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チケットがまるで売れていない平昌五輪

2017/12/11(月) 13:06配信

ニュースソクラ

北朝鮮の参加もいまだ不透明

 開幕までわずか70日余りを残した平昌(ピョンチャン)冬季五輪(2108年2月9日~25日)。低調なチケット販売、韓国国民の無関心、北朝鮮危機による参加国のボイコット懸念などで興行面で赤信号が灯っている。

 平昌五輪組織委員会によると、11月16日現在、平昌冬季五輪のチケット販売率は36.7%。チケット販売率が低迷した理由は、まず、韓国国民の無関心と相対的に高いチケットの値段にある。

 一番良い「A席」を基準に、開幕式の入場券は150万ウォン(16万円)、人気種目のフィギュアスケートは80万ウォン~60万ウォンと歴代のどの五輪より高い。劣悪な観覧環境もまた、チケットの購入を惑わせている原因となっている。

 11月4日、五輪の開・閉会式場(オリンピックプラザ)で開かれたオリンピック「D-100」コンサートでは低体温症患者が続出した。韓国通信社の『連合ニュース』によると、コンサート観覧中、計7人が低体温症を起こして救急車が出動した。

 同誌は、この日の気温は5度ほどだったが、工事経費の節減のため、客席に屋根のない開放型で作られたオリンピックプラザで長時間強い風に当たったせいで観客たちの健康に異常が起きたと説明した。

 韓国気象庁によれば、五輪期間中、平昌の平均気温はマイナス4.8度だ。平均最高気温は0.2度、最低気温はマイナス9.8度だ。平昌五輪組織委員会側は手暖炉と毛布を配るなど寒さ対策を立ていると明かしたが、韓国マスコミは、氷点下の寒さの中で、屋根もなく、風除けもいないところで長時間試合を観戦するためにはより積極的な安全対策が必要だと指摘する。

 大会期間中の「ぼったくり」料金も問題となっている。韓国日刊紙の『朝鮮日報』によると、五輪競技が開かれている平昌と江陵(カンルン)一帯の劣悪なモーテル(ビジネスホテルより下級の宿泊施設)の1泊料金は普段より10倍も高い40万ウォン~60万ウォンだ。

 「ぼったくり」は民間業者だけではない。韓国の日刊紙『文化日報』は、大会期間中に組織委員会が取材にくるメディアなどに提供する品目の値段が高すぎると指摘した。同紙によると、競技場などに駐車できる駐車料(1ヶ月間)が4,715ドル、ソケット4つのマルチキャップが713.5ドル、専用インターネット使用料(100Mbps)が21,700ドルだ。

 唖然とする高い料金を設定した理由に、運営予算が不足している原因もあると同紙は説明した。組織委員会によると、運営に必要な予算は2兆8000億ウォンだが、確保された予算は2兆5000億ウォンほどで、約3000億ウォンが不足している。不足した予算を埋めるため、大手企業へSOSを送ったが、状況は思わしくない。

 これまでメガスポーツイベントの不足した予算金を充当してくれた大手企業が崔順実(チェ・スンシル)ゲートの影響で、揃って背を向けたのだ。目標額に掲げた9,400億ウォンの企業後援金も、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が直接公営企業へ支援要請し、今年8月になってようやく達成できた。

 このような状況が続くと、組織委員会は全国自治体に事実上押し売りに近いチケット購入の協力要請を送った。ケーブルニュースチャンネルの『YTN』によると、五輪チケット購入のためにソウル市が10億ウォンを超える予算を編成するなど、ほとんどの自治体が関連予算を編成している。

 続いている北朝鮮危機も不安要素だ。この9月、北朝鮮核危機が高まると、フランス、ドイツ、オーストリアなどの冬季スポーツ強国から、北朝鮮危機が続く場合には選手団の安全をために大会不参加を考慮しているという発表が続いた。

 冬季スポーツの花ともいわれるアイスホッケー種目はすでに「北米アイスホッケーリーグ(NHL)」が平昌五輪不参加を通知しており、「ロシア大陸間アイスホッケーリーグ(KHL)」まで不参加の動きを見せている。

 しかし、韓国政府は国際社会の懸念を一蹴し、北朝鮮の出場を誘導して平昌冬季五輪を「平和オリンピック」として大いに盛り上げる計画だと豪語している。対話による北朝鮮問題の解決が長年の持論でもある文在寅大統領だが、国際社会の制裁ムードの中、北朝鮮に対する直接的な支援や南北経済交流の道が閉ざされてしまった。

 そこで統一部を始めとする韓国政府は文化交流やスポーツを通じて南北交流の扉を開くという戦略に出たのだ。そういう意味で平昌冬季五輪は、孤立している北朝鮮を国際社会の舞台へ導くための絶好の機会なのだ。

 しかし、当初の構想していた南北韓による単一チーム構成や北朝鮮の馬息嶺(マシクリョン)スキー場を活用する共同開催案は、北朝鮮の否定的な反応で事実上挫折した。

 今年7月、韓国で行われたテコンドー世界選手権大会の開幕式で、南北韓の単一チームを提案した文大統領の発言に対し、張雄(チャン・ウン)北朝鮮IOC委員は、スポーツ交流が南北対話につながるという期待は、「よく言ったら天真爛漫で悪く言ったら絶望的」として、反対の立場を明確にした。

 ただ、張雄委員は、9月にペルーで開かれたIOC総会で、政治とスポーツは別問題で、北朝鮮選手団の「平昌五輪参加を準備中」と言い、平昌五輪の関係者たちや韓国政府を沸き立たせた。

 韓国政府は現在、北朝鮮選手団の参加だけは必ず導き出すという意志で奔走している。10月7日~8日、ソウルで行われた米韓首脳会談の主要議題として平昌冬季五輪が取り上げられ、トランプ米大統領から「平昌五輪の開催成功に協力する」という発言を得た。

 国連やIOCにも北朝鮮の参加を誘導するために積極的に協力してくれることを要請した。国連では「平昌五輪停戦決議案」が採択された13日(現地時間)、韓国が誇る女子フィギュアスケート選手のキム・ヨナさんが「平昌五輪は韓国と北朝鮮間の分断線を超えて平和な環境を造成しようとしている最も真実な努力」とし、北朝鮮の参加を訴えた。

 米国のマスコミによると、IOCは北朝鮮選手団が参加する場合、すべての警備と訓練を支援すると発表したという。

 しかし、現地時間の20日、米国が北朝鮮をテロ支援国に再指定したことで、文在寅政府の「平和オリンピック」構想は一層難しくなる見通しだ。韓国外交部は、米国の今回の措置が「北朝鮮核問題の平和的解決に役立つと期待する」という論評を発表しながら、「平昌冬季五輪(の北朝鮮参加)とは関係ない」と付け加えた。IOCも、テロ支援国とオリンピック出場資格は別として、北朝鮮参加への門を開けたままだ。

 史上最悪の青年失業率や政府の反企業感情で縮こまった財界によって高まっている経済不安、過去の右派政権に対する「弊害清算」狂風で二つに分かれた国民世論など、今の韓国社会は大統領弾劾の後遺症からまだ抜け出していない。

 その意味でも平昌冬季五輪は韓国社会が再出発するための転機になるとも言えよう。道路や鉄道などのインフラ建設費用を含めて13兆ウォンを上回る予算が投入された平昌冬季五輪だが、果たしてその成功を北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権に頼ってもよいのだろうか。

金 敬哲 (ジャーナリスト 在ソウル)

最終更新:2017/12/11(月) 13:06
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