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音のゆがみを抑えるスピーカーcomuoonで難聴を救う

1/10(水) 6:00配信

アスキー

毎週木曜朝7時に開催されるMorning Pitchの年末恒例スペシャルイベントが開催。

 デロイト トーマツ ベンチャーサポートと野村證券が幹事となり、毎週木曜日、午前7時から新宿野村ビルでピッチイベントが開催されている。その名も「Morning Pitch」で、5年間で200回開催され1000社が登壇している有名なイベントだ。そして、2017年12月14日、「Morning Pitch Special Edition2017 “Tech Impact”」と題して、今年を象徴する急成長ベンチャー企業が登壇するイベントが開催された。今回は、午前9時からで有楽町の映画館が会場となった。
 
 まずは、デロイト トーマツ ベンチャーサポートの吉村孝郎代表取締役社長から開催の挨拶。今回のテーマは「テックインパクト」。過去25~30年、日本はアメリカに負けまくってきたが、ここからが巻き返しで、時価総額80兆円の会社を作ろうと意気込んだ。
 
 本イベントでは毎日放送「情熱大陸」の福岡元啓プロデューサー、早稲田大学大学院早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授、グロービス・キャピタル・パートナーズ マネージングパートナーの仮屋薗聡一氏、ユーザーベース「NewsPicks」の佐々木紀彦編集長、グローバル・ブレインの百合本安彦代表取締役社長、デロイト トーマツ ベンチャーサポートの斎藤祐馬事業統括本部長の6名が審査員として紹介された。
 
音のゆがみを極限まで抑える「comuoon」
 ピッチは8社で、トップバッターを務めたのがユニバーサル・サウンドデザインの中石代表取締役。
 
 「皆さん補聴器を付けている人を難聴者と呼ばれるでしょう。眼鏡をかけている人を難視者と呼びますでしょうか? ともに低下した能力を補助するためだけのものなのに、聞こえに関して偏見があるのは、単に知らないからです」と中石氏。
 
 難聴者は日本で1500万人(2015年)、世界では5億人と言われているという。65歳以上の半数にあたり、全人口の12%にのぼる。難聴の要因で一番多いのが老人性難聴だが、単に大きな声を出しても聞こえないそう。音量を大きくして音がゆがむと、ぼやけて聞き取れなくなってしまうのだ。そこで、ユニバーサル・サウンドデザインが開発した「comuoon」はこのゆがみを極限まで抑えるようにした。
 
 「世界初の技術で、開発に2年かかっています。日本の高音質技術のすべてを注ぎ込みました。マイクもスピーカーもすべてメイドインジャパンです」(中石氏)
 
 「comuoon」はデザイン性も優れており、グッドデザイン賞を2回受賞している。すでに、薬局や精神科医で活用されているとのこと。今後のプランとしては、2018年の夏ごろにポケット型をデビューさせる予定があるという。グローバル展開としては、すでに韓国で動いており、まず耳鼻科のドクターに使ってもらっているそうだ。
 
空気感染を防ぐ紫外線殺菌装置「エアロシールド」
 2番手は、エネフォレストの木原代表取締役。手掛けるのは空気感染を防ぐ紫外線殺菌装置「エアロシールド」だ。2020年のオリンピック・パラリンピックの時に国内で新興感染症が広がった場合、経済損失は2.7兆円に上り、新型インフルエンザが出た場合は20兆円もの損失になるそう。
 
 感染症の感染経路は接触感染、飛沫感染、空気感染の3つ。接触と飛沫は、手洗いやアルコールの消毒、マスクの装着で防げるが、空気中の菌はマスクでは防ぎきれないという。
 
 「エアロシールドは紫外線で細菌やウイルス、カビを殺せます。塩素やオゾン、アルコールとかと違い、耐性菌ができないというのも強みです。製品はティッシュケースよりちょっと大きいくらいですが、天井に紫外線の殺菌ゾーンを作ります。紫外線の出力を殺さずに、水平に照射できるので、人がいる空間でも24時間安全に殺菌できます」(木原氏)
 
 すでに全国の病院やクリニック、調剤薬局に導入されており、介護施設では導入後にインフルエンザの感染者が出なくなったという。
 
 「我々の強みは、ドクターでも持っていない感染対策の技術、ノウハウです。殺菌能力と安全性を両立でき、新製品は救急車の中にも導入されました。この技術を使って、公共インフラの感染対策もやっていきます」(木原氏)
 
歩行補助装置「RE-Gait」
 3番目に登壇したのは、スペース・バイオ・ラボラトリーズの河原裕美代表取締役。取り組んでいる社会課題は「脳卒中患者の社会復帰」。脳卒中になると、多くは後遺症が残り、寝たきりの原因第1位になっている。そこで、河原氏はリハビリと再生医療の2つの側面で、脳卒中患者が最速で社会復帰できるシステムの構築を目指しているという。
 
 脳卒中の患者がうまく歩けないのは、足首をうまくコントロールできないことが原因。現在のソリューションでは足首の動きを補助できないという。そこで歩行補助装置「RE-Gait」を開発。「RE-Gait」は足首だけを補助する小型軽量のロボットで、タブレットで設定したプログラムに基づいて動作する。
 
