ここから本文です

「顧客視点」という言葉に潜む“落とし穴”

2017/12/8(金) 10:10配信

ITmedia エンタープライズ

 よく「顧客視点で考えろ」や「現場視点で考えろ」といった言葉を聞く。確かに顧客の視点は大事だろう。サービスや製品を買ってくれるのは顧客なのだから。

 ただ、実際のところ、どうしたら具体的に「xx視点で考える」ことができるのだろうか。

●「xx視点で考える」とは?

・どうしたら顧客視点で考えられるのか?
・どうしたら顧客の立場で考えられるのか?

 そこまで踏み込んで考えているだろうか? 「ごもっとも」なんて言って、そこで思考停止していないか?

 動きが想像できないキーワードは意味のない言葉になってしまう。体の動かし方がイメージできるまで、かみ砕く必要がある。

 以前、参加したプロジェクトに、“伝説の営業マン”がいた。数千人の営業マンのトップを走っていた、名実ともにトップ営業マンだ。仮にKさんとする。その人とこんな会話をした。

K:今回のシステムは、営業のためのツールにならなければ意味がない。営業を楽にするものにしたいんだ。

私:なるほど、「顧客視点で考えて設計したい」ということですよね。

K:うーん。基本はそうなんですが、「顧客視点」と言ってる時点で顧客側に立ってないと思うんです。

私:?

K:「顧客の視点を持とう」と言った時点で「自分の視点とは別に、顧客の視点も持とう」という暗黙の前提が見え隠れする。これはあくまで「自分の立場」に立って考えているんだと思うんです。

私:なるほど、そう言われると……。

K:だから、「視点を持つ」んじゃなくて「顧客だったらどう感じるか?」と言うべきだと思うのです。「視点」なんていらない。リアルに「自分が顧客」だったら、をイメージする。顧客になりきる。それが、今回求められることだと思うのです。僕は営業のとき、必ずそうしてました。そうでなけば上から目線で「顧客視点で考えてやったぜ」という雰囲気が出てしまう。

私:なるほど。Kさんが伝説の営業マンだった理由を垣間見た気がしました。

K:そうですか?

私:Kさんは、何かを売るのではなく、「自分が顧客だったら何をしてほしいか」を考えていた。顧客自身になることで、相手が本当に求めているものを理解しようとしていたんですね。そんなふうに、利害抜きで、自分になりきって考えてくれる営業マンがいたら、その人から何でもいいので買いたくなっちゃいますよ(笑)

K:そうかもしれませんね。でも、私は本当に価値のあるものしか売りませんよ。自分が「顧客だったら」絶対に失敗したくないでしょ?

●“顧客視点”を持つ方法とは

 徹底的に顧客に“なって”考える。「顧客“だったら”」がキーワードだ。――この考え方はとてもパワフルだと思った。

 「顧客視点で」「経営視点で」「現場目線で」「全体最適視点で」なんて言葉はよく聞くけれど、結局どうすれば顧客視点で考えられるのか、実のところよく分からない。「顧客視点で考える」と号令をかけて満足し、「考えたつもり」になってしまう。

 それを避けるための答えはシンプルだ。「自分が顧客だったら」と考えればいい。

 この想像力が低いと、何をやってもダメだ。気が利かない人は、この想像力が低い。相手になりきることが大事だ。

 超優秀な営業マンは、営業などしていなかった。誰よりも顧客に心を重ねて、誰よりも顧客自身になっていたのだ。想像できないなら、顧客になってみればいい。そのサービスを受けてみればいい。その仕事をやってみればいい。

 そして、「顧客だったら」と考えると、途端に自分の利害を優先する思考から抜け出せる。

 「顧客だったら何をしてほしいか」を考えた先に、自分が売っているものがハマるなら売ればいい。そうでないなら、押し売りするのではなく、「僕のサービスは合いませんね」とハッキリ伝えた上で、ニーズを満たせそうなサービスをよそから探してきて伝えてあげればいい。自分なら、そうしてほしいはずだから。

 この考え方は、今でも僕の基本スタンスになっている。顧客に心を重ねる。顧客より顧客のことを考える。そして顧客にとって正しいことをする。その結果、選ばれるのが僕らのビジネスにならなくたって全く問題ない。

 実は、これは、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのポリシーにもなっている。

・「自社の利害は横に置け。顧客に取って正しいことを追求せよ」

 こういうふうに仕事ができるのは、気持ちがいいものだ。