ここから本文です

V逸の鹿島から消えた勝利への駆け引き

12/7(木) 16:01配信

スポーツ報知

 川崎が大逆転で初タイトルを獲得し、今季のJリーグは劇的な幕切れを迎えた。引き立て役となってしまった鹿島は、残り2試合で1勝すれば優勝を決められたが、2引き分け。19冠を獲得してきた王者の歴史は繰り返されず、王座を譲った。V逸が決まると、間を置かずに鹿島OBを含む多くの関係者から「鹿島らしくない」などの電話やメッセージが届いた。「―らしくない」の後に続く言葉も、ほとんど同じ。「なんで小笠原を使わなかったの?」だった。

 最終節、鹿島はアウェーの磐田に乗り込んだ。勝てば優勝が決まる一戦で、選手は勇敢に立ち向かった。前半は攻撃を受ける場面が多かった。0―0で折り返し、後半に強さを発揮する鹿島のペースにも見えた。ただ、磐田MF中村俊輔の動きが気になった。CKに向かう場面で、ゆっくり走っていたからだ。主審に促されるまで味方選手と何やら言葉を交わし、CKスポットに向かう時もあった。

 鹿島担当の私がイライラしたのだから、限られた時間の中でゴールを求めていた選手は、なおさらだろう。中村の“スロープレー”が試合に影響を及ぼしたかどうかは証明できないが、鹿島は決定機を生かせなかった。終盤は焦りに拍車がかかり、攻撃は中へ中へと集まった。あえぐイレブンを見て、小笠原が以前「勝つためには色々な駆け引きがあるし、それが必要だ」と話していたことを思い出した。

 例えば、開始直後に相手のキーマンを潰す。「今日はやらせないよ」というメッセージを、相手だけでなく味方にも知らせるのだ。そして、ペナルティーエリアの左右スペースに、20~30メートルの縦パスをポーンと送り続ける。成功率は30%くらいだろうか。DFが最も嫌がると言われるエリア。そのパスで得点を狙うというより、むしろ「相手(ライン)を下げる」のが目的だ。これらの布石を打ち、駆け引きを続けた先に、ゴールや勝利があるのだという。

 鹿島が得意だったはずの試合マネジメントは、むしろ磐田の中村の動きの方に「巧みだ」と感じる結果になった。小笠原は8月26日のC大阪戦に先発後、最終戦でも出番はなく、10試合連続不出場でシーズンを終えた。磐田戦後、小笠原はピッチから下がるとロッカールームを背にし、チームメートには見えないように涙を落とした。試合に出なかった試合で、涙の跡を見たのは、担当13年で初めてのことだった。

1/2ページ

最終更新:12/7(木) 16:01
スポーツ報知