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新潟県って何地方? 県・市・NHK・市民に見解を聞いてみた

1/2(火) 11:00配信

ねとらぼ

 突然ですが「新潟県って何地方ですか?」と聞かれたら、あなたはなんと答えますか。東北、関東、甲信越、関東甲信越、北陸、北信越、中部、信越、上信越など、さまざまな地域に分類され、新潟県民でさえ答えに悩むというこの難題に決着をつけるべく、新潟市、新潟県、NHK新潟放送局を取材しました。

【画像一覧:新潟だけバラバラすぎる国の出先機関】

 きっかけは、2017年8月に掲載した「アニメ『ジョーカー・ゲーム』関東再放送のメインスポンサーが新潟市!? ガチオタ副市長とProduction I.Gが史上初の取り組み」という記事。TVアニメに行政がCMを流すという史上初の取り組みを紹介したものですが、その際「新潟県は何地方なのか」を巡って編集部内で意見が真っ向から対立しました。

 そこで「こうなったら新潟に行って、新潟県が何地方なのか白黒つけてきます!」と、2階建て新幹線「Maxとき」に揺られること約2時間。新潟駅に着きました!

 そこから車で15分程度の場所にあるのが今回の取材の本丸、新潟市役所です。道すがらタクシーの運転手さんに「新潟って何地方ですかね」と聞いてみたところ、「地方? まぁいろいろ言われるけど、『新潟は新潟』だと思ってますよ」とまさかの回答。さらに謎が深まったところで到着となりました。

●新潟市に聞いてみた

 応対してくれたのは新潟市地域・魅力創造部広報戦略課の鈴木稔直課長と前回の記事でも取材に協力してくれた木村勇一副市長です。

――早速ですが、新潟って何地方なのでしょうか……!

木村副市長:地方ですか……!? 恐らく県民の皆さんのなかでも、意見が分かれると思います。分類や定義は難しいのですが、個人的には大きなくくりとして「関東甲信越」にあたると思います。これをベースに「甲信」「信越」「北信越」というように切ったりくっつけたりする言い方が多いのですが、新潟はいろいろな地域とくっつけやすい県であり、どの地方と呼ばれてもそんなに生活に支障はないんですよね。

――なぜくっつけやすいのでしょうか。

木村副市長:新潟は県域が広く特に海岸線が長いのが特徴で、さまざまな県や地域と隣接しているからです。例えば糸魚川市は富山県と、上越市は長野県と隣接していてそれぞれ生活の結び付きが強いため、同じ新潟県内でも私たち新潟市民とは生活習慣が違ったりします。また国の出先機関やライフラインによってもいろいろな地域に分類されています。例えば電気は東北電力ですし、都市ガスでは新潟県内に北陸ガスといった名前の会社もあります。

鈴木課長:その他にも気象庁の区分では北陸、国土8地方区分では中部に分類されているほか、国土交通省のなかでも運輸局は北陸信越運輸局で、整備局は北陸地方整備局が担当の局になっています。

――こんなに細かく分類がされていたとは……! 衝撃的です。

木村副市長:国の出先機関の区分について、ここまで統一感がないのは新潟ならではと思います。ご覧いただいたように、新潟が北陸に分類されているケースは少なくないのですが、電気(商用電力)に関しては、新潟県の糸魚川と静岡県の富士川を境に東日本50Hz、西日本60Hzになっており、糸魚川市では混在地域があります。また新潟・富山間の鉄道でも電力(き電)に境目があって、糸魚川駅付近でいったん列車内の電気が消えるんですよ。新潟側の1500ボルト直流から富山側の2万ボルト60Hz交流へと、走行中に切り替えが行われるんですね。北陸本線と信越本線の運転区間の境目ですから、北陸と信越という一種の地域区分を感じる瞬間でもあります。

鈴木課長:糸魚川あるあるですね。

――ちなみにオフィシャルでは「新潟県は何地方」と紹介しているのでしょうか。

木村副市長:公式的に○○地方ですという区分で紹介はしていませんが、篠田昭市長は「新潟市としては、仲良くしていただけるのであれば、どこの地域とでも仲良くしたい」と言っていますので、どこの地方に属していても構わないと思っています。

――なかなか思い切った発言ですが、具体的にはどういうことなのでしょうか……!