 10年間つま先が上がらず杖が必要だった患者さんも、「RE-Gait」を付けた初日、杖なしで歩けるようになったケースもあるという。最近は、保険外のリハビリセンターに「RE-Gait」の導入が始まっているそう。
 
 次は、再生医療の革新。再生医療には、移植効果のある安全な幹細胞を早くたくさん増やしたい、という課題がある。そして、無重力空間では、細胞の分化が抑制されることが知られている。そこで、河原氏は地上で宇宙環境を再現し、幹細胞を培養。その結果、質の良い細胞が早くたくさん得られたそう。この時に使った装置が「Gravite」だ。試料を入れた装置を回転させ、重力ベクトルを分散させ、模擬的に1000分の1G環境を再現した。NASAでは細胞培養だけでなく、植物の栽培をはじめ様々な環境で「Gravite」を利用しているという。
 
人工流れ星を作るALE
 4番目は、ALEの岡島代表取締役社長がプレゼン。ALEは人工衛星を使い、人工流れ星を作ろうとしているベンチャー企業で、最初の流れ星は2019年初夏に広島で流れる予定になっている。
 
 天文学を専攻していた岡島氏は2001年に獅子座流星群を見て、この事業を思いついたそう。人工流れ星が、科学とビジネスを両立させるものと考え、2009年から活動を開始した。
 
 「宇宙産業は、世界の市場規模は約38兆円ですが、日本は1.2兆円です。人工衛星事業は宇宙産業の中でも7割を占める中核となっています。さらに、宇宙産業における民需の比率は世界では76%、日本では10%となっており、日本政府も問題と捉え、民需の比率を倍にすると宣言しています。これを牽引していくのが、世界初の宇宙エンターテイメント企業である我々ALEです」(岡島氏)
 
 従来の宇宙企業だとエンジニアが大半を占めるが、ALEではエンジニアとビジネスサイドが半々という布陣になっている。通常の宇宙企業はメーカーや研究機関、自治体などと組むが、ALEはそのほかに、交通インフラや不動産と行った非宇宙産業や、音楽やイベント、テーマパークといったエンターテイメント領域と協業が可能になるという。
 
 ALEの人工衛星は600×600×800mm、重量は65kgで、300粒の流れ星の元を搭載。その粒を打ち出して流れ星を作る。都会の空でも肉眼で見えるマイナス1等星の明るさを持ち、オレンジや青、緑などの色分けも実現しているそう。流れ星は直径200kmの範囲から見え、丸の内を中心とするなら3000万人の目に入るそうだ。
 
微生物の力を借りてバイオマスを化学品に変える「バイオリファイナリ」
 5番目はGreen Earth Instituteの井原代表取締役が登壇。井原氏は経済産業省の国家戦略室にいたという異色の経歴を持ち、その時に手がけていた「グリーン産業の創出」を実践してみたい、ということでGreen Earth Instituteに飛び込んだ。
 
 「原油の1年間の生産量は50億、1年間に成長するバイオマスの量が2200億で、燃料に換算すると10対1になります。ところが、現在の化学品の9割が原油から作られています。原油から作られるので、CO2が出てきます。資源を巡る争いに終止符が打てていません。1割のバイオマスから作られる化学品も、減量はトウモロコシや小麦、サトウキビといった食料と競合するものから作られています」(井原氏)
 
 そんな課題を解決すべく、Green Earth Instituteが手がけるのは「バイオリファイナリ」という技術。バイオマスを微生物の力を借りて、化学品に変えることができるのだ。従来の10倍以上の生産性を持ち、原料は食料と競合しない農業廃棄物を利用でき、さまざまな化学品を作成できるという特徴がある。
 
 今後は、アミノ酸といった食料に直結する素材や、化粧品のような高付加価値商材を手がけ、将来はバイオリファイナリという産業分野のプラットフォーム企業を目指すという。
 
 「石油とバイオマスから作られる化学品の割合が9対1という状況を、我々の技術で1対9に逆転させたいと考えています。そうすると食糧問題との競合を解消し、地球温暖化を防ぎ、戦争の原因を作らない、という豊かな生活を享受できる世界を実現したいと思っています」(井原氏)
 
コールセンターの効率を向上させる「VOICE DESK Center」
 6番目はHmcommCEOの三本氏。Hmcommは音声技術と自然言語処理を扱う産総研技術移転ベンチャー企業で、「VOICE DESK Center」というソリューションを提供している。今後、コールセンターや飲食店、小売店舗などで人材不足の問題が深刻化すると見られており、その課題をAI音声認識で解決しようとしているのだ。
 
 音声認識の技術を支えるのは、音声データとなる。コールセンターは通話が録音されているので、膨大な音声データの宝庫。そこで、まずはコールセンターのソリューションを提供する。そして、音声ビックデータを所有し、その後質で量を作るというスキームを構築している。
 
 「アメリカのTwilioをバンドルし電気通信事業も取得しまして、我々がコールセンターのソリューションを直接お客様に提供しています。これにより、たくさんの音声データが集まってきます」(三本氏)
 
