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〈時代の正体〉生活保護引き下げ反対 都内で集会、「困窮化に拍車」

2017/12/20(水) 6:30配信

カナロコ by 神奈川新聞

 【時代の正体取材班=成田 洋樹】国が5年ごとの生活保護基準見直しで引き下げの方針を示していることに抗議する集会が19日、都内の衆院第1議員会館で開かれた。連動している困窮者支援政策の水準低下につながる可能性があり、生活困窮者の増加に拍車が掛かりかねないとして方針撤回を訴えた。

 支援団体などで組織する実行委員会の主催で、約160人が参加した。

 国の方針では、2018年度から食費や光熱費など生活費にあたる「生活扶助」を3年かけて段階的に1・8%減額する。国費の削減額は自民党議員らによる生活保護バッシングを背景に安倍晋三政権が削減を決めた前回13年度の6・5%カットに続く引き下げとなりかねず、関係者は危機感を強めている。

 布川日佐史・法政大教授(社会政策)は「前回の引き下げによって当事者が健康で文化的な生活を送れているかどうかの検証がないまま引き下げようとしている」と批判。東京都葛飾区の生活保護ケースワーカーの経験がある森川清弁護士も「当事者の意見を聞かないまま、なぜ引き下げを決めるのか」と怒りをあらわにした。

 堺市の生活保護ケースワーカーだった桜井啓太・名古屋市立大専任講師(社会保障)は子どもの貧困対策に逆行する引き下げと問題視し、「最も影響を受けるのは乳幼児を育てている一人親家庭。25年余り前の支給水準に後退してしまう」と懸念を示した。

 生活保護利用者で一人親家庭の母親もマイクを握り、「すり減った子どもの靴を買い替えることができなくなる。子どもが生活費を切り詰めることを考えなくてはいけない社会はおかしい」と窮状を訴えた。

 今回の引き下げ方針は、年収下位10%の低所得者の支出よりも生活保護利用者が受け取っている生活扶助費が高いというのが根拠になっている。しかし、低所得者の中に制度や運用面の不備によって生活保護を本来受けられるはずの人が一定数おり、そうした生活保護基準以下での暮らしを強いられている低所得者の支出に合わせる形で基準を引き下げることへの疑問が、集会では相次いだ。より困窮している人の生活水準にならす現行の「水準均衡方式」では、生活保護基準が際限なく切り下げられかねないからだ。

 生活保護を利用した経験がある一人親家庭の母親は「なぜ低所得者層と比べて生活保護基準を決めるのか。クリスマスにケーキとチキンが買えるような一般的な世帯と比較すれば、引き下げという結果にはならないはずだ」と指摘。誰もが暮らしやすい社会に見合った生活保護水準の在り方を問うとともに、生活保護水準以下での暮らしを余儀なくされている低所得者層への支援を拡充し、生活水準の底上げにこそ国は取り組むべきだと強調した。

 生活保護基準はさまざまな困窮者支援策の給付水準を決める尺度になっており、子どもがいる困窮世帯に支給する就学援助や住民税非課税などの水準の引き下げにつながる可能性がある。「最低賃金1500円」の実現をデモなどで訴えている若者グループ「エキタス」のメンバーは「生活保護基準を考慮するとされている最低賃金の減額につながりかねず、低賃金で働かされている若者の一層の困窮化が進んでしまう恐れがある」と警鐘を鳴らし、生活保護利用者だけの問題ではないと強調した。

 生活保護問題に取り組む尾藤広喜弁護士は、厚生労働省の当初案では最大で13・7%引き下げられる家庭があったことに対し、財務省との折衝で引き下げ幅を最大5%に抑えることに合意した点に疑問を投げ掛けた。「(引き下げに慎重姿勢だった有識者会議の)生活保護基準部会の答申を無視した上に、減額幅がころころ変わるのはあまりにいい加減だ。引き下げありきの結論だったように思えてならない」

 集会終了後、布川教授は神奈川新聞社の取材に「引き下げが繰り返されかねない水準均衡方式では限界が来ている。(憲法25条が定める)『健康で文化的な生活』の水準について根本的に考え、市民の間で合意できる生活保護基準を探るべきだ」と話した。