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結構いいのに... 4K/60pドローン「GoPro Karma」を実家の山林で飛ばしてみた

1/10(水) 8:00配信

Impress Watch

■紆余曲折のドローン「Karma」

 例年なら新年最初の連載はCESレポートをお送りするところだが、今年は久しぶりに実家でゆっくりさせてもらった。そのついでというわけではないのだが、せっかくドローンが飛ばせる環境にあるので、去年なにかやり残したレビューはないかと振り返ってみたところ、GoProの「Karma」を扱っていなかったのを思い出した。

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 Karmaは実に紆余曲折あったドローンだ。そもそもDJIのPhantomもPhantom 2までは、カメラを搭載する場合はGoProと組み合わせるという仕組みだった。DJIがカメラ開発まで手がけるようになったのは、2014年の「Phantom2 Vision+」からである。

 急速に高まる空撮ブームの中、DJIはドローンとカメラの両方を自社製としたわけだ。GoProとしても、空撮のニーズがなくなるのは惜しいというわけで、カメラだけでなくドローンの自社開発をティザーサイトで発表したのが、2015年の事である。

 Karmaと名付けられたドローンが発売されたのが2016年10月の事だったが、飛行中に電源が落ちるという不具合のため、同年11月にリコール。バッテリを止めるラッチに問題があり、飛行中の振動でバッテリが接触不良になるという事だった。

 実際に電源断で墜落した機体は少数だったと言われているが、世界でドローンに対する不安感が高まっていた最中であったため、全数リコールという判断は正しかったと言えるだろう。その間、Karmaに搭載されていたジンバル部分をグリップに付け替えて撮影できる、「Karma Grip」を単体発売して凌ぐなど、涙ぐましい努力を積み重ねていた。

 一方Karmaのほうはその後ラッチの設計を見直して、米国では2017年2月から販売が再開された。日本では春頃から入手可能になったようである。そんな中、今回は2017年12月より発売開始の一番新しいセットモデル、「Karma + HERO6 Black」を試してみる。

■HERO6 Black搭載でお買い得に

 Karmaという製品を説明するのは若干ややこしい。Karmaはドローンの機体そのものを指すが、製品としては機体、専用コントローラ、ジンバル、カメラマウント、Karma Grip、専用ケースなどがセットになっている。基本には頭部のジンバル部にGoProを装着する必要があるが、カメラであるGoProは別売である。これは、GoProはすでに持っている人が多いからだろう。

 Karmaの発売時は、「HERO5 Black」が最新モデルだったが、2017年9月より4K/60p撮影可能なHERO6 BLACKが発売開始。今回お借りしたのは、KarmaとHERO6 Blackをセットにしたモデルである。

 Karma単体は120,000円、HERO6 Blackは59,000円だが、セットモデルでは165,000円と、多少お安くなっている。競合のDJI製品と比較すると、Mavic Proの129,800円よりも若干高く、Phantom 4 Proの204,000円よりより若干安いという値付けになっている。コンシューマクラスで4K/60pが撮影できる点にこだわると、現時点ではKarma + HERO6 BlackかPhantom 4 Proという選択になるだろう。

 ではさっそく機体を見ていこう。4つのアームは前方に向かって折りたためるようになっており、コントローラなどをまとめて専用ケースに入れる事ができる。前方のカメラも取り外すことなくそのままケースに入るので、使用時のセットアップはかなりラクだ。

 アームをすべて展開すると幅411mm(アーム部のみ)となる。ボディデザインがスマートなので小さく見えるが、実際には中型のドローンだ。脚部も折りたためるようになっており、使用時には常時展開した状態で使用する。モーター部の下側にはかなり明るいLEDライトが仕込まれており、日中の屋外でも視認性が高い。

 注目(?)のバッテリーは、後部から挿入するスタイル。取り出しは、取っ手部分を引き出すとラッチがはずれ、そのまま引っぱれば抜ける。充電機は、機体のバッテリーとコントローラを同時に充電可能なように、二股ケーブルとなっている。

 カメラとジンバル部は、ロックを外して引き抜けるようになっている。引き抜いたカメラとジンバルは、そのままKarma Gripハンドルに差し込んで、Karma Gripとして使えるようになっている。ドローンだけでなく、こうしたハンディスタビライザーにもなることを考えれば、かなりお得感がある。

 コントローラ部は、厚みはあるが持ちやすいサイズだ。タッチパネル式5インチの液晶モニターも搭載しており、別途スマホなどを用意する必要もない、オールインワン製品である。輝度もかなり明るく、屋外でも使用もまず問題ないところだろう。ただし直射日光が当たる角度では見えなくなるので、別途フードがあればなおいいだろう。

■操作しやすい機体

 使い方としては、まずコントローラの電源を入れ、その後にドローンの電源を入れて接続を確定する。ただコントローラにシミュレータが内蔵されているので、コントロールの基本から表示の意味などを順序立てて学ぶ事ができる。経験者でもまずはそれを一通りやってからフライトするのがいいだろう。

 シミュレータで一通りの操作がわかったら、実際にフライトである。フライトの前には、キャリブレーションが必要だ。特にコンパスと加速計のキャリブレーションは、より正確なコントロールのためにフライトごとに行なうべきだろう。

 離陸は、コントローラのスタートボタンを長押しし、画面上に表示される離陸ボタンをタップする。すると2m程度の高さに上昇し、その場にホバリングする。ただしDJIの機体のように、底部にカメラやセンサーを備えているわけではなく、わりとGPS頼みなので、ゆっくり機体が流されていく場合もある。このときは手動でのポジショニングが必要だ。

