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社説[エルサレム首都宣言]政策迷走し和平遠のく

2017/12/9(土) 9:20配信

沖縄タイムス

 トランプ米大統領は、エルサレムをイスラエルの首都として正式に認定し、テルアビブにある米大使館の移転準備を始めるよう国務省に指示した。

 中東にまん延する絶望や憎悪、報復の連鎖を拡散させかねない決断であり、中東和平の「仲介役」を自ら放棄したのに等しい。

 「アメリカ・ファースト」を旗印に掲げ、国際協調に背を向けがちなトランプ大統領の存在そのものが今や、国際政治の不安定要因になりつつある。

 エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教という三大宗教の聖地である。イスラエルもパレスチナ自治政府も、この地を「永遠の首都」だと位置づけ重視してきた。 エルサレムの地位は、イスラエルとパレスチナの和平交渉で決める、というのが国際社会の共通認識だった。

 米議会は1995年、エルサレムの首都認定と大使館移転を求める法律を可決しているが、歴代の大統領は拒否権を発動し、実施を先送りしてきた。

 国際社会から孤立するおそれがあること、自国の安全保障にマイナスの影響を与えかねないこと-などの理由からだ。

 方針転換にあたってトランプ氏は「過去の失敗した戦略を繰り返しても問題は解決できない」と述べ、「新たなアプローチ」の必要性を強調する。だが、具体策にはまったく触れていない。

 支持基盤への配慮や公約の実行という国内事情を優先した、とも伝えられている。

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 米国がエルサレムを首都と認定し大使館を移転すれば、対立が再燃するのは火を見るより明らかである。

 英仏中ロや中東のイスラム諸国からは、非難や抗議、懸念、不支持の声が相次ぎ、宣言発表後、世界各地で抗議デモが展開された。

 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスは「インティファーダ(反イスラエル闘争)を始めなければならない」と強く反発している。

 イスラエルのネタニヤフ首相はトランプ氏の決断を称賛、国内には歓迎ムードが広がっているが、米国の一方的な措置が解決につながるとはとても思えない。

 現在、エルサレムに大使館を置く国はない。エルサレムを首都と定めたイスラエル基本法は国際法違反に当たる-として国連安全保障理事会が国連加盟国に対し、在外公館を設置しないよう要求する決議を採択したからだ。

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 この問題に対する日本政府の姿勢は極めてあいまいだ。英仏独などと比べても、消極的な対応が際だっている。

 日本はこれまで、パレスチナ国家樹立によるイスラエルとの「2国家共存」を支持してきたのではなかったのか。 トランプ氏は今や、「公正な仲介者」としての信頼を失っている。そんな時こそ安倍晋三首相は、友人としてトランプ氏に軌道修正を求めるべきではないのか。日米同盟を優先するあまり、言いたいことも言えず、あいまいな姿勢に終始するのは嘆かわしい。

最終更新:2017/12/9(土) 9:30
沖縄タイムス