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日食の観察で網膜に三日月形の傷、NYの女性の症例

12/8(金) 16:18配信

CNN.co.jp

(CNN) 今年8月に米ニューヨーク市内で日食を観察していて網膜を損傷した26歳の女性の症例が、7日の眼科学会誌に発表された。女性の網膜には、日食とまったく同じ形の三日月形の傷があった。

この女性、ニア・ペインさん(26)は8月21日、ニューヨークのスタテン島で日食を観察した。最初は肉眼で太陽を見上げたものの、まぶしすぎて何も見えなかったため、近くにいた女性にめがねを借り、それを着けて15~20秒間、部分日食を観察したという。

日食を観察するためには、国際標準化機構(IOS)の基準を満たした専用のめがねを使う必要がある。

しかし日食観察の人気上昇に伴い、日食めがねは品薄状態になる。ペインさんも、日食めがねがどんなものかは知らなかったという。使ったのはサングラスのようなめがねで、太陽は非常にまぶしいと感じた。

「それでも気にはしなかった。日食の観察は素晴らしい経験だと思ったから」。CNNの取材に応じたペインさんはそう振り返った。

視野の中心部に暗く見える部分があることに気づいたのは、それから6時間後。翌日になると、左目の中心部の視野が欠けた状態になっていた。

最初に受診した救急病院では、それほど深刻な症状とは受け止められず、網膜も診てもらえなかった。

そこで友人の紹介で、日食を観察してから2日後に、ニューヨークのマウントサイナイ病院を受診。そこで眼科の専門医を紹介され、太陽光によって網膜に障害が起きる日光網膜症と診断された。症状は両眼にあったが、左目の方が重度だった。

医師は補償光学と呼ばれる技術を使った装置でペインさんの両眼の画像診断を行い、損傷の様子を調べた。その結果、光受容体の細胞に三日月形の損傷があることが分かった。

「日食の間の太陽の形と、光受容体の細胞の損傷痕には確かな一致が見られた」と医師は話す。

視界の中で暗く見える部分の形をペインさんに描いてもらったところ、ニューヨークでこの日に観察された日食の形と一致していたという。

補償光学は軍がレーザー光線の照準を合わせる目的で開発した技術で、望遠鏡にも応用され、今では網膜の光受容体の細胞を調べる装置にも使われるようになった。

従来は、ガラスのスライドを使って顕微鏡で調べなければ、これほど詳細な観察は不可能だった。

日光網膜症の治療法は存在しない。症状は改善することもあれば悪化することもあるが、完治することはない。

医師団によれば、ペインさんが使っためがねは国際安全基準を満たしていない商品だったと思われる。

米天文学会によると、潜在的に危険な日食めがねが市場に大量に流通しているとの報告は相次いでいるという。偽のIOS準拠ラベルが付いた商品が出回っているとの情報もある。

日食から数カ月たった今、ペインさんの症状は改善も悪化もしていない。右目を主に使う練習をしているが、テレビや映画を見る時には画面に近寄る必要がある。1カ所を数秒以上見続けると、視界の中央に点が見え、視野全体を覆っていく。文字を読むことは最も難しい。

左目も周辺の視野はまだ残っており、ペインさんは以前通りの生活を続けようと努めているという。

最終更新:12/9(土) 10:57
CNN.co.jp