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国有地、架空の投資勧誘が続発 巨額詐欺事件に発展する可能性も

1/10(水) 8:07配信

産経新聞

 平成28年から29年にかけて、国有地を管理する財務省関東財務局に、国有地の売却に絡む架空の投資話に関する相談や問い合わせが多数寄せられていることが9日、関係者への取材で分かった。仲介業者を名乗る人物が企業経営者らに、財務省などの中央省庁の元キャリア官僚との関係を強調し、「投資金を支払えば優先的に土地を取得できる」などと誘いかけるケースが目立つという。投資金をだまし取られる詐欺事件に発展する可能性もあり、同局が注意を呼びかけている。

 財務省関東財務局によると、土地取得に関する複数の相談や問い合わせがあったのは、いずれも東京都新宿区百人町に所在する「百人町住宅」「百人町第2住宅」「西戸山住宅」と呼ばれる3つの国家公務員宿舎。

 国有地であるこれらの物件について、28年から昨年にかけて、複数の企業や個人に、「宿舎を取得したので今後の開発に投資しないか」「売却された宿舎を転売するので投資しないか」といった内容の虚偽の投資話が持ちかけられていた。品川区や杉並区、足立区、渋谷区などに所在する国有地についても、同様の相談を複数確認した。

 関東財務局の担当者は、「話が持ちかけられた時期や内容が似通っており、多くが架空の投資話とみられる」と指摘。国有地について、一般競争入札での売却が前提で特定の個人や企業に随意契約で売却されることはないという。

 投資金の詐取被害につながる恐れもあるとして、同局はホームページなどで注意を喚起している。

 ■「官僚OBとのコネ」誇示…巧妙な手口

 架空の国有地売却計画をめぐっては、過去に10億円超の被害を出す詐欺事件に発展したケースもある。「中央省庁にパイプを持つ官僚OB」に、「複数の官僚OBが所属する法人」-。関係者の証言からは、さまざまな“舞台装置”を使って金をだまし取ろうとするブローカーらの巧妙な手口が浮かび上がる。

 「いい投資話がある」。平成29年の暮れも押し詰まった12月中旬、都内に住む50代の投資会社社長は知人からこう持ちかけられた。「詳しい内容を知っている」として知人から紹介されたのは、「田中」と名乗る初老の男性。医療法人のM&A(合併・買収)を手がける「経営コンサルタント」を名乗っていた。紹介を受けた翌日、千代田区のオフィスを訪ねてきた男性はこう切り出した。

 「財務省が所有する新宿区の土地がある」

 話題に上がったのは、新宿区百人町にある国家公務員宿舎のことだった。

 男性によれば、付近にキャンパスを構える私立大学が近く宿舎が建つ土地を取得する予定で、一定額の手数料を支払えば、その大学から土地を優先的に購入する権利を得られるという。男性は「財務省に顔が利く元キャリア官僚」が取引を仲介し、手数料はその元官僚に支払われるとも付け加えた。会社社長は28年5月にも、同様の投資話への出資の誘いを受けていた。

 「渋谷の一等地にある国有地を格安で買い取れる」

 同じ投資会社社長に話を持ちかけてきた60代の男性は、「国有地の売却先を決めるための一般競争入札が行われるが、この入札は落札予定価格が事前に決まった『出来レース』で、関係先の法人に20億円を支払えば落札者の権利が得られる」などと説明。この法人には経済産業省や財務省など複数の省庁の官僚OBが所属し、そのコネクションを通じて取引を成立させると主張していたという。産経新聞の取材に応じたこの男性は「過去に国有地の取得に関する資金調達を依頼されたのは事実だが、いまはやっていない」と説明。会社社長は、「40億円の資金が入金された銀行口座の通帳の写しを要求してくるなど不審な点が多くて断った」と振り返った。

 架空の国有地売却計画が事件に発展した事例では、警視庁が26年2月、東京都港区の不動産会社から約4億3000万円をだまし取ったとして男ら4人を詐欺容疑で逮捕している。男らが関与した事件の被害総額は約15億円に達したとされる。財務省関東財務局への相談や問い合わせも数年前から確認されているが、昨年に入ってからは「さらに目立つようになった」(同局担当者)という。

 29年2月には大阪府豊中市の国有地が学校法人「森友学園」(大阪市)に評価額より安価で売却されたとされる、いわゆる「森友問題」が発覚している。

 捜査関係者は、「『森友問題』で国有地に注目が集まったことをブローカーらが出資者集めに悪用している可能性もある」と指摘している。

最終更新:1/10(水) 9:25
産経新聞