 顧客とオペレーターが会話すると、システムが音声認識して、注文を自動的に帳票に入力し、ほかの基幹システムと連携したりできる。音声技術に関しては産総研と共同研究を進めており、音声にはこだわっていきたいと三本氏。しかし、スマホに話しかけるというよりは、オフィスでの電話やミーティングにこだわっていきたいという。今後は、音声ビッグデータを活用して対話が破綻しない自然な自動音声対話を実現し、コールセンターや社内ヘルプデスク、店舗受付、飲食店の注文受付などを無人化していくとのことだった。
 
超高速3次元距離測定システム「ISC」
 7番目はITDLabの實吉代表取締役会長。同社は、ステレオカメラを利用した超高速3次元距離測定システム「ISC(インテリジェント・ステレオカメラ)」を開発している。實吉氏は、1989年頃はスバルのアイサイトの開発に携わっていた経歴を持っている。
 
 単眼カメラで歩行者などの被写体までの距離を計測しようとする場合は、絶対測定ではなく、モデルから推測することになるそう。ステレオカメラだと、立体画像が出るので、各画素までの距離が出るので、簡単に歩行者を抽出できるというメリットがある。
 
 研究を重ねた結果、高精度の計測が可能で、撮影スピードは160フレーム/秒になった。さらに、単眼カメラのようにモデルを搭載する必要がないので、コストが半分くらいで済むという。
 
 「我々はISCと言う名前で呼んでおり、製品は作らず、技術を知的財産として提供します。評価キットで評価していただきます。すでに、自動車や建機、ドローンといった20社以上と実用化のお話し合いを進めさせていただいています。評価モデルはすでにロボット用は作りまして、来年3月までには車用のカメラを開発します」(實吉氏)
 
 自動運転の市場は、2030年に7000万台を超えると言われており、ISCのカメラはその8割を狙おうとしており、その自信もあると實吉氏は胸を張った。
 
4人乗り電気自動車「FOMM」
 ラストは、FOMMの鶴巻代表取締役。手がけるプロダクトは世界最小クラスの4人乗り電気自動車「FOMM」だ。
 
 「このコンパクトEVは車ではありません。車社会のイノベーターです。大震災の時、津波から車で逃げて巻き込まれて亡くなられた方がたくさんいらっしゃるんです。そこで、水に浮く電気自動車を作りたいと起業しました」(鶴巻氏)
 
 鶴巻氏は、スズキとトヨタ車体でエンジニアとして30年活躍してこられたそう。FOMMの主要メンバーもスズキやトヨタ、HONDA、日産といった大手メーカー出身となっている
 
 FOMM1.0は航続距離は160kmで、電費性能は13.5km/kWhとなっている。F-SASという手でアクセル操作をするシステムを採用し、ブレーキとアクセルを踏み間違えるという事故が起きないようになっている。通常のEVではリチウムイオンバッテリーはユーザーが交換することはできないのだが、FOMMはF-SBSを採用。手で5分ほどで交換できるようになっている。そのおかげで、「バッテリークラウド」というシステムも構築している。ガソリンスタンドに行けば、バッテリーは交換し放題。EVの課題である、バッテリーの寿命をユーザーが気にする必要がなくなるのだ。さらに富士通と協業し、F-BCSも用意。バッテリーの劣化や交換ステーションの案内をリアルタイムに提供できる。
 
 もちろん、緊急時は水に浮いて水上を移動できる。日本はもちろん、タイなど海外6ヵ国でも特許を出願中だ。
 
 次のFOMM2.0では、自動運転とシェアリングをミックスした「筋斗雲シェアリング」を提案しているという。スマホで車を呼び出すと、車がユーザーの前に来て、乗り込めるようになるという。
 
 また2016年のMorning Pitch Special Editionで最優秀賞を獲得したGlobal Mobility ServiceCEOの中島氏によるゲストスピーチが行なわれた。
 
 Global Mobility Serviceは、自動車を購入する与信審査に通らないが、実際は支払い能力がある層にファイナンスを提供する事業を行なっている。携帯電話の支払いが滞ると電話が使えなくなるので、支払いに対するインセンティブが高い。これまでの車は、支払いしなくても乗れてしまうのがネックだった。そこで、MCCSというシステムにより、支払いが滞ると車のエンジンがかからなくなるようにした。
 
 フィリピンで実証実験を行なったところ、従来は20%だったデフォルト率が0.9%になった。その結果を受け、SBIのソーシャルレンディングやイオンからの資金を受けられるようになった。今後はカンボジアに展開する予定とのことだ。
 
 「Morning Pitch Special Edition2017 “Tech Impact”」で来場者による投票で選ばれるオーディエンス賞を獲得したのは、水に浮くEVを開発するFOMM。最優秀賞を獲得したのは難聴者向けのスピーカー「comuoon」を開発するユニバーサル・サウンドデザインとなった。
 
 
文● 柳谷智宣 編集●ガチ鈴木/ASCII STARTUP

最終更新:1/10(水) 13:28
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