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道徳教科化まで3カ月 授業や評価、悩む教員

1/4(木) 14:12配信

佐賀新聞

 小学校の道徳が新年度から正式な教科になり、実施まで3カ月に迫った。「考え、議論する道徳」を目指して佐賀県内の学校現場でも準備が進む中、どう教え、評価すればいいのか、頭を悩ませている教員が多い。教科化によって授業の画一化が進み、子どもたちの考える幅を逆に狭めることにならないか、懸念する声もある。

 「道徳で議論するってどういうことですか。それが分からないのに、子どもたちの評価もしないといけない」。昨年11月下旬、佐賀市の小学校で開かれた道徳の授業研究会。市内各校の道徳担当者が意見交換をする場で、若い教員が戸惑い気味に発言した。

不安と焦り

 県内の小学校では年が明けると、新年度に向けた教科ごとの指導計画作りが始まる。道徳の場合、教科化に伴う修正が必要だが、市町教委がどの検定教科書を使うか決めたのは7~8月。教員たちは学校行事などに追われる中で十分な準備時間が取れず、不安と焦りを募らせている。

 文部科学省は教科化に際し、登場人物の気持ちを追うだけの「読み物道徳」から「考え、議論する道徳」への転換を掲げる。ただ、どの発行社の教科書も、これまで副読本などで使われた教材と内容に大差はなく、どう指導方法を変えればいいのか具体的イメージを描きにくい。

 道徳が教科外として扱われた本年度まで、週1こまの授業内容は現場の裁量に委ねられていた。そのため、学校や教員間で取り組みに温度差があったことも、教科化の理由の一つとされる。教科書の導入で幾分解消されるものの、別の側面から不安視する声もある。

特定の価値観

 佐賀市鍋島小の井手美保子教諭は、道徳の時間に独自の教材を使って人権・同和教育や平和教育を行ってきた。現在担任している4年生のクラスでは、新聞記事やテレビCMも素材にしてジェンダーの問題について考えた。

 「教科書とにらめっこしてどう授業しようか思案するより、正解が簡単に出ない生きた教材を使って子どもたちと議論する方が、考える力は養われると思う」

 県教委は教科書以外の教材に関し、子どもの実態に合わせて使うことは一定程度構わないとしながらも、必要性を慎重に見極めた上での使用を求めている。井手教諭は「心配なのは、多忙な先生たちが教科化を契機に創意工夫をしなくなり、教科書任せになること。それがゆくゆくは教科書を通した特定の価値観の押し付けにつながっていくのでは」と指摘する。

 道徳や人権教育を研究する佐賀大学教育学部の松下一世教授も「教科書があるから独自の工夫をしなくていいと捉えるのでなく、教科書を土台に内容を広げ、深めてほしい」と話す。

 県教委の東部教育事務所は現場から不安の声が相次いでいることを受け、24日に希望者を対象にした研修会を開く。

■道徳の教科化

 2013年、安倍首相の諮問機関「教育再生実行会議」が道徳の教科化を提言し、翌年に文部科学相の諮問機関である中央教育審議会が「教科外活動」から「特別の教科」に格上げするよう答申した。小学校は18年度、中学校は19年度から実施される。教科化によって国の検定教科書を使って授業は進められ、通知表で記述評価される。年間授業数は小中学校とも今と同じ35こま(週1こま)。

最終更新:1/4(木) 14:12
佐賀新聞