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シェアハウスの高齢者版「グループリビング」…つかず離れず、自由に暮らす

12/8(金) 12:11配信

読売新聞(ヨミドクター)

 一人暮らしの高齢者が増えるなか、血縁のない高齢者が集まって、元気なうちから一緒に暮らす「グループリビング」という住まい方が注目されている。一つ屋根の下でつかず離れず、自由に暮らせるのが特徴だという。どんな暮らしなのか取材した。(粂文野)

もしもの時でも「安心」

 神奈川県藤沢市の住宅街の一角にある木造2階建てのグループリビング「COCOたかくら」。玄関を入ると、畳の小上がりが付いた45平方メートルほどの共有スペースが広がる。「頂きもののサトイモ、焼いたので食べましょう」。住人の女性たちが迎えてくれた。

 他人同士が共同で暮らすシェアハウスの高齢者版がグループリビングだ。2006年に開設されたCOCOたかくらは、トイレやキッチンのついた10の個室のほか、共有の食堂や浴室、ゲストルームなどがある。現在、暮らしているのは、70~95歳の女性9人だ。

 3年前に移り住んだ粂野 ●至子(よしこ) さん(86)は、元保育園長。独身で過ごし、40年近く勤めた保育園を退職後も音楽学校の専任講師などを務めながら、市内の一軒家で暮らしていた。東日本大震災で一人暮らしに不安を覚えたのをきっかけに入居を決めた。別の80歳代の女性も、一人暮らしへの不安が住み替えのきっかけだったという。

 住人が大切にしているのは、「自立しながら共に暮らす」こと。夕食は一緒に食べるが、生活は自由で、門限もない。風呂のお湯入れや夕食時のお茶入れを当番制にして役割を互いに果たすなど、生活のルールは話し合って決める。

 平日の日中は、住宅を運営するNPO法人のスタッフ1人が滞在し、話し合いの手助けや困りごとの相談も行う。気が向けば住人同士が一緒に体操したり、お茶を飲みながらおしゃべりしたりすることもあり、「住人の交流が張り合いになり、もしもの時の安心感もある」と粂野さんは話す。

※●は「にんべん」に「予」

長屋のような支え合いの関係

 入居は65歳以上が対象。費用は、入居一時金370万円のほか、家賃や夕食代などに月13万8000円かかる。介護が必要になれば、介護サービスを受けながら暮らせる。実際に訪問介護を利用している人もいる。

 住人同士の共有スペースがあるシェアハウスは、阪神大震災後、仮設住宅で孤独死が相次いだことから広まった。日本シェアハウス協会によると、高齢者を積極的に受け入れている住宅もあり、比較的元気な高齢者の住まいの選択肢として今後、期待されそうだ。

 グループリビングは、住民同士の交流によって長屋のような支え合いの関係を作り出していくのが特徴。一方、介護施設やサービス付き高齢者向け住宅のような制度上の位置付けはない。

 介護や医療が必要になっていく高齢期の共同居住のため、認知症が進行した時にどこまで支えるのか、どの段階で介護施設に移るのかといったことについて、住民や事業者で話し合っていくことが欠かせない。

 埼玉県新座市でグループリビングを営むNPO法人「暮らしネット・えん」の小島美里代表理事は「ついの住み家として住み続けるためには、住人の変化に応じて共同生活のルールを変えていくことや、介護や医療との連携が十分にできる体制を作ることが大切だ」と話している。

65歳以上の一人暮らし593万人、今後も増加

 高齢化や核家族化、生涯未婚率の上昇などを背景に、一人暮らしをする高齢者は増え続けている。

 2015年の国勢調査によると、一人暮らしの65歳以上の高齢者は593万人。1995年の220万人から20年で約2.7倍に増えた。今後も増加を続けるとされ、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2035年には762万人に増えるとされている。

 一人暮らしをする高齢者の割合は、男性が13%、女性が21%。平均寿命が男性より長い女性の方が割合が高くなっている。