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<大震災7年>かさ上げ地で理容室再建 陸前高田

1/9(火) 19:17配信

毎日新聞

 東日本大震災から3月で7年を迎える被災地。岩手県陸前高田市の仮設店舗で理容室を営業する佐藤孝之さん(38)が1月下旬、かさ上げ工事が進む中心市街地にバリアフリーの「solest」(ソレスト)を開店する。心の傷を抱えていた人たちが再出発を決めたまちで「家族のような温かい店にしよう」と語る。

 新しい店舗がぽつりぽつりとでき始めただだっ広い盛り土の一画に建つ店内に、肘掛けが外せる椅子がある。仮設店舗では、車椅子の客にシャンプーができなかったり、ひげがそれなかったり。「新しいまちをつくるためのスタートなら、車椅子の人も利用できる店にしたかった」からだ。

 佐藤さんは秋田県横手市生まれ。「手に職をつけたい」と理容師の専門学校を卒業し、25歳まで東京で修業した。妻の実家がある岩手県住田町に移り、震災前年の2010年、陸前高田市の理容室に勤め始めた。

 震災の津波で理容室は全壊したが、2カ月後にプレハブ仮設で再開した。その後、別の仮設店舗に移り、オーナーから引き継いだ。「孫が生まれたよ」「プロポーズはどうしたらいいかな」。常連客らの報告や相談がうれしかった。「早起きして『いってらっしゃい』と言えばよかった」「スポ少(スポーツ少年団)、見に行けばよかった。金もうけなんて後でできるんだから」。家族を失い、後悔を口にする人もいた。

 仮設店舗で「人を大事にすることを教わった」佐藤さんは、妻や子どもとの時間も大切にするようになった。

 客と店が互いを照らす存在であってほしいと願い、店名はイタリア語の「ソーレ」(太陽)と英語の最上級を表す語尾「est」を組み合わせた。「震災後、あまり話さなかった人が話すようになった。みんなの距離が近くなった気がする」。重機がうなりを上げるまちを親しみを込めて見つめながら、佐藤さんがほほ笑んだ。【藤井朋子】

最終更新:1/9(火) 22:50
毎日新聞