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<千葉地検支部>被告に被害女性情報 脅迫めいた手紙届く

1/8(月) 9:00配信

毎日新聞

 ◇器物損壊事件 被告、刑務所から 女性が国など提訴

 千葉地検の支部が器物損壊事件の裁判を巡り、被害者の女性の意向に反し、調書に記載された住所などの個人情報を被告の男側に開示していた。実刑判決を受け刑務所に服役中の男から、オウム真理教による事件を例示する脅迫めいた手紙が女性宅などに届いて発覚した。女性らは昨年6月、国と男の元弁護人に慰謝料など計約6300万円の支払いを求めてさいたま地裁に提訴している。【内田幸一】

 訴状などによると、女性は2009年に千葉県内で器物損壊事件の被害に遭った。12年3月に女性と面識のない男が逮捕され、同5月に起訴された。女性らは裁判を担当する副検事や男の元弁護人に、氏名や住所を男に明かさないよう要望した。男は13年4月に懲役2年4月の実刑判決を受けた他、別の事件でも有罪判決を受け、現在も服役している。

 男から女性宅などへの手紙は15年4月以降、複数回届き、オウム幹部らに誘拐・殺害された弁護士一家と類似の出来事が起きることを暗示する文面の他、「個人情報が私の手に渡った事は、千葉地方検察庁と弁護士を恨むことですね」と書かれた手紙もあった。

 さいたま地裁に提出された国や元弁護人の準備書面によると、男は元弁護人から送られた女性らの調書の写しなどから住所を把握したとみられる。女性は男を脅迫容疑で警察に告訴したが、報復を恐れて取り下げている。

 女性らは訴訟で、個人情報を伏せることを条件に事情聴取に応じたことを理由に、地検支部が元弁護人に証拠を開示する際は個人情報を伏せる義務があったと主張している。

 これに対し国は、女性側から「個人情報は犯人に絶対に伝わらないようにしてください」などと要望があったことや個人情報を伏せずに証拠を開示したことは認める一方で、「要望に合意していない」と反論。「証拠を開示するにあたり、マスキング(黒塗り)を施すべき法的義務はない」と主張している。

 毎日新聞の取材に、千葉地検は「係争中であり答えられない」、元弁護人は「係争中のためコメントできない」としている。

 ◇「2次被害防止、法整備を急ぐべきだ」

 刑事事件の被害者の個人情報について、刑事訴訟法は「検察官は(被告の)弁護人に対し、被告に知られないよう求めることができる」としているが、検察官や弁護人に法的な義務を課すなどの制度は整備されていない。

 この影響か、検察官が被告の弁護人に個人情報を伏せずに証拠を開示し、訴訟となるケースが起きている。2013年には東京地裁に強制わいせつ事件の被害女性が、その後も大阪地裁に児童虐待事件に捜査協力した女性が提訴し、いずれも国が和解金を支払った。

 同種の事案では12年11月、神奈川県逗子市で起きたストーカー殺人事件を受け、検察は被告に送付する起訴状に被害者の名前を記載しない「匿名起訴状」の運用を始めている。法廷で被害者の氏名や住所、職業を明らかにしない「秘匿決定」も行われている。

 犯罪被害者支援に詳しい諸沢英道・元常磐大学長(刑事法)は「刑事訴訟法は起訴状で事件を特定できればよく、被害者の名前や詳細な住所の記載まで求めていない。調書などの証拠開示にあたっても、2次被害を防ぐよう法整備を急ぐべきだ」と話している。【内田幸一】

最終更新:1/8(月) 9:00
毎日新聞