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「FeliCaはクラウドとの連携が必須」「キャリア市場にも進出する」――Huawei呉波氏に聞く、2018年の展望

1/5(金) 12:00配信

ITmedia Mobile

 Huaweiにとって、2017年は「躍進の1年」だった。novaシリーズ、P10シリーズ、Mate 10シリーズを立て続けに投入し、SIMロックフリースマートフォン市場でシェアを拡大。MM総研が発表した2017年度上期の「国内携帯電話端末出荷概況」によると、シェアは26.1%で1位を獲得。2位で22.7%のASUSを大きく引き離し始めている。端末別に見ると、P10と合わせて発売したP10 liteがヒット。キャリアのスマートフォンまで含めた全端末の販売ランキングで首位に輝く週もあったほどだ。

4万2800円(税別)の「Mate 10 lite」

 そんなHuaweiが、2017年の締めくくりとして投入したのが、AI対応チップの「Kirin 970」を搭載した、「Mate 10 Pro」だ。同モデルはHuawei初となる18:9の有機ELディスプレイを採用したフラグシップモデルで、防水・防塵(じん)仕様も備えた1台となる。同時に、HuaweiはMate 10 liteも発売。Mateシリーズのブランド力を、ミドルレンジモデルへ波及させようとしている様子もうかがえる。

 では、Huawei自身は2017年をどう総括し、2018年はどんな戦略で臨んでいくのか。Mate 10 ProとMate 10 liteの反響を振り返りつつ、今後の展望を語ってもらった。インタビューには、日本の端末部門を統括する、Huawei デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏が答えた。

●SIMフリー市場が主流になりつつある

―― 2017年を振り返っていただくと、どのような1年でしたでしょうか。

呉氏 今年(2017年)の初めにも申し上げたことですが、2017年はSIMフリー市場が大きく躍進した1年になりました。上期、下期で分けた場合、上期は特に進展の速度が速かったですね。下期は、大手キャリアが低価格プランを出した影響を少なからず受けていますが、それでも上期と比べると、プラスの状況になっています。年間で、SIMフリースマートフォンは300万台規模になっていると見ています。

 市場全体を見ると、年間のボリュームは約2600万台ですが、そのうちの半分がiPhoneだとすると、残りの1300万台がAndroidになります。あくまでも単純な計算ですが、そのうち300万台がSIMフリーのAndroidだとすると、日本では、Android全体の25~30%がSIMフリースマートフォンだということになります。日本のSIMフリー市場は、もはやニッチマーケットではなく、主流のマーケットになっているといえるのではないでしょうか。おかげさまで、弊社もその流れに乗ることができ、まずまずの実績を打ち出せました。

 2017年を振り返ると、発表会でたびたびご紹介しているように、BCN、GfK、MM総研の全てで、弊社がナンバー1になっています。P10 liteも売れていて、販売ランキングトップ10で唯一のAndroidになっています。BCNのデータですが、P10 liteは、12月4日から週で1位になることができました。これは、全てのスマートフォンの中でです。スマートフォン以外では、タブレットでも満足いく実績を打ち出すことができました。

 今年も12月28日に納会をやる予定ですが、そこでは「今年も生き残ることができた」という話をすると思います。来年(2018年)はまたゼロからスタートしたつもりで頑張ろうということです。

●約10万円でもMate 10 Proは売れている

―― 12月にはMate 10 Proも発売されました。反響はいかがでしたか。

呉氏 Mate 10 Proは、全てのチャネルにおいて、われわれの予想を上回る結果になっています。実は、Mate 10 Proは、SIMフリー市場で初めて10万円という価格帯に挑んだ端末です(税込で9万6984円)。この価格帯において成功したメーカー、端末は今までありませんでした。Mate 10 Proは、数々の家電量販店やディストリビューターから、そのような固定観念を打ち破った商品だといわれています。

―― 一部では、品切れも起こっていました。

呉氏 予想以上の反響があり、一部店舗では在庫が切れてしまったようです。各店舗の在庫までは、メーカーが口出しすることはできません。ただ、店舗側も慎重に計画を立てていたはずです。品薄や在庫がないといった報告を受け、速やかに改善に取り組み、できるだけ数を確保できるよう、弊社も協力しています。Mate 9のこともあった(一時品切れが続出し、購入できない事態になっていた)ので、用意は万全にしました。

