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売れっ子コピーライターの「働き方」を変えた一匹の猫

2017/12/17(日) 9:20配信

ニュースイッチ

<読学のススメ>『捨て猫に拾われた男』

 少し前に「ネコノミクス」という言葉が流行った。「アベノミクス」に引っ掛けたもので、「猫の経済効果」を表す際に用いられる。震源は関西大学の宮本勝浩名誉教授が計測、2016年2月に発表した「ネコノミクスの経済効果」だろう。宮本名誉教授は「阪神優勝」「カープ優勝」「大阪道頓堀のグリコの電光看板」「又吉直樹の芥川賞小説『火花』」など、いろいろな事象の経済効果を測りまくっていることで有名だ。

 発表された「ネコノミクスの経済効果」は2015年の1年間でなんと約2.3兆円。単純に比較できないが、東京都が推計した東京五輪の経済効果が1年あたりに換算すると1.8兆円である。猫のエサ代や治療費、猫グッズ、猫カフェなどによる経済効果が、一大国際イベントを上回るのだ。

 飼育数のデータを見ても、犬の飼育数が急減する一方、猫は横ばいのまま。現在、犬がまだわずかに上回るものの、その差は僅少だ。

 そんな「猫ブーム」のおかげで、写真集をはじめとする、いわゆる「猫本」の出版点数も多くなっている。『捨て猫に拾われた男』(日本経済新聞出版社)もその一つに含まれる。ただし、類書とはちょっと毛色が違う(猫の毛並みの話ではない)。著者であるコピーライター/コンセプターの梅田悟司さんが、ともに暮らす一匹の黒猫から生き方や働き方のヒントを得た、というものだからだ。ちなみに、可愛いイラストは散りばめられているものの、写真は2点のみ。しかもモノクロだ(黒猫なのでカラーでもあまり変わらないだろうが)。

<「いい猫ブームをつくりたい」>

 梅田さんは、広告制作でカンヌ広告賞、レッドドット賞、ギャラクシー賞、グッドデザイン賞など国内外30以上の受賞がある売れっ子。著書『「言葉にできる」は武器になる』(日本経済新聞出版社)は15万部を超えるベストセラーになった。

 熱しやすく冷めやすい日本人の気質から、昨今の「猫ブーム」がやがて下火になるのを梅田さんは危惧する。そこで「猫ブームの被害者が、猫であってはならない」「猫のためになる、いい猫ブームをつくりたい」との思いから、『捨て猫に拾われた男』を書くことにしたそうだ。

 そんな、猫を愛してやまない梅田さんだが、もとは根っからの“犬派”だった。2012年、奥さんに誘われて猫の里親会(保護された捨て猫や被災猫の里親を探すための会)に出かけ、そこで1匹の黒猫と出会った。目が合った瞬間「一緒に暮らしてやっても、いいぞ」という声が聞こえたのだという。それが本書の主役、大吉くんだ。

 大吉くんと暮らしていくうちに、梅田さんの座右の銘は「神は細部に宿る」から「すべては大した問題じゃない」に、ほぼ180度変わった。

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最終更新:2017/12/17(日) 9:52
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