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安全保障上、中国の米企業“爆買い”に待った 米議会で国益守る審査機関強化論

1/10(水) 9:50配信

産経新聞

 巨大資本を握る中国企業が海外企業の買収を積極化させる中、米国内で安全保障上の観点から、中国による米企業買収を阻止する対策を強化すべきだとの認識が強まっている。有力策として権限拡大が議論されているのが、買収案件の審査機関「対米外国投資委員会(CFIUS、シフィウス)」だ。国益を守る「盾」とするべく、同委員会の組織改革の検討が議会内などで始まった。(ワシントン 塩原永久)

■深まる危機感

 「国が保有する膨大な資金を使い、中核技術を取得しようとする中国企業への懸念は近年、急速に強まっている」

 米下院金融委員会の下部委員会が2017年12月14日に開いたCFIUSの組織改革に関する公聴会で、アンディ・バー委員長(共和党)はこう述べ、中国の買収を通じた技術取得を問題視した。

 バー氏は「中国政府は半導体市場を支配するため、2500億ドル(約28兆円)の資金を準備している」と指摘。「新たな脅威」に対応するため、約10年前の法改正から関連法が変わっていないCFIUSの「近代化が必要になっているのは明らかだ」と述べた。

 公聴会は過去にCFIUSの運営に関わった財務省など政府機関の元幹部らが証言し、権限の強化や組織拡充の必要性を主張した。

 委員会所属議員の懸念は党派を超えた共通の認識となっている。民主党のデニー・ヘック議員は、中国の名指しを避けながらも「米国の技術を取得したり重要産業を支配するための包括的な戦略を進めている」国々から、国益を守るCFIUSの改革は「緊急の課題だ」と述べた。

■組織強化の法案提出

 公聴会では、CFIUSが審査した中国関連の買収事案の件数が13年以降に4倍に増加したことが明らかにされた。CFIUSの全体的な審査件数も増加傾向にあり、今年は昨年より約40%増え、組織業務の負担が重くなっていることも浮き彫りになった。

 公聴会が開かれた背景には、中国による技術取得の脅威の高まりを受け、CFIUSの権限強化を求める法案が提出されていることがある。

 ロイター通信によると、法案は17年11月上旬、上院情報特別委員会のコーニン議員(共和党)とピッテンジャー下院議員(同)がそれぞれ提出。民主党議員も共同提案者に名を連ねた。

 CFIUSが小規模案件を審査できるようにし、審査に関連する条項で、安全保障面の項目を明記する検討も進めるよう求め、経済面での米国の競争力を「国益」と位置づける認識が前面に打ち出されている。

 12月14日の議会公聴会では、元国防総省幹部のアラン・エステベス氏が、CFIUSが審査できる案件に、合弁企業によるケースや、破綻した企業の救済買収のような事例も含めるべきだと指摘した。中国が単純な“正攻法”の買収だけでなく、さまざまなパターンで米技術の取得を狙う可能性を考慮したとみられる。

■対中硬化するトランプ政権

 CFIUSは国防総省や財務省など多省庁にまたがる政府機関だ。CFIUS強化にはトランプ政権も前向きだ。政権が12月18日に発表した「国家安全保障戦略」では、CFIUSの権限拡大に向けて、議会と連携する姿勢を示した。

 17年9月中旬には、トランプ大統領が中国系投資ファンドによる米半導体メーカー「ラティス・セミコンダクター」(オレゴン州)の買収を禁じる命令を出したことが明らかになった。ホワイトハウスは、ファンドが「中国国有企業体が保有している」と指摘。ラティスが持つ知的所有権が流出すれば、安保上のリスクになると判断した。

 この約1・3億ドル(約1470億円)買収阻止を、大統領に提言したのがCFIUSだったとされる。

 また、米議会の米中経済安全保障調査委員会は16年11月、年次報告書でCFIUSの権限強化を提言。現行制度でも買収を禁じることは可能だが、中国による買収の「全面禁止」も可能になる法改正を求めた。

 一方で、中国による米企業の買収は、投資を通じて米経済に貢献する側面もある。17年12月14日の議会公聴会では証言にたった専門家から、安保上の考慮と、投資促進の両面のバランスを採る制度改正とする必要があるとの指摘も出た。

 CFIUSの組織改革の議論は、自由主義経済の市場で、政府の意向が及びやすい共産主義政権下の企業による活動をどこまで制限できるのかという難しい問題もからんでいる。

最終更新:1/10(水) 9:50
産経新聞