 録画に関しては、HERO6 Blackを搭載するので、最大で4K/60pでの撮影が可能だ。ただデフォルトが1080pで、電源を入れ直すと初期設定に戻ってしまう。複数回フライトする場合は、常に解像度の設定に注意する必要がある。

 飛行にはリミットを設けることができる。今回は最大飛行距離1kmに設定、最大高度も120mに設定した。なお重量は約1kgで、200g以上であるため、改正航空法の対象となる。

 最初は障害物のない海岸沿いでテストしてみたが、コントローラと機体の動作レスポンスは非常によく、一拍遅れる感じはない。FPVの映像も遅延は少なく、通信状態が良好なら5フレーム程度の遅れだ。

 飛行モードにはノーマルとスポーツモードがある。今回はノーマルモードのみテストしているが、これだと最高飛行速度は30km/h程度に制限される。スポーツモードだと60km/h程度は出るようだ。車の速度で考えると30km/hはかなり遅いように思えるが、空撮では丁度良いスピード感である。

 今回の撮影は、4K/60pで撮影しているが、お見せしているサンプルはHD解像度に変換している。HERO6 Blackは、4K/60pでは手ぶれ補正が使えなくなるが、実際の空撮映像を見てみると、機体の振動も少なく、スタビライザーも安定しているので、それほど問題ないようだ。

 だいたいの性能が掴めたので、次は山林をフライトしてみた。ここは筆者の実家が所有する山林で、小さい頃からよく連れてこられたものだが、当時は杉の木がまだ苗の状態で谷の様子が俯瞰できたものだった。しかしそれから45年ぐらい経ち、杉の木もかなり生長してしまったので、地上から見下ろせるどころか、道もないので林のなかに分け入ることもできない。

 そこでKarmaを使って、今全体がどんな状況になっているのかを確認してみた。およそ10年前に地図上では全体像を確認したことはあるが、当時は実際に上空から現場が見渡せる日が来るとは思ってもみなかった。

 谷の中央部に道らしき筋が見えるが、これは小川の跡である。筆者が子供の頃は水が流れており、父はよくこの川まで見回りに行っていたものだが、体を悪くしてからもう30年ぐらい誰も行ってないので、今はどうなっているのか誰にもわからなかったが、現在はその筋が道になっているようである。

 4K/60pで撮影すると、細かい部分も静止画で切り出して拡大して確認できるので、こうした人が行けない場所の状況確認には最適だ。逆にこれだけの広範囲の状況確認ともなれば、少なくともKarmaぐらいの性能がないと、オモチャドローンでは難しいだろう。

 唯一の不満点は、カメラのチルトである。コントローラのダイヤルは横、しかしカメラの動きは縦なので、毎回どっちに回せばどっちに向くのか忘れてしまう。設定で逆方向にもできるのだが、たぶんそういう問題ではない。縦の動きなら、コントローラも縦に回したいところである。

 同じようなことは、ビデオカメラのズームレバーでも起こる。縦方向のシーソーズームなら間違いは起こらないが、廉価なカメラの横方向のズームレバーで、毎回「寄り」と「引き」を間違う人は多いだろう。いくら暗記しても、方向感覚と合わないコントローラは、大抵ミス引き起こす。

 着陸は、コントローラの着陸ボタンを押し、離陸位置に戻るか、コントローラの位置に戻るかを選択できる。同じ意味じゃないかと思われるかもしれないが、飛ばしながら自分も移動した場合、コントローラ位置に戻した方が回収が楽である。

 今回は離陸地に戻したが、帰還位置はかなり正確だった。おそらく20cmもズレていないレベルである。もちろん、GPSが補足しやすい見晴らしの良い場所で発着するのが望ましいことは、言うまでもない。

■総論

 KamraはGoPro社がリリースしたドローンの初号機にあたるわけだが、機体やコントローラも非常に洗練されており、操作性も高い。初号機でこのクオリティは、なかなか大したものである。それだけに、初期バージョンのリコール事件が悔やまれるところだ。リコールがなければ、「DJI以外の選択肢」として、より注目を集めたことだろう。

 DJI機との違いは、センサーの少なさである。前後左右の障害物を自動でよけるような機能はないため、自動帰還時に障害物にぶつかってしまう可能性もある。戻る際の高度は設定できるので、安全を考慮した高さを設定するといいだろう。マニュアル操縦も効くので、障害物を手動でよけることもできるが、それにはある程度のテクニックが必要になる。

 その点では、全くのドローン初心者にはおすすめできない。ある程度オモチャドローンでマニュアル操縦がそこそこできるようになってから、ステップアップ機として購入するのが丁度良い機体だろう。

 空撮機としては、カメラが前方にあり、横方向にはジンバルが動かないので、ローターが写り込む可能性が少ない点はポイントである。ただしカメラが横を向かないということは、横ドリーは機体を横向きに飛ばすしかないので、綺麗な軌跡でドリーをするには、やはりそれなりの操縦テクニックが必要となる。

 完成状態でケースに収まるし、FPVの性能は高いので、農業における広範囲な見回りのような使い方には向いているのではないか。一方でコントローラには余分のダイヤルなどが一切なく、追加のコントロール、例えばカメラで電子ズームを使うといったコントロールができる余地がないのが残念だ。

 すでにGoPro所有者なら12万円で買える機体であり、しかもジンバルでハンディ撮影も可能になるお得感は魅力だ。初号機でこのレベルであれば、次号機はさらに期待できそう……と、思っていたのだが、昨日の9日、ドローン事業からの撤退が米国で発表された。なお、利用者向けのサポートは継続するそうだ。残念だが、在庫限りの販売になるようなので、興味のあるひとは早めに検討するといいだろう。

AV Watch,小寺 信良

最終更新:1/10(水) 8:00
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