―― AI対応のチップセットや、カメラの進化、防水・防塵への対応など、いろいろな特徴がありますが、どういった機能が売りになったとお考えですか。

呉氏 過去2~3週間分のVOC(ヴォイス・オブ・カスタマー=顧客の声)を読みましたが、Mate 10 Proをお買い上げいただいた一番の理由が、最新世代のライカカメラです。カメラは(これまでと同じ)ダブルレンズではありますが、レンズのF値がどちらも1.6になっています。

 ライカのカメラ用レンズで、F1.6だと、100万円ほどしますからね(笑)。iPhoneもダブルレンズになっていますが、片方がF1.8で、もう一方がF2.2で、どちらも弊社ほど明るくすることができていません。両方ともF1.6という数値は、革新的だったと自負しています。

 次に消費者の皆さまに受け入れられているのが、パフォーマンスです。例えば操作性ですが、非常にスムーズで、バッテリーの持ちもいい。さらに、電波をキャッチするまでの速度も速く、滞りなく通信ができます。そういったところまで含めたパフォーマンスが評価されています。

 Twitterでは、弊社の発表を見て、すぐに秋葉原のヨドバシカメラに行き、写真を撮ったという声も上っていました。撮ってみたら、仕上がりが自分の持っているデジカメよりもよく、操作性が高いので、すぐに気に入って買ったそうです。他にも、実際に手に取って、操作してみて欲しくなったという声は多かったですね。

 もちろん、VOCはいいことばかりではありません。いただいた意見はきちんとフィードバックして、次世代の製品で、より多くの消費者ニーズを満たしていきたいと考えています。われわれから見ると、日本の消費者も、SNSを通じてどんどん自分の声を上げるようになってきています。昔はVOCも1日十数件でしたが、今では数百になり、読むのも追い付かないほどです。製品が売れているというのは、ブランドも認めていただいたことを物語っています。

●「防水」ではなく「耐水」

―― 今のお話に、防水・防塵が含まれていませんでしたが、発表会では日本向けをアピールしていました。

呉氏 まず、厳密には「防水」と銘打っているわけではないことをお伝えしておきたいと思います。実際には、IP67に相当する「耐水」とうたっています。(他と)同じIP67ではありますが、宣伝に使う表現は、慎重にしているというのがその理由です。

 耐水機能を付けるといっても、短期間で実現できるものではありません。これが決定されたのは、1年も前の話です。Mate 10 Proは10月にドイツで発表されましたが、決定はその1年前だったんですね。2016年の10月に防水を付けると決めていました。これは、まさに日本の消費者の声に応えた形で実現しています。

 Mate 10 Proだけでなく、「MediaPad M3 Lite 10 wp」もあるので、タブレットでも耐水の新製品をお出しすることができました。どちらもプラスの反響をいただいています。家電量販店からのフィードバックとしてあるのは、他社の防水製品をたくさん売ってきたので、簡単に説明できるという声です。販売がスムーズになるといわれています。

●liteシリーズを投入する狙い

―― Mate 10 Proと同時に、Mate 10 liteも発売しました。ドイツの発表会ではliteがなかったので、このタイミングで導入されたのは意外でしたが、狙いを教えてください。そもそも、各シリーズの下にあるliteとはどういう位置付けなのでしょうか。

呉氏 これを説明するには、日本のSIMフリー市場のマクロ環境を説明する必要があります。日本だと、キャリアのスマートフォンには購入補助があり、大体2~4万円程度の実質価格になります。そのため、本体価格が8万~10万であっても、消費者はスマートフォンは2~4万円で買えるものと認識しています。実際、2~4万円の製品が、一番売れていることもその証拠です。

 弊社も、2~4万円の価格帯で多くのユーザーを獲得したい。そのために、“3つのlite”を、2万円、3万円、4万円と、それぞれの価格帯で販売しています。2万円台はnova lite、3万円台はP10 lite、4万円台はMate 10 liteです。

 これは面白い現象ですが、弊社がそういったラインアップにしてから、他のメーカーも、(ミドルレンジの端末を)○○liteという名前で発売するようになりました。弊社の場合、それぞれの価格帯に、異なるliteを出すことで、消費者が直感的に理解できるようにしています。

 今回のMate 10 liteについては、特に家電量販店のスタッフから好評で、「売りやすい」といわれています。複雑な説明をする必要がなく、全画面で18:9、しかもカメラが前後合わせて4つ付いているので、それだけを伝えれば、消費者に刺さるようです。見てすぐに分かるスペックの高さだということですね。