木村副市長:新潟市は観光面では福島県の会津若松市と、文化面では京都市や奈良県と連携協定などを結んでいます。また、山形県の鶴岡市とは食文化の面で連携しています。地域・地方にこだわらず手を取り合うという姿勢は行政同士の取り組みにも表れていると思います。

――地域を超えた連携協定を結ぶことによってどんなメリットがあるのでしょうか。

木村副市長:新潟市はインバウンド(海外から観光に訪れる観光客)需要のセールスにも力を入れているのですが、協定などを結んでいることによって「新潟に遊びに来た際にはぜひ会津若松市のお城も見て帰ってくださいね」「日本に来たら新潟と鶴岡の食文化の違いを楽しんでみてください」と連携都市の魅力とセットでアピールすることができます。

●新潟県民は「根性よし」

――新潟はなぜいろいろな地域とのかかわりを持つようになったのでしょうか。

木村副市長:歴史的な観点でみると、新潟は古くから港町として栄えており、明治20年ごろは新潟県の人口が日本一多かったという記録も残っているなど人的にも物的にも豊かな土地でした。しかし江戸時代から続いていた北前船に関して「抜荷(ぬけに・幕府の禁令を破り海外と行う密貿易)」の事件が発生したことから、藩主である長岡藩は幕府から責任を追及されてしまいます。結局長岡藩は領置を取り上げられ、江戸後期には、幕府直轄の天領制になったため、大名がいなくなった新潟では町人文化が根付くようになり、次第に「なんでも受け入れる」文化が広まっていきました。

――近年でも「なんでも受け入れる」文化は健在なのでしょうか。

木村副市長:例えば対岸のロシア(当時ソ連)と日本の国交回復後、新潟はソ連極東の中心都市ハバロフスクと姉妹提携を行い、新潟-ソ連間の空路を開拓しました。新潟空港初の国際定期空路であり、当時は日本とソ連を結ぶオンリーワンの空路でしたので、ビジネスのために極東地域へ向かう商社など、民間の方々にとっても重要なルートであったと聞いています。

――柔軟な県民性なのですね。

木村副市長:昔からの港町文化が残っているので、結構フレンドリーなところがあります。他県の方からは優しくて思いやりがあるだとか、おっとりしていると仰っていただけることもありますし、新潟の方言では「根性良し(こんじょよし・お人よし)」とも言われます。県民の皆さんが「何地方」と呼ばれてもそこまで気にしないのもこういう気質に関係しているのかもしれません。

――今回の取材もそうですが、「新潟県は何地方なのか」と他の県の人が疑問に思っているということについてはどう感じていますか。

木村副市長:新潟で生活している私たちが何地方なのかを明確に意識していないくらいなので、他の地方の方から不思議に思われるのも当然のことなのかなと思いました。新潟では幻の洋梨といわれる「ル レクチエ」をはじめ本当においしいグルメがたくさんあります。また先ほども申した通り、人柄もとても暖かいので、今回の記事をきっかけに新潟にたくさんの方が遊びに来てくださるとうれしいです。

●新潟県に聞く、「新潟県って何地方」

 新潟市に続き、新潟県にも同様の質問をしてみたところ「公式な区分はありません」とのこと。理由については、明確に「何地方」という区分がなくても、行政では特段の不都合が生じておらず、また県民からも「生活に不便だ」との声はあがっていないためなのだそうです。

 「新潟県が何地方なのか」という特殊な疑問については、「それが新潟の個性であり、『郷土への愛着につながっていくとうれしい』とむしろポジティブに捉えています」と話してくれました。

 取材を続けるうちに「NHKの天気予報では新潟について『関東甲信越地方』『北陸地方』と地方の呼び方を変えている場合がある」「日によって新潟を含めた『関東甲信越地方』と新潟を省いた『関東甲信地方』の天気をやることがある」との声がいくつか聞こえてきました。

 あらためて新潟市の木村副市長にも聞いてみたところ「NHKの天気予報については以前から気になっていました。市長も言っている通り、新潟市は基本的には『関東甲信越地方』のように仲良くできるところとは仲良くしたいと思っているのですが、『関東甲信地方』のように仲間外れにされると少し寂しい気持ちになります……」とのこと。

 この件についてNHK新潟放送局に問い合わせてみたところ、NHKでは放送エリアとして「関東甲信越」という単位があることなどから、社会的区分としては新潟県を関東甲信越地方と呼んでいることが分かりました。

 ただし、気象学的区分においては新潟は北陸地方に属することとなっているとのこと。また気象庁の気象情報は「予報区」という広い範囲で発表される場合があり、新潟の場合は北陸地方予報区に含まれていることなどから、NHKの放送では気象庁などが「北陸地方」と表現していても、新潟県を分けることができる場合には、単に「新潟県」と表現しているのだそうです。ただし、新潟県を含む表現となってしまう場合には「新潟県を含む北陸地方」と呼んでいる場合も。また新潟県を含むかどうかが必ずしも明快に表現できない場合もあるとのことで、「新潟県は何地方? 問題」の弊害を少し受けているようです。

 県域が広く、さまざまな県・地域との交流が深いことなどから、いろいろな地方に含められている新潟県。今回の取材では「新潟市長:仲良くしてくれるならどこの地域とでも仲良くしたい(個人見解)」「新潟県:公式区分なし」「NHK新潟放送局:関東甲信越(社会的区分)」「タクシーの運転手さん:新潟は新潟」といった回答を得ることができました。大きな分類としては「新潟は関東甲信越地方」の方がなじみがあるようです。

取材協力:新潟県/新潟市/NHK新潟放送局

最終更新:1/2(火) 21:31
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