ここから本文です

大リーグ移籍をめぐって、大谷翔平と吉本興業の関係

12/8(金) 8:17配信

ITmedia ビジネスオンライン

 日本ハムからポスティングシステムによるメジャーリーグ(MLB)移籍を目指す大谷翔平投手の新天地が注目されている。MLB公式サイトを含め米メディアでも報じられているように大谷側は連日に渡って複数のメジャー球団と交渉を続けており、その行き先は徐々に絞られつつある。

吉本興業の事業プラットフォーム

 当初、日米のメディアで移籍の最有力先とみられていたニューヨーク・ヤンキースは早々に脱落。西海岸を拠点とする球団が移籍先の候補として取り沙汰されるなか、ここにきて「本命」と目されているのがサンディエゴ・パドレスだ。

 ナショナルリーグ西地区のパドレスは2007年に2年連続で地区優勝を果たして以来、ここまで11年間もポストシーズン進出を果たせていない。今季も71勝91敗で借金20の地区4位に沈み、低迷中だ。保有するマーケットが小さい上に地味な印象もぬぐえないが、メジャーでも二刀流での起用を望む大谷にとっては案外融通も利いて溶け込みやすい球団となるかもしれない。

 パドレスには今のところスーパースター級のメジャーリーガーがほとんど所属していないことから球団がOKさえすれば、周りに遠慮する必要もなく二刀流でのプレーに集中できそうな感がある。またナ・リーグは日本のパ・リーグのようなDH制が敷かれていないので投手として出場した試合では確実に打席に入れるし、マウンドに立たない日でも代打起用や本拠地でのインターリーグならばDH出場が可能だ。それこそ活躍次第でルーキーイヤーから、いきなり中心選手になる可能性もあるだろう。

 しかもパドレスは08年から日本ハムと業務提携を結んでいる。今季からヘッドハンティングで獲得したスポーツディレクター、中垣征一郎氏は昨年まで日本ハムのトレーナーを務め、大谷についても入団当初からトレーニングメニューを考案するなど面倒を見続けてきた。業務提携を結ぶパドレスならば二刀流起用のデータを持つ日本ハムから助言も得られるし、何より大谷のことを知り尽くす中垣氏という大きな存在もある。複数のメディアがパドレスをこぞって最有力と唱えているのもうなづけるところだ。

●大谷の背後に強力な“影のサポーター”

 とはいえ、契約の世界は最後にサインが交わされるまで何が起こるか分からない。この流れが突然覆ることだって当然あり得る。ただ現段階でひとつ言えるのはこのパドレスが急浮上していることも含め、大谷の背後に強力な“影のサポーター”がバックアップ体制を強いているという点だ。それが、あの吉本興業である。

 表立って大谷の周辺から吉本興業の名前は出てきていない。しかし周囲をひも解いていくと、実は結びつきが深いことが鮮明になってくる。まず大谷の代理人を務めるネズ・バレロ氏だ。バレロ氏が所属するCAA(クリエイティブ・アーティスツ・エージェンシー)は米国最大手のタレントエージェンシーで吉本興業の米現地法人「よしもとエンタテインメント・USA」ともグローバルな戦略的提携を結ぶ深い関係にある。

 しかも大谷の入団先として有力視されるパドレスのフロントには元メジャーリーガーで吉本興業の契約社員でもある斎藤隆氏がいる。ベースボールオペレーションアドバイザー兼パシフィックリムアドバイザーとして若手選手の育成やチーム戦略や編成面の立案に携わる重要な役割を担う斎藤氏は、パドレスで大谷獲得の中心的役割を果たしているともっぱらだ。その斎藤氏と大谷の代理人、バレロ氏は同じ吉本興業の枠組みなのだから普通に考えれば、他の球団よりも話が有利に進みやすいことぐらいは誰にでも理解できるだろう。

 吉本興業が近年、非常にスポーツマネジメントにも力を入れているのは広く知られているところだ。CAAのバレロ氏は前トロント・ブルージェイズの青木宣親外野手、マイアミ・マーリンズの田澤純一投手を顧客にしており、この日本人メジャーリーガー2人との契約の段でも同社と戦略的提携を結ぶ吉本興業が橋渡しを行っていたと言われている。

●“大谷利権”を巡る仁義なき戦い

 しかし大谷は昨年12月に大手芸能プロダクションの「ホリプロ」とマネジメント契約を結んだことが発表されたばかり。ホリプロからすればライバル会社「吉本興業」の名前がチラつく代理人やパドレスが移籍先候補として取り沙汰される流れは、どう考えても看過できるはずがない。その流れを象徴するかのように、業界内で妙なうわさが飛び交い始めているという。「ホリプロと大谷サイドの間に隙間風が吹き始めているのではないか」というものだ。事情通は次のように続ける。

 「最近、『大谷とホリプロの契約は切れているのではないか』と勘ぐる関係者がいる。その一方で『いや、ホリプロと大谷の関係は以前にも増して強固になっている。これからメジャーに行く金の卵をそう簡単にホリプロが手放すはずがない』という声もあるので、現時点では何とも言えない。

 いずれにしても吉本興業は大谷と契約をしているわけではないし、表面上では無関係。だから国内でのマネジメント契約をホリプロと結び、吉本興業の息がかかるCAAのバレロ氏と代理人契約を結ぶダブルスタンダードの形式は“いびつ”ではあるにせよ、成り立つと言えるのかもしれない。

 ただし、その裏側では吉本興業と密接な関係にある1人の球界OBが暗躍し、メジャー移籍を目指す大谷側を口説き、所属先である日本ハムにも筋を通す形で働きかけを行っていたとも聞く。メジャー移籍が正式に決まった暁には吉本興業が密かにバックアップする形で、大谷の親族が個人のマネジメント会社を新たに設立するのではないかという怪情報までささやかれている。

 あくまでも個人的な見解だが、たとえ大谷が最終的に斎藤氏のいるパドレスではなく他の球団に行くことになったとしても、この莫大な“大谷利権”を巡る仁義なき戦いでは何だか最後の最後で吉本興業の一人勝ちになりそうな予感がしてならない」

 確かにメジャーリーグの世界にも顔が利く吉本興業のグローバルパワーは大谷にとっても非常に心強い。そうした利点をしっかりと大谷側に水面下でプレゼンテーションし、メジャーリーグ挑戦間際のところで懐に入り込んだ吉本興業の必死の巻き返しはやはり企業努力の賜物といえそうだ。

 果たして大谷はパドレスか、もしくは別の西海岸を拠点とするメジャー球団への移籍を選ぶのか。どのチームのユニホームを着ることになっても、日本の誇る二刀流プレーヤーと吉本興業の関係が色あせることはないだろう。

(臼北信行)