―― ちなみに、地域によっては、Mate 10 liteという名称ではないという話も聞きました。

呉氏 欧州では日本と同じMate 10 liteですが、東南アジアでは、「nova 2i」という名称で販売しています。

―― liteは、あくまでliteシリーズとして存在していて、柔軟にブランドを変えている印象があります。nova liteも、「honor 8 lite」として売っている国がありますよね。

呉氏 そうですね。ただ、社内では、名前をどうするかは時間をかけて議論しています。一番の目的は、消費者が覚えやすく、分かりやすいネーミングにしたいためです。一応ですが、グローバルでは先進国向けの命名ルールがあり、名前はそれにのっとって付けるようにしています。

 例えば、日本の方々が欧州に出張に行ったとき、現地の広告に同じ製品が出ていると、親近感を覚えるのではないでしょうか。実際に、ある日本の友人は出張した際に、Huaweiの広告が出ているのを写真に撮って送ってくれています。

●Mate 10の投入を見送った理由

―― liteがあって、無印の「Mate 10」がなかったのも、意外な印象を受けました。これはProとliteに挟まれて、中途半端になってしまうからでしょうか。

呉氏 そうですね。発表会の翌日に、Twitterで「何でMate 10がないんだ」という書き込みがあったことを覚えています。確かに今回、Mate 10は日本にご紹介していません。日本市場に導入するのをMate 10にするのか、Mate 10 Proにするのかは、弊社の中でも議論がありました。最終的にMate 10 Proにしたのは、Mate 10 Proに耐水・防塵機能が付いているからです。長らくそういった機能が欲しいとご要望をいただいていたので、それに応えたいという気持ちもありました。

 もちろん、どちらも出すという選択肢はありましたが、SIMフリー市場は年300万台のボリュームなので、一気にフラグシップモデルを2台も出すと、カニバリゼーション(共食い)になってしまう恐れがありました。これは、今年(2017年)の半ばに出した、P10とP10 Plusの教訓も踏まえています。

―― ということは、P10とP10 Plusは、競合してしまったということですね。

呉氏 例えば、Mate 10 Proの販売量を見ると分かりますが、2つのフラグシップモデルを出したときと比べて、Mate 10 Pro単体での販売量の方が(2機種合計よりも)大きくなっています。また、機種の数が増えると、それなりに経営コストが上がってしまいます。1機種に絞った方が、われわれにとっても、われわれのパートナーにとってもよかったのだと思っています。

●au VoLTEに対応する予定はある おサイフは?

―― 現状、Mate 10 Proではau VoLTEが使えません。せっかくのDSDV(デュアルSIM、デュアルVoLTE)に対応するのが、Y!mobileだけだとちょっともったいないなという印象がありましたが、いかがでしょうか。

呉氏 (対応する)予定はあります。ただ、実際の問題として、通信事業者のラボは、数が限られていて、予約の順番を待たなければなりません。今はその順番を待っている状態で、試験を無事にパスできれば、すぐにバージョンアップを実施する予定です。ただ、申し訳ないのですが、いつまでに、どのタイミングでということは、お話できません。

―― VOCのお話を先ほどからしていますが、もう1つ大きな声として、おサイフケータイへの対応を望む声があると思います。年始に対応を表明してから、現状まで、まだ対応機種が出ていませんが、進捗(しんちょく)状況はいかがでしょうか。

呉氏 おサイフケータイの機能を持たせるためには、まずFeliCaを搭載しなければなりません。ただ、(Huaweiの目指す機能は)Suicaだけでなく、銀行カードの代わりになるものです。そのためには、(Huawei Payに使われている)クラウドサービスが必要になります。FeliCaとクラウドサービスは、どちらか1つが欠けたら実現ができません。

 順番として、まずはクラウドサービスの構築を手掛けたいと思っています。もちろん、大原則として、そこで収集したデータは日本国内にとどまるようにします。ステップ2として、ハードウェアにおいてFeliCaに対応させる。その上で、3つ目がおサイフケータイになります。この順番で計画通り進めているので、ぜひご期待ください。

●MVNOのオンラインでSIMフリースマホを買う人が増えている

―― 2017年を振り返ると、MVNOがHuawei端末をさらに重視するようになった印象を受けます。発表会でも、取り扱いMVNOの紹介に時間を割いていますが、実際、比率は上がっているのでしょうか。

