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「ライオンは今夜死ぬ」諏訪敦彦が岡田利規とカメラのフレームの力を語る

1/9(火) 21:52配信

映画ナタリー

「ライオンは今夜死ぬ」の公開を記念したトークイベントが本日1月9日、東京・アップル銀座で開催され、監督の諏訪敦彦と、演劇カンパニー・チェルフィッチュを率いる劇作家の岡田利規が登壇した。

【写真】「ライオンは今夜死ぬ」ポスタービジュアル (c)2017-FILM-IN-EVOLUTION-LES PRODUCTIONS BALTHAZAR-BITTERS END(他7枚)

ジャン=ピエール・レオが主演を務める本作は、南仏コート・ダジュールを舞台に、老年の俳優ジャンが子供たちと一緒に映画を作り、心を通わせていく物語。諏訪は、過去に雑誌での対談経験があるという岡田について「僕は日本の演劇に距離感を持っていたんですが、チェルフィッチュを観て驚いたんです。自分の関心とこんなに重なる人がいるのかって」と印象を語る。

大学生の頃演劇の役者をやっていたという諏訪は「その中で自分は役者に向いてないと思った。でも舞台を作ることにはカタルシスを感じていました」と明かす。続けて諏訪は「映画を撮影すること、カメラへの興味があったんだと思う。ジャン・ルノワールの『ピクニック』という映画で川辺に落ちる光の印象が変わったり、画面の端を蝶がふっと飛んで行くんですが、そこに世界があることに感動する」と力説。その言葉に同意した岡田は「演劇にできることはそれじゃない何かだと思うんです。若い頃はそれがわからず悩んでいました。時間を経てその嫉妬する感覚を持たなくてすむようになってきたんですが、『ライオンは今夜死ぬ』を観てその感情を取り戻しました」と作品を称賛した。

諏訪は映画と演劇を比較しながら「映画は現前を切り取っているので、観客に世界がそこにあることを強く信じさせてしまう。でも演劇だと“現実ではない”とどこかで覚醒しながら観ることができる。でも僕はスクリーンに映る世界だけを信じないでほしいと思っているんです。ここではないどこかではなく、つながっているものとして僕の映画を観てほしい」と述懐。岡田が「今回、特殊効果を使用していますよね?」と質問すると、諏訪は「特殊効果は初めて使いました。僕の映画はカメラの原初的な力、目の前のものがただ映るということを大切にしている。でも特殊効果を使ってもその原初的な力は変わらない。全部を作ってしまえると思ったときに、世界をまるごと捉えられるカメラの力は違ったものになると思う」と答える。

主演のレオについて諏訪は「かなり特殊な俳優。作品世界を信じさせるような俳優ではなく、存在できる映画も限られている。作中の世界を信じさせようとしているハリウッド映画にジャン=ピエールが入ったらぶち壊しになるはず」とコメント。また本作に幽霊が出てくることについて「そんなジャン=ピエールと渡り合えるのは幽霊だけだと思った」と笑顔で述べた。

イベントでは岡田が中学の頃に観て憧れたというベルナルド・ベルトルッチの「ラストエンペラー」、諏訪が高校生の頃に影響を受けたというジャン=リュック・ゴダール「軽蔑」の話も展開。「自分の中でたがが外れた」と本作について語る諏訪は「子供の存在が大きかった。あと偶然ですが、ロケ地がリュミエール兄弟が『ラ・シオタ駅への列車の到着』を撮影した街だったんです。僕は映画の可能性を感じさせてくれる彼らの作品が好きなんです。彼らには映画についてなんの規範もなかったと思うので。そう考えたとき自分のこだわりがちっぽけに見えたんです」と振り返った。

「ライオンは今夜死ぬ」は、1月20日より東京・YEBISU GARDEN CINEMAほかにて全国順次公開。

最終更新:1/9(火) 21:52
映画ナタリー