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何のため高精度な時計を開発するのか─正確な時間が招いた新しい世界と課題

2018/1/15(月) 10:00配信

THE PAGE

『絶対に正しいはず』の地球時間との間に生まれた誤差

 「300億年に1秒の精度」とは、どのような世界なのであろうか。われわれが存在する宇宙の年齢が138億年と考えられており、宇宙の始まりから数えても、0.5秒もズレていないという驚くべき精度で、アインシュタインが唱えた相対性理論を実感できる世界なのだ。すなわち、地表から離れるほど時間の進み方が早くなるので、光格子時計で計測すると、人間の顔部分と足もと部分に置いた2つの時計で、時差がみられるはずだ。

 このような時計によって何が変わるのだろうか。超高精度の時計を使えると、マイクロエレクトロニクスの精度を高めたり、細分化した時間を有効に活用できるので、通信における情報量を増やせるなど、新たな世界が見えてくる。

 翻ってみると、1970年代前半までの日本では、「時間」は最もいい加減な計測単位だった。だが、クオーツ時計や原子時計の登場によって、正確な時間計測ができるようになり、すでに長さの単位も「メートル原器」ではなく、光の進む時間に変わっている。また、原子時計の発明によって、地球の自転の誤差を発見した人類は、『絶対に正しいはず』の地球時間と、高精度な原子時計との誤差を補正するための「うるう秒」の取り扱いで、新たな課題に直面している。世界では、現行通りに愚直に「うるう秒」を入れるべきか、何十年かまとめて修正しようという主張がぶつかっている。

 何のために「高精度な時計」を開発するのか、新たな『時』の哲学が求められている。

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織田一朗(時の研究家)山口大学時間学研究所客員教授
1947年生まれ。71年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。(株)服部時計店(現セイコー)入社。国内時計営業、名古屋営業所、宣伝、広報、総務、秘書室勤務を経て、97年独立。以後、執筆、テレビ、ラジオ出演、講演などで活動。日本時間学会理事(2009年6月~)、山口大学時間学研究所客員教授(2012年4月~)

著作:『時計の科学―人と時間の5000年の歴史』(講談社ブルーバックス)『「世界最速の男」をとらえろ!』(草思社)『時と時計の雑学事典』(ワールドフォトプレス)『あなたの人生の残り時間は?』(草思社)『「時」の国際バトル』(文春新書)『知ってトクする時と時計の最新常識100』(集英社)『時計と人間―そのウォンツと技術―』(裳華房)『時と時計の百科事典』(グリーンアロー出版社)『時計にはなぜ誤差が出てくるのか』(中央書院)『歴史の陰に時計あり!!』(グリーンアロー出版社)『日本人はいつから〈せっかち〉になったか』(PHP新書)『時計の針はなぜ右回りなのか』(草思社)『クオーツが変えた“時”の世界』(日本工業新聞社)など多数。

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最終更新:2018/10/1(月) 21:58
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