呉氏 日本のSIMフリースマートフォンは、オフラインの売り場で一番ものが出ているといわれていますが、実際のところ、かなりの数がMVNOのオンラインの販路で販売されています。ご指摘のように、2017年の大きな特徴として、オフラインで売れたスマートフォンの数が、オンラインで売れたスマートフォンの数より少ないということがあります。ショッピング全体で見ると、オンラインは全体の20数%しかありませんから、SIMフリースマートフォンはかなりの比率ということになります。

 これは今年(2017年)になって初めて気づいたことですが、日本の消費者は、従来の販路以外のところで、スマートフォンを選び、買っています。1社のMVNOが販売したスマートフォンの数が、1つの家電量販店より多いということもありました。これまでの常識を大きく覆す現象が起き、1つのトレンドになっています。

―― 最後に、2018年の目標を教えてください。

呉氏 これまでと同じですが、2018年に関しても、目標はスマートフォン市場で生き残りたいと願っています。また、2018年は、スマートフォン市場の各方面に関わり、コミットができるようになっていきたい。これはすなわち、これまでのMVNO、SIMフリー、家電量販店に限らず、キャリア市場にも入り込んでいきたいということです。

 2017年は弊社にとって「SIMフリー市場元年」ともいえるほど、業績が大きく飛躍した1年でした。2018年に関しては、(SIMフリーだけでなく)日本のスマートフォン市場に全体おいて、マイルストーンになる1年にしたいと思っています。そのため、製品ラインアップは絞って事業展開をしていきます。

―― 絞るというと、キャリア市場に注力した結果、SIMフリーの端末が手薄になるようにも聞こえます。キャリアに出したフラグシップが、SIMフリーで出なくなるという危惧もありますが、いかがでしょうか。

呉氏 中国には、このようなことわざがあります。「ゴマを拾ったからといって、今持っているスイカを捨てるわけにはいかない」――これは、既に持っているものを諦めてまで、新しいものを手に入れようと思ってはいけないという戒めです。SIMフリー市場では、消費者と良好なコミュニケーションを取れるようになってきました。これまで築き上げたものは、大きなベースなので、それを壊すようなことはしません。

 ですから、おっしゃっているような危惧は、決してありえないことです。Huaweiのスマートフォンは、ローエンドからハイエンドまで、品ぞろえは非常に豊富です。それぞれのマーケットに提供するための製品は持っているので、安心してください。この業界は変化が激しく、競争はし烈です。四半期の業績がよかったからといって、次も続くとは限りません。その中で何とか生き残っていきたい。そのために、今後も消費者ニーズを第一に考え、事業を展開していきます。

●取材を終えて:全方位でユーザーの期待に応えられるラインアップに

 フラグシップモデルでメーカーとしての力を見せつつ、liteシリーズで実を取るというのが、今のHuaweiの戦略だ。nova、P、Mateのそれぞれにliteをそろえた2017年は、それが完成した1年だったと総括できそうだ。

 呉氏が語っていたように、2万円、3万円、4万円にそれぞれ1機種ずつliteモデルが割り振られており、全方位でユーザーの期待に応えられるラインアップになっている。もちろん、liteシリーズを売るにはフラグシップモデルにも魅力が必要だ。その点、P10、P10 Plus、Mate 10 Proはユーザーからの評価も高く、Huaweiにとっての“追い風”になっている。

 おサイフケータイについては、Huawei Payとの統合を検討しているようだ。単にFeliCaを使った非接触決済を提供するだけでなく、Huaweiのサービスとして、ウォレット機能を提供しようとしている意思が読み取れる。

 おサイフケータイは、どの機種を使っても同じ体験しかできなかったが、Huaweiの試みが成功すれば、決済機能でも頭1つ抜けた存在になるかもしれない。FeliCaへの対応表明から間もなく1年がたとうとしているが、開発期間を考えると、2018年内の対応に期待したいところだ。

 同時に、Huaweiはキャリア市場への進出も計画しているという。Wi-Fiルーターでキャリアとの関係も強く、実績も残しているだけに、実現できる可能性は高い。SIMフリースマートフォン市場で着実に評価を高めている今は、絶好のタイミングといえるだろう。ユーザーには選択肢が増えるメリットがある一方で、キャリアに端末を納入している他のメーカーにとっては、脅威といえる存在になりそうだ。

最終更新:2/13(火) 20:41
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