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2018年 米国は北朝鮮を攻撃する? “第3の道”はあるのか?

1/11(木) 17:00配信

THE PAGE

 2018年が明け、「核のボタン」をめぐって「机には常に発射ボタンがある」「彼のよりはるかに大きく、強力だ」と早速応酬を繰り広げた金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とアメリカのトランプ大統領。昨年来、相次ぐミサイル実験などで緊張が高まる北朝鮮情勢ですが、アメリカの攻撃はあるのか。別のシナリオはあり得るのか。元航空自衛隊幹部で小説家の数多久遠氏に寄稿してもらいました。

【写真】緊迫する北朝鮮情勢(上)アメリカはどこまで「本気」なのか?

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 昨年1月の就任以降、トランプ大統領は、金正恩委員長、あるいは北朝鮮を過激なセリフで“口撃”し続けて来ました。曰く「チビのロケットマン」だとか、「彼等はもう長くないだろう」とか、果ては「役に立つ手段は一つだけだ」と言って武力攻撃を示唆するなどしてきました。

 しかし最近、特に昨年末12月に入ってからは、そうした発言が少なくなっています。

 これを、嵐の前の静けさと見るのか、トランプ大統領による瀬戸際政策の頓挫と見るのか、それともそうした軸とは別の動きなのか。識者の見解も割れています。

 2017年は結局大きな動きがないまま過ぎ去りましたが、2018年はどうなるのか。以下、元自衛官として、軍事的視点で起こりえることと起こりえないことを分析し、小説家として、トランプ大統領の思考を想像することで占ってみたいと思います。

(1)軍事的観点から見た攻撃の可能性

 軍事的な観点だけで情勢を見た場合、アメリカによる北朝鮮攻撃の可能性は極めて低いと考えざるを得ません。

 1994年の北朝鮮核危機の際、当時のクリントン米大統領は、空爆実施の一歩手前まで検討したことが明らかになっています。この当時は、韓国ソウルに向けられている長射程榴弾(りゅうだん)砲による報復が行われる懸念から、攻撃は見送られました。現在も北朝鮮側から「ソウルを火の海にする」という発言がなされるように、この状況には大きな変化は生じていません。

 大きな変化が生じているのは、「対韓国」ではなく、「対アメリカ」への直接攻撃能力です。

 度重なるミサイル発射実験により、北朝鮮の弾道ミサイルが、相応のペイロード(爆弾搭載能力)を持ってアメリカまで到達させられることが明らかになりました。大気圏再突入技術については、問題解決ができていないと見られていますが、弾頭の種類によっては、大きな被害が出ることは確実です。

 例えば、ミサイルに放射性廃棄物を搭載した「ダーティーボム」と呼ばれる手法を採れば、大気圏突入後にミサイル軌道がそれても、正常なタイミングで起爆しなくても、極端な話、全く起爆せずに、地上に落下して壊れただけで、非常に大きな損害を与えることができます。

 ダーティボムを米ニューヨークのマンハッタンに打ち込めば、福島第一原発事故で発生したような放射性物質の拡散が、ニューヨーク全体を避難指示区域にせざるを得ない状態にします。ミサイルによる直接の死者は出なくとも、その経済的影響は、アメリカのみならず、全世界に及ぶでしょう。

 トランプ大統領が北朝鮮攻撃を行う場合、1994年当時とは比べものにならない大きなリスクを負わなければならないのです。

 しかし、当時と最も異なるのは、リスクの度合いではありません。最も異なるのは「作戦目的」と「目標」です。

 1994年当時、北朝鮮は核開発を進めていましたが、まだ核爆弾を作るには程遠い状態でしたし、ミサイルもノドンミサイルがやっとでき上がったところでした。

 クリントン大統領の目的は、空爆によって核開発能力に直接の打撃を与える以上に、核開発を進めてきたことに罰を与えることでした。空爆は、その後の核開発を止めさせるための懲罰でしたが、当時は北朝鮮の核・弾道ミサイル能力が低かったため、それで良かったのです。そのため、空爆の目標も、ある意味何でも良かったのです。

 しかし、今や北朝鮮は米本土に脅威を及ぼす核・弾道ミサイル能力を持つに至りました。単に懲罰を与えたのでは、許容できない強力な反撃を受ける可能性が出てきました。

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最終更新:1/17(水) 5:50
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