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CESの基調講演でIntelがCPUの脆弱性対策について説明、過去5年の製品は月内に対応

1/10(水) 0:20配信

Impress Watch

 CESの開幕日前日夕方に行なわれる基調講演(Kickoff Keynote)は、CESの基調講演のなかでも一番格式が高いものとされており、古くはMicrosoft創業者のビル・ゲイツ氏、Intelのクレイグ・バレット氏やポール・オッテリーニ氏などの歴代CEO、そして昨年(2017年)はNVIDIA 創業者でCEOのジェンスン・フアン氏が務めるなど、IT業界の錚々たる面々が務めてきた晴れの舞台だ。

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 今年(2018年)その前日夕方の基調講演に登壇したのは、Intel CEOのブライアン・クルザニッチ氏。昨今業界を騒がしているプロセッサの脆弱性問題の状況を説明した。クルザニッチ氏によれば、過去5年間にIntelが発売したCPUの90%は来週末までに対策が完了し、残りは月内に完了するとのこと。

 その後、Intelが公式スポンサーになったオリンピックの中継をVRで行なうと発表したり、昨年Intelが買収した車載向けCV(Computer Vision)大手のMobileyeのCEOと一緒に自動運転への取り組みを説明したほか、最後にはIntelブランドの小型ドローンを紹介し、室内で1台のコンピュータを利用して同時にドローンを飛ばした数のギネス記録を更新するなど、普段とはかなり趣が違った内容で、PCカンパニーから転進を遂げるIntelを印象づける内容となった。

 また、クルザニッチ氏はIntelが開発している量子コンピュータ(Quantum Computing)向けのテストチップとなる「Tangle Lake」、脳型コンピュータ(Neuromorphic Computing)向けのテストチップとなる「Loihi」を公開し、データオリエンテッドカンパニーを目指すIntelの方向性を指し示した。

■過去5年間に出荷した製品に対しSpectre/Meltdown対策パッチを月内に提供

 CESの前日基調講演と言えば、企業経営者にとっては晴れの舞台であって、あまり都合の悪いことは言いたくないはずだが、IntelのCEOたるブライアン・クルザニッチ氏は、一番冒頭に現在世のなかを騒がせているプロセッサの脆弱性問題について言及した。

 クルザニッチ氏は「Intelにとってユーザーのセキュリティを守ることが最上位の仕事だ、まず顧客のデータを守ることがなによりも重要だと考えて行動している」と述べ、Intelがこの問題の解決し、そしてなによりも顧客のデータの安全性を確保するために、全力で取り組んでいると説明した。

 この脆弱性はGoogle Project Zeroチームが発見した、「Spectre」や「Meltdown」の通称で知られる問題で、現代のプロセッサの多くが採用している投機実行(命令をソフトウェアに書かれている順番で実行するのではなく、後に影響が起こることを覚悟の上で投機的に実行する処理のこと)の脆弱性を利用すると、本来はソフトウェアが参照できないはずのメモリ空間を参照できてしまい、データの安全性が脅かされることがあるという問題だ。

 この問題はIntelのプロセッサだけでなく、投機実行を行なうすべてのプロセッサで起こりうる問題で、IntelにかぎらずArmやAMDといった他社のプロセッサでも(脅威のレベルの違いはあるが)発生しうるとされている。

 このため、Intelを含めた各プロセッサメーカーは対応を急いでおり、ファームウェアレベルやOSレベルでのパッチ提供が行なわれている。

 クルザニッチ氏は「来週の終わりまでには過去5年間に発売したプロセッサの90%に対してアップデートを提供。そして今月中には残りも提供できるようにしたい。それに加え、OSベンダーやクラウドサービスプロバイダ、デバイスベンダーなどがアップデートを提供していく。それらのアップデートを当てることで、コンシューマの使い方にはほとんど影響をおよぼさないと考えているが、いくつかの使い方に関しては当初大きな性能面へのインパクトがあるだろう。しかし、将来それらをより小さくするアップデートを提供していきたい」と述べた。

■スポーツ中継を変える奥行きデータを活用したVR、量子/脳型コンピュータなどのテストチップを公開

 その後、クルザニッチ氏は「データの持つ力は、社会や経済を変えるまでになっている。19世紀に開発された内燃機関が交通の仕組みを変えて社会や経済を変えたようなことと同じことが現代では起きている」と、今世紀中にさらなる産業革命のようなことが1度や2度は起こっていくだろうと説明した。

 その最初の例としてクルザニッチ氏が紹介したのは、VRのソリューションだ。とくに時間を割いたのはIntel True VRというソリューションで、360度が撮影できる特別な3Dカメラを利用してスポーツなどを撮影し、そのデータに深度データを付加して、CPUなどを利用して処理することで、視聴者が望みの角度に変えて楽しむことができるようになるというもの。映像は1分あたり3TBのデータが発生するが、それをCPUなどで処理しながらユーザーに提供する。

 デモではNFL(National Football League、アメフトのプロリーグ)の名門チームであるダラス・カーボーイズでクオーターバックとして活躍し現在は解説者を務めているトニー・ロモ氏を呼んで、プレイヤー視点に変更することで新しい楽しみ方を提供できるという紹介がなされた。

 なお、すでに発表されているとおり、Intelはオリンピックの公式スポンサーになることを昨年発表しており、契約後初めてのオリンピックとして来月に韓国・平昌で開催される冬季オリンピックにおいて、VRを利用した中継を行なう。

 VRでオリンピックが見られるとなると、世間的なVRへの興味がかなり高まりそうで期待したいところだ。VR中継の提供はグローバルに行なわれる予定とのことだが、米国ではNBCに中継が提供されるとクルザニッチ氏は説明した。

 そうした大容量のデータが処理されるようになると、さらにクラウドサーバーへの負荷は高まるばかりで、より高い処理能力が必要になる。クルザニッチ氏は「Intelは将来のコンピューティングに向けて投資を続けている」と述べ、同社が開発している量子コンピュータ向けのテストチップとなる「Tangle Lake」、脳型コンピュータ向けのテストチップとなる「Loihi」を紹介した。

 たとえばLoihiでは、現在のマシンラーニング/ディープラーニングにより実現されているAIと異なり、データがなくても学習することが可能だという。すでに簡単な認識ができるようになっており、今後もIAの進化をうながす将来のイノベーションに向けて投資を続けていくという。

■室内において1台のコンピュータで100台のドローンを制御したデモ

 このあと、近年Intelが力を入れている自動車向けのソリューションについての説明が行なわれた。Intelは昨年イスラエルのベンチャー企業で、自動車向けのコンピュータビジョン大手メーカーのMobileyeを買収したが、今回の基調講演ではIntel 上席副社長 兼 Mobileye CEO/CTOであるアムノン・シャシュア氏を壇上に呼び、Mobileyeのソリューションを利用したIntelの自動運転車を紹介した。そして中国の自動車メーカーであるSAICがMobileyeのソリューションをベースにしてレベル3/4/5の自動運転車を開発すると明らかにした。

 また、IntelのFlight Control Technologyが採用された上部に多数のプロペラがついた飛行機であるVolocopterを紹介して飛行デモを行ない、最後にはIntel Shooting Starという小型ドローン100台を利用してLEDライトによるショーが行なわれた。クルザニッチ氏によれば1台のコンピュータで100台同時に室内で飛ばしたのはギネス記録とのことだ。

PC Watch,笠原 一輝

最終更新:1/10(水) 0:20
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