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東芝再建 今年どうなる…「物言う株主」圧力で波乱も

1/10(水) 9:30配信

産経新聞

 米原子力発電事業での巨額損失で債務超過に陥り、平成29年は綱渡りの経営が続いた東芝-。30年はどんな年になるのか。29年11月以降、急ピッチで進むリストラなどの合理化策を継続するのは既定路線だが、東芝の大型増資を引き受けて発言力を増した「物言う株主」からの圧力で、経営再建の道筋が変わる波乱の展開もあり得そうだ。

 「すべての赤字事業、所定のマージンが取れていない事業は海外現地法人も含め、徹底的に構造改革する」

 平田政善最高財務責任者(CFO)は29年11月の同年4~9月期決算の記者会見でこう宣言した。

 その言葉通り、数日後には、赤字続きのテレビ事業を中国家電大手の海信集団(ハイセンス)に売却すると発表。その後も半導体製造装置子会社の株式売却やフジテレビ系人気アニメ「サザエさん」の番組スポンサー降板、プロバスケットボールチームの売却などリストラ策を矢継ぎ早に打ち出した。

 しかも、リストラはこれで終わらない。「30年3月期の構造改革費用を当初の400億円から600億円に積み増した」と平田CFOは明かす。この予算は人員削減や拠点の閉鎖などに使うお金で、まだICT(情報通信技術)子会社で300人削減するのに約33億円を使うことしか判明していない。

 構造改革費用は残り567億円。「基本的には30年3月期ですべて使う前提だ」と東芝関係者は語っており、大規模な人員削減や生産・開発拠点の閉鎖を断行する公算が大きい。テレビ事業と同様、不採算のパソコン事業についても売却手続きを進めているとみられ、30年にどこまでリストラを進めるのかが注目される。

 東芝がリストラに邁進(まいしん)する背景には、米ファンドのベインキャピタル率いる「日米韓連合」に売却する半導体子会社の東芝メモリを除けば、収益低迷が続いていることがある。東芝の本業のもうけを示す営業利益は30年3月期に4300億円に達する見通しだが、東芝メモリのみで98%の4194億円を稼ぐ。売却後は売上高4兆円規模の会社にもかかわらず、営業利益を100億円余りしか稼げなくなってしまう。抜本的な経営体質の改善は待ったなしだ。

 東芝は、水処理施設やビル設備など社会インフラを中心とする事業で、「営業利益率(売上高に占める営業利益の割合)8%を取らなければならないが、当面は早期に5%にする」(平田CFO)目標を掲げた。

 だが、合理化だけでは成長できない。社会インフラは収益性が低く、あらゆるモノがインターネットでつながるモノのインターネット(IoT)と組み合わせた省電力などの付加価値をつけて売り込むなど、てこ入れが課題だ。30年度からスタートする新中期経営計画では、どう成長戦略を描くのかが焦点になる。

 東芝には成長を急がなければならない事情もある。東芝メモリの売却先決定が遅れたことで、30年3月末までに各国の独占禁止法の審査を通過して売却を完了できない可能性が浮上。負債が資産を上回る「債務超過」の解消にめどをつけるために、29年12月5日に約6000億円の増資を実施したが、投資回収にシビアな海外ファンドに増資を引き受けてもらったため、事業の切り売りや大幅な人員削減を求められる恐れもある。

 増資後の大株主には、旧村上ファンド出身者が設立したシンガポールの投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネジメントが11%超を出資する筆頭株主になったほか、西武ホールディングスへの投資で知られる米サーベラス、ソニーなどの経営に影響を与えた米サードポイントなど海外ファンドずらりと並ぶ。エフィッシモは株取得目的を「純投資」とするが、短期間の株価上昇を求めて、経営に積極的に関与してくる可能性がある。

 早速、増資に応じた香港のファンド、アーガイル・ストリート・マネジメントから、東芝メモリの売却見送りを求める文書が東芝経営陣に届いた。増資が完了したことで債務超過を回避できるため、稼ぎ頭の事業を手元に残した方が企業価値が向上するという見立てだ。日米韓連合との売却契約書には、30年3月末までに売却が完了しなければ、東芝に「契約解除権」が発生するという規定が盛り込まれており、それを見越しての提案だ。

 ただ、東芝はそんな“ちゃぶ台返し”が難しい事情を抱えている。増資だけでも債務超過をぎりぎり回避できるが、1兆円超の東芝メモリ売却益を得なければ、財務に不安を残しかねないからだ。また、半導体メモリーで競争力を保つには年間数千億円の設備投資が必要とされており、今の東芝の体力ではその資金を捻出することはできない。

 東芝は計画通りに東芝メモリを売却する予定だが、中国当局の独禁法審査が長引いて30年3月末までに間に合わず、契約解除権が発生すれば、複数の海外ファンドから売却中止を求められる可能性もある。東芝と物言う株主の“温度差”も出始める中、同社の将来像はまだ見えない。(経済本部 万福博之)

最終更新:1/10(水) 9:30
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