギーを消費しています。全ての頼まれごとに答えていては、このエネルギーが本来使われるべき場面以外で浪費されてしまいます。

 自己制御のためのエネルギーが浪費されると、普段はなんてことない場面でも自分をコントロールできなくなってしまうのです。ダイエットなどを想像するとわかりやすいと思いますが、一時的に自己制御に必要なエネルギーが枯渇し、ちょっとした我慢ができなくなるというのはよくある話。断らないことによる小さな負担が、挫折しやすい状況を作るとしても、皆さんは無理をして引き受けることを選ぶでしょうか。

 断れないことによるリスクは自分が見積もっている以上に大きいもの。しかし、配慮なしに断ってしまえば、やはり不都合がおきてしまいます。どのように断ればデメリットを最小限にできるでしょうか。

◆正当な理由があるときこそ感情緩和の言葉をプラス

 日本人が断りに用いる二大表現は、詫びと理由の表明です(藤森弘子[1994]「日本語学習者にみられるプラグマティック・トランスファー断り行為の場合」)。

例)「せっかく頼ってくれたのにすみません。月末は余裕がなくて手伝えないんです」

 しかし理由を伝えるときに、引き受けられないことの正当性を主張するようなニュアンスになってしまうと、思わぬ反発に繋がってしまいます。

 引き受けると他の大事な仕事に支障がでるといったケースでも、正しさを主張し過ぎない配慮は必要です。具体的な対応策として、相手の感情を緩和するフレーズをプラスするという方法があります。

◆断るときに使いたい感情緩和フレーズ5選

 断られる相手の感情を緩和してくれるフレーズの中から代表的な5つをご紹介します。

1.他でもない○○さん

断るけれどあなたのことは大切に想っていますよということが伝わります

例)「他でもない鈴木さんの依頼なので何とかお役に立ちたいのですが、ウチの部署も繁忙期で……」

2.参加が叶いません

参加したい気持ちがあるということをさりげなく表現できます

例)「ぜひ私もお祝いに駆けつけたいのですが、その日は外せない用事があり参加が叶いません」

3.これに懲りずに

「次こそは」という約束はでしたくないが、また声をかけてほしいという気持ちを伝えたいときにお勧めです

例)「これに懲りずに、また何かあったときにはお声掛けください」

4.せっかく声をかけてもらえたのに

頼ってもらったこと、誘ってもらったことが自分にとって大事なことであるというニュアンスが伝わります

例)「せっかく声をかけてもらえたのに出席できないのが残念です」

5.うわー

同僚や友人など親しい関係の相手に。残念そうな表情と併用すると、更に効果が期待できます

例)「うわー、その日に限って動かせない用事が入っているなんて」

 ところで皆さんは、断るために嘘をついたことがあるでしょうか?

◆「断るための嘘」は「無難な断りフレーズ」に変換を!

 相手を傷つけないための些細な嘘は、人間関係における緊張の緩和に役立ちます。しかし嘘をつき続ける心理的負担やバレてしまった場合のデメリットを考慮すると、断るために嘘をつくというのはお勧めできない方略です。

 実は、断るときに述べる理由は詳細でなくとも効果があります。嘘にならない無難な断りフレーズで代用してみましょう。

ケース1:飲み会の誘いを断る

嘘の理由を使う例)

「肝臓の数値が高くて、ドクターストップがかかってしまったので参加ができないんです」

無難なフレーズを代用する例)

「最近ちょっと体調が悪くて……。残念ですが今回はやめておきます」

ケース2:急な休日出勤の依頼を断る

嘘の理由を使う例)

「病気の母の看病で、土日は出かけられないんです。お役に立てず申し訳ありません」

無難なフレーズを代用する例)

「家庭の事情で、土日の出勤は難しいんです。前もってわかれば対応できるのですが……」

 断りフレーズの「長さ」は、丁寧さを感じさせるポイントですが、具体的でない理由でも丁寧さが伝わることがおわかりいただけると思います。

◆上司は断りやすい誘い方も覚えておこう

 逆に、あなたが誘う側の立場になってみましょう。上司や取引先といったパワーバランスがある関係性は、断りにくさに影響します。必要性が低いケースでは相手が断りやすいような誘い方をしましょう。

 例えば、忘年会や新年会などの飲み会に誘うとき、皆さんはなんと声をかけているでしょうか。お勧めなのは「さしつかえなければ」というフレーズです。「強制の飲み会なのかな」といった心配をさせることなく、断る余地があることを伝えられます。

 こういったコツを覚えておくと、大事な場面で承諾が得やすくなる他、断られたときの心理的負担も少なくなります。

 断るというのは基本的にはネガティブで、相手に不快感を与えたり、人間関係を損なったりする可能性がある行為です。しかし、配慮によってそのリスクを低くすることができます。相手の感情も、自分の感情も大事にすること。それが断るときの最強の話し方なのです。

【プロフィル】藤田尚弓

ふじた・なおみ コミュニケーション研究家/早稲田大学オープンカレッジ講師/株式会社アップウェブ代表取締役

企業のマニュアルやトレーニングプログラムの開発、テレビでの解説、コラム執筆など、コミュニケーション研究をベースにし幅広く活動。著書は「NOと言えないあなたの気くばり交渉術」(ダイヤモンド社)他多数。

最終更新:12/7(木) 10:00
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