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「AIとはソフトの進化」 Intelが取り組みを強化

2017/12/8(金) 10:44配信

EE Times Japan

●AIへの取り組みを進めた2017年

 Intel(インテル)にとって2017年は、AI(人工知能)技術、とりわけ機械学習向けの開発に関わる取り組みを積極的に行った年となった。

機械学習を創薬に応用する(クリックで拡大)

 2017年4月には日本で「インテルAI Day」を開催した他、Preferred Networks(PFN)と、PFNのディープラーニング向けフレームワーク「Chainer」の開発で協業すると発表。同年半ばには、Intel Capitalを通じて、AIを手掛ける3社に投資を行った。7月には、データセンターやAI向けを想定した、「Skylake」アーキテクチャベースのプロセッサ「Xeon Scalable」を発表している。USB型のディープラーニング用開発キット「Movidius Neural Compute Stick」も発表した。さらに、2017年内に、ニューラルネットワーク向けプロセッサ「Nervana ニューラル・ネットワーク・プロセッサ」の出荷を開始するとしている。

 機械学習には学習(トレーニング)と推論の段階があるが、Intelはそのどちら向けにも製品を開発している。学習を行うデータセンター向けにはXeon Scalableプロセッサの他、バッチ処理を高速化するアクセラレーターとして「Intel Stratix 10 FPGA」、前述したNervana ニューラル・ネットワーク・プロセッサをそろえる。一方の推論向けには、Movidius Neural Compute Stickのような開発キットがある。Movidius Neural Compute Stickは、ディープラーニングのフレームワーク「Caffe」をベースにしたCNN(畳み込みニューラルネットワーク)に対応し、クラウドに接続せず、エッジデバイス上で低消費電力で推論ができる。

●「AIはソフトのイノベーション」

 Intelの日本法人インテルでアジアパシフィック・ジャパン担当 HPCディレクターを務める根岸史季氏は、「AIの進化は、基本的にはソフトウェアのイノベーションである」と述べる。「特殊なユースケースを除いて、特別なハードウェアはAIに必要ない。例えば、汎用性の高いXeonのようなプロセッサを使うとしても、ソフトウェアの最適化を図ることで、機械学習の性能を大幅に向上できる」(同氏)

 実際、ソフトウェアの最適化のみで、「Xeon Platinum 8180」プロセッサは、「Xeon E5-2699 v3」に比べ、学習は最大113倍、推論は最大138倍の性能を実現したという。

 根岸氏は、ソフトウェアの最適化を図ることで、幅広いユースケースに機械学習を適用できると説明。その一例として、京都大学医学部付属病院の種石慶氏が説明会に登壇し、同病院でのユースケースを紹介した。

●創薬でAIを活用する

 京都大学医学部付属病院 先端医療機器開発・臨床研究センターの種石氏は、機械学習を創薬に応用することに大きな期待を抱いていると語る。

 背景にあるのは、製薬業界が本質的に抱える課題だ。現在、新薬の開発には、1品目当たり約1200億円の費用と約10年以上の時間がかかっているという。それにもかかわらず、医薬品開発の成功確率はわずか2万5000分の1以下だ。「極めてハイリスク、ハイリターンの世界」だと種石氏は述べる。

 そこで注目されているのが計算創薬だ。基本的に創薬というのは、病気の原因となる生体内タンパク質に対して、結合する化合物を見つけることである。だが、化合物は何万種にも上るため、実験室で生成した“手持ち”の化合物から、有効な化合物が見つかる保証はない。

 計算創薬では、実物の化合物ではなくバーチャルに生成した化合物を使う。ターゲットとなるタンパク質をうまく結合するか、細胞内に入った時の動きはどうか、といったことを、実験ではなくシミュレーションで検証することができる。

 種石氏が期待を寄せるのは、この計算創薬にディープラーニングを応用することである。実は種石氏らは、既に5年以上前から取り組みを進めてきた。「タンパク質と化合物の結合パターンを膨大なデータから学習し、あるタンパク質に対して結合する化合物、つまり薬の候補となるような化合物を予測する」という方法を試してきたという。もともとスーパーコンピュータ(スパコン)の「京」を使っていたが、その時は25万件の相互作用のデータを学習するのが精いっぱいだったと種石氏は語る。

 それが、Xeonサーバで学習させた結果、400万件のデータを学習できたという。豊富なシステムメモリに加え、ソフトウェアをIA(Intel Architecture)に最適化することで、これほどの量の学習が可能になったとする。

 種石氏は、「計算創薬を支えるAIシステムが、(試用段階ではなく)“現実に使えるもの”として導入されていることが重要なポイントだ」と結んだ。

最終更新:2017/12/8(金) 10:44
EE Times Japan