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立山・黒部が「20世紀遺産」に 砂防施設や発電所群有識者選定

12/8(金) 17:20配信

北日本新聞

 有識者でつくる国際記念物遺跡会議(イコモス)の国内委員会は8日、後世に残したい「日本の20世紀遺産20選」を発表し、県内から「立山砂防施設群」が20選の3番目、「黒部川水系の発電施設群」が4番目と上位入りした。イコモスは世界遺産の審査に関わる学術機関。権威ある組織が選んだ20世紀遺産に入ったことで、歴史的、文化的価値が厚みを帯びた。石井隆一知事は「世界遺産登録に向けて、重要で大きな前進と考えている」と述べ、取り組みを強化する考えを示した。 

 20世紀遺産は、イコモスが日本を含む約30カ国の国内委に呼び掛けて選んでいる。日本では専門家でつくるワーキンググループ(WG)がインフラや都市公園、近代建築の作品などを選定。立山砂防、黒部川水系発電の両施設群は「上野恩賜公園と文化施設群」「国立代々木屋内総合競技場」(いずれも東京)に続く3、4番目に位置付けた。

 立山砂防施設群は、常願寺川水系にある白岩、本宮、泥谷の各えん堤などが主な構成資産。WGは「水系一貫の総合的砂防システム」と評し、海外から導入した砂防技術を発展させ、世界に広めた影響の大きさを強調した。黒部川水系の発電施設群は、黒部ダムをはじめ、日本を代表する建築家、山口文象が設計した黒部川第二発電所など約20の施設が対象。20世紀の特徴である発電施設の大規模化を象徴し、「自然と一体化した電源開発の究極」と評価した。

 工学院大(東京)で行われた会見では、WGの主査を務めた後藤治同大理事長らが選んだ理由を説明。20選入りが「ただちに世界遺産に結びつくものではない」と述べつつも、「世界遺産になる可能性を内包している」と文化的価値の大きさを訴えた。

 発表を受け、文化庁世界文化遺産室の鈴木地平文化財調査官は「直接の関係はない」としつつ「今後、世界遺産候補を協議する場で、20選を参考にする可能性はある」と話した。

 石井知事は、両施設群の20選入りを「富山にとって大変うれしいニュース」と喜ぶとともに、「関係の市町や団体など幅広い県民の皆さんと連携・協力し、取り組みを進める」と語った。

■世界遺産へ追い風 「立山砂防施設群」や「黒部川水系の発電施設群」がイコモス国内委員会の「日本の20世紀遺産20選」入りしたことは、県などが進めてきた世界文化遺産登録に向けて大きな追い風となる。実現へ、普遍的で顕著な価値のさらなるアピールが必要だ。

 国内委は、8日の会見で「20選入りが即世界遺産というものではない」と述べるにとどめたが、イコモスは、世界文化遺産の審査で大きな役割を担う学術機関。価値を認められた意義は大きい。

 登録には、国内候補を列挙した国の「暫定リスト」に載る必要がある。現在文化遺産のリストにあるのは8件。うち「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本)はユネスコに推薦済みで、「百舌鳥・古市古墳群」(大阪)も2018年の推薦が決まっている。取り下げた遺産もあり、関係者の間で「暫定リストの見直しがあるのでは」との声も上がり始めている。

 登録を目指す各自治体が資産の価値付けに苦労する中、「立山・黒部」は新たに「20世紀遺産」というお墨付きを得た。石井知事が「極めてハードルは高い」との認識を示しつつ「重要で大きな前進」とコメントし、将来的な暫定リスト入りに自信を見せるのは、そうした経緯を踏まえてのことだ。

 ただ、構成資産のうち、黒部ダムなど一部を除いては、県民が気軽に訪れることができない施設も多く、価値が周知されているとは言いがたい。登録運動の推進には地元の一層の盛り上がりが欠かせない。(文化部長・寺田幹) 


 ■イコモスとは 
正式名称は国際記念物遺跡会議。遺跡や歴史的建造物の保全に貢献するため、1965年に設立された非政府組織(NGO)。約150カ国の有識者約1万人が所属。パリに本部を置き、各国に国内委員会が組織されている。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関として世界文化遺産の登録審査や保全状況の調査にも関わる。

北日本新聞社

最終更新:12/9(土) 8:43
北日本新聞